カマツカってどんな木?
植物としてのカマツカ
日本原産種のカマツカ(鎌柄)は、樹高2~5mほどに成長する落葉中木で、北海道南部から九州に自生しています。特徴としては若葉と実が食用となること、そして、樹木として非常に固い性質を持つことがあげられます。植物としてはバラ科のカマツカ属に属し、庭木としても盆栽としても人気の高い植物です。
カマツカの育て方
元々は雑木林などに自生していた植物ですから、植木として育てる際に取り立ててむずかしいことはありません。日当たりのよい場所を好むので、その点を考慮すれば問題ないでしょう。土は若干粘土質が含まれる砂壌土を好みます。剪定は冬期に形を整える程度でよいでしょう。
カマツカ【鎌柄】という名前の由来
『鎌の柄』に最適という意味から名前がつけられたカマツカですが、特徴として木質に粘りがあり、とても固くて折れにくいことから、鎌に限らずさまざまな農具や工具などの柄として使われてきました。樹木としてあまり太く育たないことも、鎌の柄に加工するにはちょうどいい利点だったのかもしれませんね。
カマツカの別名は【牛殺し】
『牛殺し』というなにやら物騒な別名をもつカマツカですが、そう呼ばれるようになった由来の定説は4つあります。
- 文字通りカマツカで牛を撲殺し、食肉にしたという説。
- カマツカで牛の鼻木(鼻輪)をつくったという説。
- カマツカを使って牛の鼻に鼻輪用の穴を通したという説。
- 牛がカマツカの枝の間に角を入れてひっかかった際、樹木が固くて折ることができず、そこから抜け出られなかったという説。
確かにどの説も牛の動きを止めるという意味で『牛殺し』には違いないですね。
カマツカの特徴
紅葉するノコギリ状の葉
カマツカの葉は個体差はありますが、基本的に倒卵形(葉の先端のほうが太くなっている状態)で先端が尖り、葉の縁に細かいノコギリ状の鋸歯があります。落葉樹という植物の性質上、カマツカも秋になると黄色から赤へと見事な紅葉を見せてくれます。
丸い粒状のつぼみ
さて物騒な名前もさることながら、カマツカのつぼみの愛らしい姿に悩殺されてしまった方も多いのではないでしょうか。カマツカのつぼみは新しい枝の先に20輪ほどまとまってでき、遠目にはみずみずしい葉の上に白い粒が踊っているようにも見えます。新緑の時期の楽しみの一つですね。
繊細な白い小花
完全な五角形になるように並べられた円形の花弁と花芯に、植物の造型の美しさを感じさせられますね。これはバラ科の植物の特徴でもあります。カマツカの清楚な花としなやかな樹形は、庭木としては洋風、和風どちらの庭にも溶け込むことでしょう。
リンゴのような赤い実
カマツカは秋になると、小さなリンゴのような赤い実を枝の先端に実らせます。この実は食べることができますが酸味が強く、とりたてて美味というわけではありません。どちらかというと盆栽やフラワーアレンジメントといった観賞用としての価値が高いでしょう。自然界においては、鳥や小動物たちのごちそうなのかもしれませんね。
カマツカを身近に楽しむ
盆栽として育てる
本来であれば樹高2m以上になるカマツカですが、盆栽として使用されることの多い木でもあります。この場合の育て方は、小さな植木鉢に肥料の入った土を入れ、半日かげでの栽培が好ましいでしょう。また盆栽ほど凝らずに、少し大きめの植木鉢で自然な樹形を楽しむのもよいですね。
切り花として楽しむ
植木もよいのですが、見事に紅葉したカマツカの葉と実を切り花として飾ってみてはいかがでしょうか。小花の時期ですと花弁の片づけが大変ですが、こちらの状態でしたら長く楽しめます。また、葉が全部落ちてしまった枝と実だけの状態でもなかなかの趣があります。
カマツカの類似種
セイヨウカマツカ
別名アロニアと呼ばれるセイヨウカマツカ(西洋カマツカ)は、北米原産の植物です。普通のカマツカとどこが違うかは一目瞭然ですね。雄しべの葯(やく)が赤いことが西洋カマツカの特徴です。植木としてカマツカとセイヨウカマツカを並べて、花の違いを楽しむのもおもしろいかもしれませんね。
シナカマツカ
シナカマツカ(支那カマツカ)は字の通り中国を原産地としたカマツカの品種です。通常のカマツカとシナカマツカの違いは実の大きさです。シナカマツカの方が実が大きくて丸く、枝にたわわに実ります。
ワタゲカマツカ
一見普通のカマツカと変わりないように見えますが、ワタゲカマツカの新枝と葉と花には、細かく柔らかな白い毛が密生しています。名前の『綿毛』にもあるように、全体的な白い産毛とカマツカよりも大きな葉をもっているのがワタゲカマツカの特徴です。
まとめ
名前と樹木としての姿のギャップに驚かされるカマツカですが、さまざまな魅力にあふれる植物です。落葉樹としての四季折々の姿を、地植え、盆栽、切り花と、生活に身近な形で感じられたらすてきですね。類似種として原産国の違うカマツカもご紹介しましたが、さすがに『牛殺し』のネーミングは日本だけのようです。
出典:写真AC