ヤマウルシ(山漆)とは?
名前 | ヤマウルシ |
和名 | 山漆 |
学名 | Toxicodendron trichocarpum |
分類 | ウルシ科:ウルシ属 |
原産地 | 日本 朝鮮半島 中国 |
生息地 | 北海道~九州 |
樹高 | 2m~8m |
開花時期 | 5月~6月 |
紅葉する落葉低木
日本や朝鮮半島、中国が原産地のヤマウルシ(和名:山漆)は、秋に紅葉し、樹高が2m~8mと低い分類の落葉低木です。ヤマウルシの紅葉はほかのウルシ科の植物同様に、葉の色が赤や黄色と、とても鮮やかに色づきます。
学名の意味
ヤマウルシの学名は「Toxicodendron trichocarpum」で、「Toxicodendron 」は「毒のある木」という意味があり、「trichocarpum」は「毛のはえた果実」という意味があります。
ヤマウルシの特徴1:生息地
北海道から九州に分布
日本百名山のひとつ北海道の駒ヶ岳にも自生し、北海道から九州までの広範囲に分布、山地や低い丘陵地に多く自生しています。ヤマウルシは触るとウルシかぶれになる恐れがあり、登山やハイキングなど、山歩き中に遭遇する危険な植物になってます。
ボタニ子
ヤマウルシの生息地では、樹木に触らないよう注意して歩きましょうね!
ヤマウルシの特徴2:樹木
樹木の高さ
通常、ヤマウルシの樹高は2m~3mといわれていますが、山地で育つ木のなかには樹高が8mになるものもあり、栄養や環境のよい場所では樹木が大きく成長します。
樹皮や枝の特徴
樹皮の色は灰色で、縦に長い切れ目を持ちます。樹皮を傷つけると樹液がでてきますが、樹液の色は初め白く、時間がたつと黒くなります。春に新しく芽吹いた枝の色は赤く、古い枝の先に集中して芽吹き、立つように上へ伸びて、枝は年数がたつと堅くなり色も灰色に変化していきます。
ヤマウルシの特徴3:葉
互生に生じる葉柄や葉の特徴
葉柄は枝に対し、対のように見えてわずかに互生で生じ、葉はひとつの枝に5対~8対で生える奇数羽状複葉で、枝の付け根に近いほど葉は小さく、枝先にいくほど葉が大きくなります。幼葉のうちは葉の縁に荒めの鋸歯がありますが、あとになると鋸歯がなくなり、葉は卵形や楕円形に変化します。葉表の色は明るい緑色でツヤはなく、葉裏は白みを帯びた緑色で、互生につく葉柄だけでなく葉脈にもびっしりと短毛がつきます。
「互生」とは葉柄のつき方のひとつで、葉柄がたがいちがいに生じる場合の呼び方です
紅葉の見ごろは?
ヤマウルシの紅葉の見ごろは早い地域で10月上旬、一般的には10月中旬ころからが見ごろになります。ウルシ科の植物は全体的に紅葉がとても鮮やかといわれ、ヤマウルシも時期になると真っ赤な葉や濁りのない黄色に色づきます。
ヤマウルシの特徴4:花
枝にかたまって咲く花
ヤマウルシの花は雌花と雄花が別の固体でつく雌雄異株で、どちらも花の色は黄緑色、5枚の花びらをもち花弁は外側に反り返っています。雌花は中心部分から長く花柱が突きだし、雄花の雄しべも外へ突きでています。たくさんの花がかたまってつくため、枝先が花の重さで枝垂れることもあります。
花の見ごろはいつ?
ヤマウルシの花の見ごろは5月~6月で、紅葉のように派手さはありませんが、無数につく小さな花には蜂や蝶が集まり受粉の手助けをします。
ヤマウルシの特徴5:果実
果実は核果になっている
ヤマウルシの果実は「核果」で、核果とは果実の皮や果肉の中心に硬い殻に包まれた核をもち、核のなかに種があります。果実の大きさは5mm~6mmで平たく、形は丸く先端が少し尖り(玉ねぎを半分に切ったときの断面のような形)、果実の外皮には無数のトゲがついています。
果実の完熟は9月~10月
9月~10月に完熟をむかえる果実はその後、外果皮が割れて中から白い中果皮がでてきます。中果皮の大きさは4.5mmほどで、縦に黒い筋があります。
ヤマウルシの特徴6:用途
ヤマウルシの用途は?
