はじめに
コトネアスターは耐寒性に優れ小型の種類が多く、また赤い実生の果実や紅葉も美しいため、庭木として愛好される事の多い植物です。またコーラルビューティーなど品種によっては、ガーデニングのグランドカバー植物として用いられることもあります。栽培も容易で、極端に乾燥する日当たりのよい環境でなけでば育てられるので、初心者でも楽しむことができます。
コトネアスターとは
コトネアスターはバラ科の低木樹で、50種類近くの品種があります。その多くの原産地はインド北部からチベットにかけての地域です。外見の良く似た植物にピラカンサがありますが、枝に棘がない点と、葉に鋸の歯ような特徴がない点でピラカンサと区別できます。常緑低木樹でもあるコトネアスターは、果実や紅葉の赤が鮮やかな上に寒さにも強いため、庭園樹としてはもちろん、鉢植えや盆栽などさまざまな用途で多くの人に親しまれています。
コトネアスターの種類
日本国内で園芸用品種として植えられるコトネアスターにはいくつかの種類があります。代表的な品種としてベニシタンやコトネアスター・ワテレリ、コーラルビューティーなどが挙げられます。
ベニシタン
ベニシタンは昭和初期に日本へ導入された品種で、現在でも広い地域で栽培されています。高さは50㎝から1m程度で、良く育ち寒さにも強いため初心者にも育てやすい品種です。9月ごろから果実が赤くなり始めます。
コトネアスター・ワテレリ
コトネアスター・ワテレリは、サリシフォリウス種などいくつかの種類を掛け合わせ人工的に作られた品種です。ベニシタン以上に生育旺盛で、木の高さも2m近くにまで成長します。基本的には半常緑性です。
コーラルビューティー
コーラルビューティーは、コトネアスターの中でも葉が小さく、枝が密集して生える種類です。そのため、ガーデニングでの隙間を植える植物「グランドカバー」での使用に適しています。
コトネアスター・レペンス
コトネアスター・レペンスは地表を這わせたり、登坂させるのに適した種類で、寒さで冬に紅葉するのが特徴です。このようなレペンス種の特性は、冬場の庭木の淋しい時期に彩を添えるので、ガーデニング愛好家のなかには好んでレペンス種を育てる人も多く存在します。
コトネアスター・ダメリ
コトネアスター・ダメリは枝の良く広がる品種で、実の形が他の品種と比べ面長な形をしているのが特徴です。ダメリ種の光沢のある葉は年中美しく、また、秋から冬にかけて付く赤い実との対比が映えます。このような外観から、ダメリ種もコトネスターの人気品種のひとつとなっています。
コトネスター・グラウコ
コトネスター・グラウコは実生の形などダメリ種と同じような外見ですが、グラウコ種の方が葉の緑色が濃い特徴があります。グラウコ種は結実の時期が他の品種と少しずれるため、クリスマスリースの材料として使われることが多くあります。
コトネアスターの育て方
初心者にも育てやすいとは言え、コトネアスターにとって劣悪な生育条件のもとで育てれば、花も実も付きませんし、下手をすれば枯れてしまうことも考えられます。では、コトネアスターはどのような育て方が適しているのか、それぞれのポイントごとに解説しましょう。
植える場所
コトネアスターを植える場所には日当たりの良い場所が適していますが、極端に乾燥する場所は避けましょう。耐寒性は比較的強く、耐寒性の強い品種を選べば東北南部でも露地での生育が可能となります。植え付けの時期は3月下旬から4月上旬、もしくは10月下旬から11月が適しています。
用土・元肥
コトネアスターは中性から弱酸性の用土を好みます。植え付ける場所の酸性度が高い場合は、石灰などで用土のpHを調整しましょう。また肥沃な土壌を好みますので、栄養分が足りないようでしたら、腐葉土やたい肥、元肥などをきちんと施しましょう。
追肥
コトネアスターの追肥は花が咲いた後の6月頃で化成肥料を与えます。この追肥は後の実生を左右することになるので、忘れないようにしましょう。実が付き始めるのは10月頃です。また、2月から3月は寒肥として同じく化成肥料を与え、春先の成長に備えましょう。
水やり
生育条件に適した場所であれば、特に水やりに気を遣う必要はありませんが、極端に乾燥する夏の高温期には注意が必要です。日中の高温となる時間帯は避け、朝もしくは夕方の気温の低い時間帯に水やりを行いましょう。
剪定
グランドカバーに適している這性種の場合は、地面を這うように伸びるので、徒長した枝を根元から斬る程度の剪定で十分です。庭木や生垣として育てる場合は、落葉の時期に不要な枝を切ったり株全体を切り戻したりして、好みの形に仕立てましょう。
コトネアスターの盆栽の育て方
コトネアスターは庭木やグランドカバーなどの用途以外にも盆栽としても愛用されています。特に葉や実の小ささ適正があり、実物の盆栽として定番の植物となっています。盆栽の場合は鉢植えが主になるため、その育て方は地面に直接植える場合と違ったポイントも出て来ます。
用土・肥料
盆栽としてコトネアスターを育てる場合の用土は、赤玉土のみを用います。コトネアスターは肥沃な環境を好むので、しっかりと施肥するのがポイントです。4月から6月の期間と9月から10月の期間に、それぞれ月1回油かすなどの固形肥料を与えましょう。
置き場所
盆栽など鉢植えのコトネアスターを置く場所は、日当たりと風通しの両方が良い所を選ぶようにしましょう。これによって、花の咲き方が美しくなり実付きもよくなります。
水やり
庭木として育てる場合と異なり、鉢植えの場合は水やりが重要となって来ます。用土が乾いたら水やりをする程度で構いませんが、日中の 炎天下での水やりは避けるようにしましょう。春は1日1回から2回、夏場は朝夕中心に1日2回から3回、冬は2,3日に1回の水やりが目安です。開花期は花に直接水を掛けないよう注意しましょう。
その他育て方の注意
コトネアスターの中には落葉性の品種もありますので、常に葉の生い茂った状態を楽しみたい場合は、常緑性または半常緑性の品種を選ぶようにしましょう。また果実の色が白い品種も存在しますので、赤い実を楽しみたい場合などは、よく確認をした上で苗の購入をしましょう。
コトネアスターの増やし方
挿木
挿木の場合は、その年に伸びてきた若い枝を10㎝程度の長さに切って増やします。コトネアスターの若い枝は非常に根が伸びやすく、増やし方の中では一番簡単な方法と言えます。挿木直後から小苗の時期は根付きやすいですが、ある程度の大きさになるまで生長してから植え付けるのがポイントです。挿木の時期は6月から8月が最も適しています。
挿木の育て方
挿木を育てる場合は、たっぷりと水やりをしてから日陰で管理を行うことが育て方のポイントとなります。小苗の生育ステージは根付きやすいので、ある程度の大きさに育ってから鉢や庭などに植え付けるようにしましょう。
種まき
実生のコトネアスターは種を蒔いて増やす方法もあります。果実が赤く熟した後に果肉を取り除き、すぐ蒔く方法と、熟した果実を乾燥させないようにそのまま貯蔵し、翌春に蒔く二通りの方法があります。いずれの方法も、種を採取した後に種を乾かさずに蒔くことが、播種での増やし方のポイントです。
まとめ
コトネアスターはガーデニングのグランドカバーや庭木に良し、鉢植えにして盆栽にも良しと、幅広い楽しみ方のできる植物です。育て方も決して難しいものではなく、初心者でも楽しむ事ができます。まだコトネアスターを育てたことのない方は、この機会にぜひチャレンジしてみましょう。