自家受粉の仕組み
自家受粉とは、「同じ花」や「同じ株」からの花粉で受粉し、受精が成立して種子を作る仕組みのことをいいます。植物の中には雌しべと雄しべが同じ花にある種があり、このような種は花が咲くと雄しべの花粉が同一花の雌しべにふりかかり受粉し、受精します。自家受粉する植物では、ヒトや、虫、鳥類の助けは必要ありません。
- 受粉とはめしべの柱頭に花粉がつくこと
- 受精とは受粉後、花粉菅を通り胚珠に花粉が付き合体すること
自家受粉の利点
自家受粉の利点は、実ができる確率がほぼ確実です。同じ個体の植物ですから、花粉を広く飛ばす必要もないため花粉の生産量が少なくてすみますし、虫を寄せ付けるための美しい花もかぐわしい香りの必要もありません。
自家受粉の不利な点
自家受粉の不利な点は、遺伝的な組み合わせの多様性が失われることです。つまり、環境の変化に適応できず個体ごとの種の生存が危ぶまれる、ということを指します。同じ遺伝子が繰り返されることで種の力が弱まる傾向が強くなる、これを近交弱勢といいます。
他家受粉の仕組み
他家受粉とは、めしべの柱頭に「異なる株」の花粉が付き受粉することです。花粉を運ぶためにはいくつかの方法があります。他家受粉をする植物は「虫、鳥類」などの生物を利用し受粉を試みるものと、「水、風」などの自然や、植物が生息している環境を見方につけ受粉を試みるものが存在します。
他家受粉の利点
他家受粉の利点は、自分とは異なる種の花粉をもらうことで遺伝子の組み合わせが多様化されることです。多様化すると個体ごとの種の適応力が高まり近交弱勢を妨げます。そしてその結果、種を拡散することが可能になるのです。
他家受粉の不利な点
他家受粉での不利な点は、実の付きが確実ではない可能性があるということです。花の落下や時期のずれにより個体ごとのタイミングが合わなければ実ができる可能性は低くなります。また、確実に実を付けるためには個体ごとに大量の花粉を生産しなければなりません。
自家受粉する植物
では、実際に自家受粉をする植物について説明していきましょう。ここでは、3つの植物を使い説明します。
エンドウ豆
エンドウ豆の花は5枚の花びらからできており、上部の大きな花びらを旗弁、その下に左右に分かれてついているものを翼弁、下部2枚を竜骨弁と呼びます。エンドウ豆の雌しべ、雄しべは竜骨弁に包まれているため、虫は侵入できません。エンドウ豆は、花が咲く前にそれぞれの個体の竜骨弁の中で受粉が終わる仕組みになっています。
朝顔
アサガオの開花は暗くなってから10時間後です。おしべはめしべより低い位置にありますが、夜間つぼみの中でおしべが伸び、そこでめしべと擦れ合い受粉します。つまり花が咲く前から受粉が終わり受精しているのです。
イネ
イネの開花と受粉について説明していきましょう。イネの穂の外側には「えい」と呼ばれる将来はもみ殻になる部分が存在します。その部分が開き、6本のおしべが伸びます。おしべの先端についている、やくの下部に穴が開くことで花粉が飛散する仕組みです。「えい」の中にある、めしべの柱頭に花粉が付着することで受粉成立です。花粉に向かって花粉菅が伸び、胚に花粉が送られ受精が完了します。受精後「えい」が閉じ、胚に栄養が送られるようになると子房が膨らみ、やがて受精から25日たつと玄米の姿に成長します。
自家不和合性
自家不和合性は遺伝の多様性を保つため自家受粉しないようになっている仕組みのことを指します。しかし、これは100%ではありません。環境や生育段階でも大きく左右されます。例えばアブラナ科は高温の環境下で自殖種子ができる可能性がある植物です。また、植物が老化すると自家不和合性が安定せず自家受粉する植物もあります。なんとしても種子を残そうと植物が頑張っているようですね。
植物の突然変異
進化の過程で突然、自家不和合性から自家和合性へ変わることもあります。例えば、シロイヌナズナは自家和合性のアブラナ科ですが、もともとは不和合性でした。花粉で働く自己認識遺伝子が壊れたことにより、自己和合性へと進化したといわれています。周りに交配相手が少なく自家和合性の方が都合がよい場合、植物は自己に都合がよいように進化するのでしょう。
まとめ
植物の生態についておわかりいただけたでしょうか。植物には種子を残すためにさまざまな仕組みが備わっています。ここでは自家受粉と他家受粉についてご紹介しました。花はいつも私たちのそばに咲いているので、ぜひ観察してみてください。
- 1
- 2