キブシってどんな木?
キブシは日本の庭や公園、野山など至る所で見ることができる落葉低木です。桜よりも早く花が穂状に咲き、花は生け花として利用したり、山菜として食卓を飾ったりと、春の訪れを感じさせてくれます。果実からは染料の原料であるタンニンが取れます。今回はボタ爺と一緒にキブシについて詳しく見ていきましょう。
基本情報
学名 | Stachyurus praecox |
和名 | キブシ(木五倍子) |
別名 | キフジ |
科名 | キブシ科 |
属名 | キブシ属 |
原産地 | 日本全国 |
生体 | 落葉低木・雌雄異株 |
樹高 | 2~5m |
花期 | 3~4月 |
結実期 | 9月 |
ボタ爺
学名のStachyurusとはギリシャ語で「穂」という意味。praecoxとは「早咲きの」という意味じゃよ
キブシの名前の由来
キブシ(木五倍子)という名前は、五倍子(フシ)から採れる染料の代用とされたことに由来します。五倍子とは、ウルシ科の落葉樹であるヌルデの若芽や葉にヌルデシロアブラムシが寄生し、その刺激によって細胞を変異させたものです。これを虫こぶと呼び、タンニンを多く含みます。和名であるキフジは、枝の各節から垂れ下がる花の姿が藤のようであることから黄藤(キフジ)とも呼ばれます。
キブシの花言葉
キブシの花言葉は「待ち合わせ」「出会い」「嘘」です。キブシは切り花としても利用されることがありますが、花言葉を大切にされる方へ贈るときは避けたほうがよいでしょう。「待ち合わせ」や「出会い」はポジティブな印象ですが、「嘘」は少し怖い花言葉ですね。
ボタ爺
キブシの花言葉には「嘘」も入っとるのじゃよ!花をプレゼントするときは花言葉にも気をつけねばならんのう
キブシの特徴
キブシは、日本原産の落葉低木です。雌雄異株(しゆういしゅ)で、雌花、雄花の咲く株がそれぞれ異なります。枝の各節から花茎が出て垂れ下がり、早春に小さな鐘形の花を穂状に咲かせます。花より遅れて春ごろに葉が生い茂り、秋には結実し、雌株からタンニンを多く含む果実が取れます。冬には黄葉~紅葉が見られ一年中楽しませてくれます。
花の特徴
キブシの花は、葉が出るよりも先に咲きます。穂状で花茎は長さ3〜5cm前後。立派に育つと10cmになることもあります。前年枝の各節から花茎が垂れ下がり、まるでかんざしの飾りのように咲きます。雌株、雄株の花はよく似ていますが、違いはあるのでしょうか?
雌花と雄花の違い
雌花 | 雄花 | |
花弁 | 4枚 | 4枚 |
がく片 | 4枚 | 4枚 |
花の色 | やや緑色 | 淡黄色 |
花穂 | 3~5cm | 雌しべより長い |
雌しべ | 1個 | 1個 |
雄しべ | 8個(退化) | 8個 |
花は小さく7〜9mm程の鐘形です。花弁が4枚、がく片も4枚で内側の2枚は大きく花弁状になります。開花時期でも花弁は大きく開かず半開きの状態です。花穂は、雌花より雄花の方がやや長く、花の色は、淡黄色をしているのが雄花、やや緑色をしているのが雌花です。よく見ると雌花の雄しべは退化していてほとんどありません。
ボタ爺
この花は雄花じゃよ、花色が淡黄色で、雄しべが退化しとらん
花を食べる
キブシの花は食べることができます。おひたしや天ぷらにして早春の味を楽しめますが、受粉した雌花は子房が固くなり、タンニンが多く渋くなります。キブシの味を楽しむのであれば、結実しない雄花を食べるほうが間違いないでしょう。
葉の特徴
キブシの葉は花の時期が終わった5月頃から出てきます。葉の表は、深い緑色で無毛。裏は淡い緑色で葉脈上の硬い毛がざらつきます。互生し、長さ8〜12cm、幅3〜5cmほどの卵形で、先端は鋭尖形(えいせんけい)で縁にはノコギリのような鋸歯があります。秋になると暖地では黄葉、山間地では赤く紅葉します。落葉樹なので冬には枯れて落ちます。
ボタ爺
美しく紅葉するためには秋晴れのように、昼の温度が高く光が充分にあたり、夜は冷えることが必要なのじゃ
実の特徴
葉が出はじめると、淡黄色の雄花は花穂ごと落ちてしまいます。雌花は結実し、緑色の果実がつきます。かんざしの飾りのような花姿でしたが、緑色の実が熟すと黒くなり8mmほどの楕円形で、ぶどうのような姿になります。実は苦くて食べるこはできません。
染料としての用途
キブシの実はタンニンを多く含み、昔は染料の原料である五倍子(フシ)の代用として使われていました。実を乾燥させ粉にし、主にお歯黒の染料として利用されていました。しかし、受粉した雌花はタンニンを多く含むので、渋くて食べることができないのに、お歯黒をしていた女性は渋くなかったのでしょうか?
ボタ爺
お歯黒とは、古代の既婚女性が歯を染める化粧法じゃ!塗った後は渋さを消すために、うがいをしていたそうじゃよ
お歯黒の効果
お歯黒をしていた人の歯には虫歯がありませんでした。お歯黒をする前にあった虫歯もお歯黒をした後からは進行が停止しています。これには理由がいくつかあります。まず、お歯黒は歯が綺麗でないとうまく染まらないため、歯の掃除をしっかりとしていた。そして、タンニンには歯や歯肉を細菌から守る効果があり、歯の表面に塗る歯黒は、細菌が接触することを予防していたのです。お歯黒には虫歯や歯肉炎予防する効果があったのです。
出典:写真AC