ウルシと同じく、ヤマウルシの樹液は漆器や工芸品などの塗料としてつかわれています。果実からローソクの原料が採れることから、かつては和ローソクも作られていました。
ボタニ子
つぎのページでは、ヤマウルシとウルシの違いを解説していきます
ヤマウルシとウルシの違い
葉に違いがある
樹皮の色や亀裂などの木肌のようすや、雌雄異株の花のつきかたなど、似ているところが多いヤマウルシとウルシですが、葉に以下のような違いがあります。
- ヤマウルシよりウルシのほうが葉が大きい。
- ヤマウルシよりウルシの葉のほうが厚みがある。
- ヤマウルシの葉は明るい緑色でツヤがなく、ウルシは濃い緑色でツヤがある。
ヤマウルシとウルシの見分け方
見分け方のポイント
ヤマウルシとウルシ、それぞれの見分け方のポイントは以下の通りです。
- 葉の大きさ
- 葉の色
- 葉のツヤ
- 葉の厚み
ヤマウルシの仲間1:ハゼノキ
名前 | ハゼノキ(和名:櫨の木) |
学名 | Toxicodendron succedaneum |
分類 | ウルシ科:ウルシ属 |
原産地 | 中国 台湾 タイ ヒマラヤ インドネシア |
ハゼノキの特徴
ハゼノキ(和名:櫨の木)は樹高が7m~10mほどになる落葉小高木で、別名「リュウキュウハゼ」や「トウハゼ」などとも呼ばれています。木肌の色は黒っぽい灰色でたくさんの亀裂が入り、堅めの葉は濃い緑色で大きさは5cm~12cm、形は長めの楕円で葉先が細く伸びています。花色はヤマウルシと同じ黄緑色で、開花時期も同じ5月~6月ですが、ハゼノキの樹液は塗料として使用されることはありません。
ヤマウルシの仲間2:ヤマハゼ
名前 | ヤマハゼ(和名:山黄櫨) |
学名 | Toxicodendron sylvestre |
分類 | ウルシ科:ウルシ属 |
原産地 | 日本 朝鮮半島 中国 台湾 |
ヤマハゼの特徴
ヤマハゼ(和名:山黄櫨)は本州から沖縄の山地に自生する落葉小高木で、樹高は5m~8mほど、木肌の色は暗めの褐色で、縦に裂ける皮目をもつため木肌はでこぼこしています。葉の大きさは4cm~13cmほどで色は緑、わずかにツヤがあり形は長めの卵状楕円形です。木が若いうちは葉の縁に細かなぎざぎざがありますが、木が成長するとなくなります。花色は淡い黄緑色で、開花時期は5月~6月です。ヤマハゼの紅葉した葉は染料として使われています。
ヤマウルシの仲間3:ツタウルシ
名前 | ツタウルシ(和名:蔦漆) |
学名 | Toxicodendron orientale |
分類 | ウルシ科:ウルシ属 |
原産地 | 朝鮮半島 中国 サハリン |
ツタウルシの特徴
ツタウルシ(和名:蔦漆)は落葉つる性植物で、日本や中国、朝鮮半島などが原産地の植物です。つるには「気根」と呼ばれる根が生え、ほかの樹木や岩などに気根を絡みつかせて育ちます。三つ又に分かれた葉にはわずかにツヤがあり濃い緑色で、秋になると色鮮やかに紅葉する葉は、染料としての用途があります。花の色は淡い黄緑色で、開花時期は5月~6月。ツタウルシはウルシ科のなかでも、とくに有毒成分が強い植物です。
まとめ
ヤマウルシは日本の広い範囲に自生し、百名山のひとつ北海道の駒ヶ岳でも見ることができる、山地ではポピュラーな部類の樹木です。5月~6月に咲く花はあまり目立ちませんが、秋に色づいた葉は目が覚めるほど鮮やか。紅葉狩りに行くさいは、たくさんの紅葉をむかえた植物たちのなかでも、ひときわ鮮やかに色づくヤマウルシの葉を探してみてくださいね!
ヤマウルシの樹液が、かぶれの原因になります