ミズバショウの群生地
ミズバショウがたくさん自生する群生地は主に東北から関東、北陸にかけて点在します。その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
①群馬県・尾瀬
尾瀬は群馬県・福島県・新潟県の3県にまたがっていて、群馬側と福島側にある入り口から入ります。尾瀬は標高が約1400mの冷涼な高地なので、ミズバショウが咲くのは少し遅く、雪解けした後の5月~6月が開花時期になります。広い敷地内の中で、特にミズバショウがたくさん群生している場所が尾瀬ヶ原と尾瀬沼で、どちらも毎年大勢の観光客でにぎわいます。
尾瀬ヶ原
尾瀬ヶ原は東西に6km、南北に2kmの広大な湿原です。広い草原に木道が長く伸びている風景は、みなさんもよくご存知でしょう。この尾瀬ヶ原でのミズバショウの開花の見頃は5月末です。広大な湿原一面に真っ白なミズバショウが群生する風景は圧巻で、多くの観光客を魅了しています。尾瀬ヶ原には群馬県の鳩待峠から入ります。
尾瀬沼
一方、尾瀬沼は尾瀬ヶ原よりも一段と標高が高く気温も低いため、ミズバショウの見頃は6月に入ってからになります。尾瀬沼は1周約10kmの、尾瀬を代表する大きな沼です。この尾瀬沼の周りにもミズバショウがたくさん群生していて、山と沼とミズバショウの素晴らしい景色が広がります。尾瀬沼には群馬県の大清水口、または福島県の沼山峠から入ります。
②秋田県・刺巻湿原
刺巻(さしまき)湿原は秋田県の田沢湖畔にある湿原です。ハンノキ林が広がっていて、その根元に白いミズバショウが群生する風景はメルヘンの世界のようで、とても人気がある観光スポットです。ミズバショウの見頃は4月末~5月にかけてで、「刺巻水ばしょう祭り」が開催され、特産品の販売やイベントで毎年にぎわいます。
③宮城県・泉ヶ岳水芭蕉群生地
泉ヶ岳水芭蕉群生地は宮城県仙台市にあります。ミズバショウの見頃は4月上旬~4月下旬にかけてになります。敷地内には木道が整備されているので、ミズバショウの美しい姿を観賞しながら8分ほどの散策が楽しめます。木道のすぐ近くにもミズバショウが咲いているので、近づいて写真を撮ることも可能です。
④福島県・川衣水芭蕉群生地
川衣(かわごろも)水芭蕉群生地は福島県南会津町にあります。西根川の最上流にあるミズバショウの群生地で、見頃は5月中旬になります。湿原には木道などの遊歩道は設置されていませんが、観覧場所からミズバショウを観賞することができます。川衣水芭蕉群生地は霧が発生しやすい場所なので、タイミングが合えば霧の中にうっすらと咲くミズバショウを見ることもできます。
⑤群馬県・片品水芭蕉の森
片品(かたしな)水芭蕉の森は群馬県片品村にあります。ここは4月下旬~5月上旬がミズバショウの見頃です。片品水芭蕉の森は0.75haの敷地に約5000株のミズバショウが群生しています。また、開花時期の期間中は夜間ライトアップもあるので、昼間とはまた違った雰囲気のミズバショウを楽しむことができます。
⑥福井県・取立山芭蕉群生地
取立山芭蕉群生地は勝山市にあります。取立山の南東の斜面に、3000株ほどのミズバショウが群生しています。見頃は5月中旬~5月下旬までです。取立山は登山客もたくさん訪れる山で、ミズバショウが咲く景色を見ながら登山ができて、福井県内では有名な群生地として知られています。
⑦長野県・奥裾花自然園
奥裾花(おくすそばな)自然園は長野市にある群生地です。ここはブナ原生林の自然公園で、広い敷地内には大小5つの池や湿原があります。この奥裾花自然園にはミズバショウが約81万本も群生していて、その規模は尾瀬を上回って本州最大となっています。花の見頃は5月上旬~6月上旬にかけて、ブナ林に咲く一面のミズバショウは圧巻です。
⑧兵庫県・水芭蕉公園
養父市にある水芭蕉公園は、ミズバショウ群生地の西南限と言われていて、西日本唯一のミズバショウ自生地になっています。この場所は兵庫県最高峰の氷ノ山(ひょうのせん)山系の一部で豪雪地帯にあります。その寒さゆえ氷河期の生き残りといわれる北方系の植物が生息し、このミズバショウもそのひとつとされています。ミズバショウの開花時期は4月下旬~5月上旬です。
ミズバショウの仲間
アメリカミズバショウ
アメリカミズバショウは色が黄色いので、別名「コガネミズバショウ(黄金水芭蕉)」とも呼ばれています。ミズバショウ属には、白いミズバショウとこのアメリカミズバショウの2種類しかありません。
匂いが臭い
アメリカミズバショウは見た目は黄金色でとても美しいのですが、実は匂いが臭いのが残念なところです。このアメリカミズバショウはスカンクに似た匂いがすると言われています。匂いはさておき、輝くような黄色が華やかで、白いミズバショウとはまた全く違った華やかな雰囲気を持っている花です。
ミズバショウの匂いは?
では普通の白いミズバショウはどんな匂いなのでしょうか。実はミズバショウの匂いはほとんどなく、咲き終わりの頃にほんのりと甘い匂いがする程度です。たくさん咲いている群生地では、風がない早朝にさわやかな清々しい匂いが漂うこともあります。
ザゼンソウ
ザゼンソウは同じサトイモ科の植物
同じサトイモ科の植物にザゼンソウがあります。このザゼンソウも肉穂花序や仏炎苞を持っていて、そこがミズバショウとよく似ている点です。花姿が僧侶が座禅を組んでいるような様子に似ているので、ザゼンソウ(座禅草)という名前が付きました。葉はミズバショウとよく似ていますが、花色が褐色なのでミズバショウと容易に見分けがつきます。
まとめ
ミズバショウは春に咲きますが、群生地の気象条件によっては初夏に咲く場所もあるために、夏の花と思い込まれてしまったことがお分かりいただけたでしょうか。白いマントをかぶっているように見える清楚な花姿に魅せられて、毎年尾瀬ヶ原や尾瀬沼などの群生地には多くの人が訪れています。場所によって見頃の時期も少しずつ変わるので、ネットなどで開花のタイミングを確認されるといいでしょう。ぜひ可憐なミズバショウを見に、尾瀬ヶ原や尾瀬沼を始め、各地の群生地に出掛けてみてください!
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出典:写真AC