クスノキってどんな木?
クスノキの基本情報
名前 | クスノキ、楠、樟 |
学名 | Cinnamomum camphora |
分類 | クスノキ科ニッケイ属 |
分布 | ベトナム、台湾、中国、日本(太平洋側に多く分布) |
親しまれる大樹
クスノキとはどんな木なのでしょう?クスノキは、アジアの温暖な地域に分布する、樹高の高い常緑の照葉樹です。日本では、本州から九州の太平洋側に多く分布しています。神社や公園のシンボルツリーとして、また街路樹として親しまれています。アニメ映画「となりのトトロ」では、トトロが住む巨木として描かれていましたね。
樟脳の木
独特の匂いがあり、クスノキから作られる樟脳(しょうのう)は防虫剤として利用されてきました。寒冷地では育ちませんが成長した後には、時折の寒波には強く、あらゆる耐性があります。樹木として、木材として、薬品やアロマとして、様々な用途のある樹木です。
クスノキの名前の由来
「薬の木」「奇し木」「臭し」説
クスノキの名前の由来は諸説あり、独特の匂いが臭し(くすし)、あるいは「薬の木」が変化した説が一般的です。クスノキには防虫、殺菌や解熱の効果があることが古来から知られていました。また、クスノキは神事を司る木でもありました。それらは、奇しき(くしき、くすしき:不思議な)ことであり、「くすしき」がクスノキになったのではないかとも言われています。
学名と英語名の意味
クスノキはカンフルの木
クスノキの学名の「Cinnamomum」はシナモン(肉桂)の、「camphora」はカンフルのことです。英語名も「Camphor tree」「camphorwood」で、カンフルの木と呼ばれています。
カンフル剤などのカンフルです。樟脳のことね。
「楠」と「樟」
クスノキの漢字表記は、「樟」または「楠」です。「樟」には木の印の意味、高く立つ意味があると言われ、「楠」は南方の木を表します。中国では「楠」はタブノキを指し、クスノキには「樟」の字が用いられてきました。
ナンジャモンジャの木との関係
ボタニ子
ナンジャモンジャの木ってクスノキのこと?
特定の木の名前ではない
ナンジャモンジャの木というのは特定の木の名前ではなく、神事に使われる木の名を言うのが憚られて、ナンジャモンジャの木と呼ぶようになったと言われています。あるいは、「どんな木なんだろう?」と、名前を知らない木の呼び名となったものです。
ナンジャモンジャの木と呼ばれるクスノキもある
神社の木や巨木、どんな木なのかわからなかった木がナンジャモンジャと呼ばれてきています。現在ではヒトツバタゴの木がナンジャモンジャの木としてほぼ定着しつつあります。ですが、以上述べた理由でナンジャモンジャの木と呼ばれるクスノキもあります。(例:神崎神社のクスノキ)
クスノキの特徴
樹形の特徴
自然樹形は円蓋形
クスノキは、しっかりした太い幹に枝が横に伸び、自然樹形は円蓋形(裾広の卵型)です。風に強く、折れずに風の形に癖がつくことから、強風にもまれて育つとやや変形した樹形になり、幻想的です。
幹の特徴
クスノキの幹は、若木の頃は緑色をしていて、樹皮もつるつるしています。樹皮は次第に褐色になり、10年経てば株もとの幹回りは1メートル近くなります。褐色の幹の樹皮はガサガサして、縦に裂け目が入り、樹齢を重ねると樹皮の裂け目が盛り上がってきます。
巨木になる
全国巨木ランキングトップ
大きく育つのもクスノキの特徴です。樹高、幹周共に20mを越えることがあります。環境省の全国巨樹・巨木林調査によると、幹回りの太さによるランキングトップ10のうち、6本がクスノキです。一番の巨木は、写真の鹿児島県姶良市蒲生町の八幡神社の「蒲生の大クス」です。
- ※未発見の巨木の存在も推定され、調査・報告が続けられています。
- 参照:環境省 自然環境局 巨樹・巨木林調査
葉の特徴
鮮やかな若葉
ボタニ子
新芽と若葉、きれい!まるで花が咲いてるみたいだね。
クスノキの葉は光沢のある緑色です。葉の形は楕円形の全縁(縁がなめらか)で、葉脈は主脈が3つ入った三行脈です。新芽は冬の季節に作られます。長い卵型の新芽は4月に芽吹きます。新芽は赤みがかっていて、新しい葉はグリーンイエローや淡いオレンジ色をしていて、花のような明るい彩りを見せ、クスノキが華やぐ季節です。
紅葉の季節は春
常緑樹ですが、4月下旬に葉の更新の季節を迎えます。若葉が萌える頃に、赤く色づいた古い葉がおびただしく降りしきり、圧倒的な生命力を感じさせます。
新芽にアオスジアゲハが産卵
クスノキの新芽や葉っぱは、アオスジアゲハの幼虫の大好物です。美しいアオスジアゲハはクスノキの新芽に産卵し、孵化した幼虫は葉を食べて成長します。
アオスジアゲハは新芽も食べちゃうんですよ。
ダニ室の存在
ボタニ子
えええ、ダニの部屋があるの?
ダニとの共生関係説
クスノキの葉っぱの特徴として、ダニ室の存在があります。葉の葉脈の付け根の膨らんだ箇所にダニが集まることから、ダニ室と呼ばれます。葉にダニ室を持つ植物はブナやケヤキなど他にもあり、その機能は研究の対象になっています。ダニと植物は共生関係で、ダニ室で植食性のダニを肉食系のダニに退治させているのではないかとの説があります。
落ち葉と共にダニを排出する説
クスノキの場合は、春の落葉の前にダニ室にはフシダニ(植食性ダニ)の数がもっとも多くなるとの調査結果があります。植物にダメージを与えるダニをここに閉じ込めておいて、落葉の季節に葉と共に振り落とすシステムになっているのではないかとの研究が発表されています。下のリンク先を参照。
花の特徴
小さな白い花
クスノキの開花の季節は5月~6月で、クリーム色がかった白い小さな花を咲かせます。新しい葉の脇から長い軸が伸び、円錐の形に分岐して花を付けていきます。花言葉は「芳香」で、花にもほのかな香りがあります。
実の特徴
夏の季節に直径1cm弱の薄緑色の実をつけ始め、10~11月頃に艶やかな紫黒色に実ります。実は、鳥が食べて運び、あちこちで実生の苗が育ちます。
匂いの特徴と防虫効果
クスノキには独特の香りがあり、公園や神社でクスノキの剪定をしていると100m先からでも匂いでわかるほどです。新芽や根も香ります。クスノキのこの匂い成分には防虫効果があります。
ボタニ子
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photo by Sandy