蟠桃の概要
蟠桃(ばんとう)は、中国を原産とする桃の一種です。平たくつぶれたような独特の形状が特徴的な桃で、日本には明治時代に渡来しました。ただし、栽培の難しさから日本では非常に生産量が低く、あまり流通していません。生産地も限られており、福島県と和歌山県、それ以外では山形県や岐阜県などで、ごく一部の生産者が手がけているだけです。
反対にヨーロッパでは、蟠桃はわりと多く出回っているんだ。店でもポピュラーなフルーツとして扱われているよ。
名前の由来
蟠桃の「蟠」の字は、日本語でいうと「わだかまる」という意味です。「不平不満で心がモヤモヤする状態」という意味で使われることが多いですが、他にも「とぐろを巻いている状態」「かがんでうずくまっている状態」という意味があります。蟠桃の平たい形状を、うずくまっている様子にたとえたのでしょう。蟠桃は別名を「座禅桃(ざぜんもも)」といいます。この別名も蟠桃の形状が由来です。
日本の生産地と旬の時期
前に触れたように、日本では福島県と和歌山県が蟠桃のおもな生産地です。それ以外では山形県や岐阜県などで、ごく一部の生産者が扱っています。蟠桃は栽培が難しいため、日本ではあまり普及していません。ゆえに「幻の桃」と呼ばれています。出荷時期は品種や地域によって少し異なりますが、出荷時期は7月下旬~9月上旬頃です。旬の時期は、もっとも甘味が充実する8月中といわれています。
蟠桃と孫悟空にまつわる伝説
古代中国の伝説
蟠桃の原産地でもある中国では、古くから桃は邪気を祓い、長寿をもたらす特別な果実と信じられていました。神仙が住まう天界には、食べた者を仙人にしたり、不老長寿や不老不死を与えたりする神秘の果実があるという伝説がありました。この神秘の果実こそが蟠桃です。さらに高位の神仙たちが集い、美酒や蟠桃を飲食する宴会「蟠桃会(ばんとうえ)」が開催されるという伝説もあります。
孫悟空が食べた仙果
日本でも有名な古典小説「西遊記」にも、この蟠桃会にまつわる話が登場します。「西遊記」の主要人物の1人である孫悟空が、天界にいた頃の話です。蟠桃園の管理人に任ぜられた孫悟空でしたが、蟠桃会には招かれませんでした。これを恨みに思った彼は、蟠桃園に実っていた貴重な桃の実を食べつくしてしまいます。おまけにその後、蟠桃会に忍び込んで大暴れしました。
孫悟空は土地神に、蟠桃園の桃を食べると不老不死になることを知らされていました。その効果も狙っての盗み食いだったのです。
孫悟空はこの他にもたくさん問題を起こしてるんだよ。のちに三蔵法師の弟子になって過酷な旅に出たのには、功徳を積んで罪を償う意味もあったんだ。
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生産量と流通量の少なさから、日本では「幻の桃」と呼ばれ、高級フルーツとして扱われています。