ドイツトウヒとは
ドイツトウヒは常緑の針葉樹で、ヨーロッパが原産ですが、日本にも主に中部地方以北に分布しています。ドイツトウヒは巨木になると70m超の高さになるものもあり、松葉に似た針葉と細長い松ぼっくり(球果)をつけるのが特徴です。クリスマスツリーに使われる樹木としてもポピュラーです。
ドイツトウヒの基本データ
名称 | ドイツトウヒ |
学名 | Picea abies |
別名 | ヨーロッパトウヒ オウシュウトウヒ |
分類 | マツ科 トウヒ属 |
性状 | 針葉樹 常緑高木 |
原産 | 北ヨーロッパ 東ヨーロッパ ロシアなど |
日本での分布 | 中部地方以北 |
生育環境 | 寒冷地を好み温暖地では生長が鈍る |
ドイツトウヒはドイツが原産?
ドイツトウヒは名称からのイメージで、ドイツが原産地だと思われがちですが、実はドイツ限定ではなく、ヨーロッパ全体の寒い地域やロシアに及びます。日本には明治時代に導入され、ドイツトウヒと言われてきましたが、オウシュウ(欧州)トウヒやヨーロッパトウヒなどの別名もあります。
ドイツトウヒの特徴
ドイツトウヒは原生・植林を含め、中部地方以北でポピュラーな樹木ですので、山や公園で見る機会が多いはずです。しかし、実際少し見ただけでは種類の特定が難しいのも事実です。樹高や姿はどうなるのか、葉、幹、松ぼっくりにはどんな特徴があるのか、確認していきます。
ドイツトウヒの高さ(樹高)
第一に特筆すべきドイツトウヒの特徴は、並外れた高木になることです。世界中には50~70mのものも存在しており、巨大すぎるドイツトウヒは、その根元から見上げても樹頭は遥か彼方です。育てる場合も、成長速度が早く、1年間で60cm前後、高さを増すことがあります。
ドイツトウヒの大きさ
全体的な姿も、ドイツトウヒは条件が良ければ大変大きくなることが特徴です。年数を経たドイツトウヒは、高さのみならず幹が太り、枝も大きく広がり、ボリュームのある深緑色の葉は垂れ下がります。大きな円錐状の樹姿は重厚で壮大です。
ドイツトウヒの葉の特徴
小枝をらせん状に巻くように、ドイツトウヒは先の尖った針のような葉を多くにつけています。葉長は最大2cm程度です。棒状で、断面は四角形。各面には気孔線(帯)という薄白い線が走っています。表面は滑らかで、生長が進むにつれ黒っぽい深緑色になります。
ボタニ子
ちなみに写真の赤いものは、あとで説明する松ぼっくりの若いときの姿です。
ドイツトウヒの幹の特徴
古いドイツトウヒは、幹が太くなり、直径2mに及ぶものもあります。樹皮の色みは樹齢の若い木は褐色ですが、生長するにつれて灰色または黒みがかってきます。樹皮はガサガサしたウロコのようにひび割れ、大きく剥がれ落ちます。時折、樹皮の間から樹液が流れ出ているのが見られます。
ドイツトウヒの松ぼっくり(球果)の特徴
ドイツトウヒは春に開花し、秋に実(球果)を結びます。実は、一般に長い松ぼっくりなどと呼ばれます。若い実は色が赤っぽく直立していますが、生長すると茶色くなり枝からぶら下がるのが特徴で、20cm程になるものもあります。重なり合う松かさの間に種子が入っています。
ドイツトウヒの用途の例
ドイツトウヒについて驚くことは、用途の幅が非常に広いことです。災害防止の植林から、木材、実用品、楽器、装飾目的まで、多様です。これはドイツトウヒがバラエティに富んだ用途に対応する優れた特性をもっていることを表しています。ドイツトウヒの利用実例を、いくつかご紹介します。
風雪対策・公園樹の用途
ドイツトウヒは大きさを利用し、防風林、防雪林の用途で植林されます。常緑で垂れ下がるボリュームがある葉は、雪崩の防止効果もあります。その他、公園樹や庭園樹としての用途があります。ドイツトウヒは十分なスペースが確保できれば、庭木にされることもあります。
建材・パルプ材の用途
ドイツトウヒは建築材の用途でも重用されています。木材としてはホワイトウッドと呼ばれ、白色で木目が整っていることに加え、加工がしやすいことが特徴で、建材や内装材、床材として幅広い用途に使われています。また、パルプ材の用途としての需要もあります。
楽器・家具への用途
ドイツトウヒは乾燥した際の収縮率が低く、木材として寸法の変化が少ない優れた特徴があります。そのため、家具や緻密な木製品の製作の用途があります。また、弦楽器と相性が良く優れた音響を創り出するため、バイオリン、ギター、ピアノなどの振動板の用途に使われています。
装飾・芳香などの用途
ドイツトウヒはクリスマスツリーに使われる代表的な樹木です。松ぼっくりはリースやアレンジメントの用途に使われ、特に秋から冬にかけ美しい装飾の数々が見られます。その他、ドイツトウヒは香りが良いので、アロマオイル、ルームスプレーなどの材料にもなります。
ボタニ子
次のページでは、ドイツトウヒとトウヒの違いなどを見ていきます。
出典:写真AC