ドイツトウヒとトウヒの関係
ドイツトウヒのことを説明してきましたが、そもそも「ドイツ」がつかない「トウヒ」とはどんな樹木なのか、気になりませんか?ここからは、まずトウヒのことを説明し、次に関係という点でドイツトウヒとトウヒはどうなっているのか、どこが違うのかを見ていきます。
トウヒについて
名前を比べてみると、トウヒはドイツトウヒと同列のトウヒ属の一種か、またはドイツトウヒがトウヒの下に位置しているかのようなイメージもありますが、実はもう少し複雑です。ドイツトウヒと並ぶトウヒ属にはエゾマツがあり、トウヒはエゾマツの変種や別種とされているのです。
トウヒの基本データ
名称 | トウヒ |
学名 | Picea jezoensis var. hondoensis |
分類 | マツ科 トウヒ属(エゾマツの変種とされる) |
性状 | 針葉樹 常緑高木 |
原産 | 日本 |
分布 | 主に中部・近畿地方の山岳 |
生育環境 | 寒冷地に適し、温暖地では成長が遅い |
トウヒはエゾマツの変種
トウヒ属 |
ドイツトウヒ
(Picea abies) |
|
エゾマツ |
トウヒ |
ボタニ子
トウヒを説明するには、エゾマツとの関係を語らなければなりません。表にするとこのような関係です。
トウヒはエゾマツより葉と松ぼっくりが小さい
トウヒもエゾマツも日本原産で、寒冷な環境を好み、主に中部地方以北に自生し、または植林されています。樹姿は非常に似ていますが、トウヒはエゾマツよりも葉と球果が小さいことが特徴です。限られた地域のエゾマツが長い年月の間に独自の特徴を得たものが、トウヒとなったようです。
ドイツトウヒとトウヒの違い
トウヒ属は見分けが難しいものがあることに触れましたが、ドイツトウヒとトウヒも樹姿が似ており、遠目には違いを探すのが困難です。近くで観察したときに最もわかりやすいのは葉の形状の違いです。葉を中心に、見分ける手がかりをご紹介します。
違いをまとめた一覧表
ドイツトウヒ | トウヒ | |
葉の長さ | ~20mm | ~10mm |
葉の形状 | 針状で棒状。断面は四角形 | 平たく表裏が明瞭 |
葉先 | 尖っている | 丸または尖っている |
葉の気孔線 | 各面にあり(計4本) | 葉裏に2本 |
樹皮の色 | 褐色または灰褐色 | 赤褐色 |
松ぼっくりの大きさ | ~20cm | ~10cm |
樹高 | ~70m | ~40m |
葉の違い
ドイツトウヒの葉
ドイツトウヒの葉は、長さは2cmくらいまで伸びます。松葉のように棒状で先が尖っており、断面は四角形または菱形です。年数を経た葉は固くなり、触ると痛いこともあります。葉の形が立体的なので、表と裏という区別はなく、それぞれの面に気孔線という白い筋があります。
トウヒの葉
トウヒの葉は、長さは1cmくらいまで伸びます。形は平らな線状で葉先は丸みのあるものと尖っているものがあります。平面的な葉形なので、表と裏がしっかり区別でき、裏面に白い気孔線が2本あります。写真は葉が左右に並んでいるものですが、らせん状につくものもあります。
樹皮の違い
木の表面に目を向けると、樹皮の色がドイツトウヒは褐色~灰褐色、トウヒは赤味のある褐色という違いがあります。しかし、若木と成木では様子が異なりますし、老木には苔などが付着し色が変わっていることも多いので、樹皮を手がかりに見分けるのは難しいかもしれません。
樹高やパーツの大きさの違い
トウヒよりドイツトウヒは全体的に大きいという違いがあります。それは一覧表を見るとよく分かります。ドイツトウヒのほうがより高く、葉が長く、松ぼっくりも大きいのです。ただし、双方ともに生長段階によってもパーツの大きさは異なるので、大きさだけで見分けることは難しいでしょう。
まとめ
ドイツトウヒは、冬でも豊かな深緑の葉や温かみのある松ぼっくりが魅力的な樹木です。見分け方は難しいものの、私たちの身近にある樹木ですので、公園や植物園で探してみてはいかがでしょうか?クリスマスシーズンには街中にもツリーとして登場するので、観察するチャンスです。
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出典:写真AC