ナンバンギセルとは?寄生植物ってホント?その特徴や育て方を解説!

ナンバンギセルとは?寄生植物ってホント?その特徴や育て方を解説!

ナンバンギセルは、夏から秋の時期にススキなどの根本に咲く野草です。しかし根元に咲いているだけではなく、ススキの寄生植物だといわれています。本当にナンバンギセルは寄生植物なのでしょうか。名前の由来や花や葉や種の特徴、育て方とともにご紹介します。

記事の目次

  1. 1.ナンバンギセルとは
  2. 2.ナンバンギセルは寄生植物か?
  3. 3.ナンバンギセルの特徴
  4. 4.ナンバンギセルの育て方
  5. 5.まとめ

ナンバンギセルとは

出典:BOTANICA

ナンバンギセルという名前のキセルのようなユニークな形の植物をご存じですか。ナンバンギセルはハマウツボ科ナンバンギセル属の一年草で、日本では冷涼な気候の北海道から温暖な沖縄まで広く分布しています。8~10月頃にススキの根本などを覗いてみると、古くは万葉集にも歌われている風情のある不思議な花に出会えるかもしれません。

ナンバンギセルの基本情報

出典:写真AC

名称 ナンバンギセル(南蛮煙管)
学名 Aeginetia indica
別称 オモイグサ(思草)
分類 ハマウツボ科 ナンバンギセル属
形態 寄生植物(一年草)
分布 アジア東南部 日本では北海道から沖縄まで
開花時期 8~10月頃
花色 紫、赤紫、薄紫、白
草丈 ~30cm程度

ナンバンギセルの名前の由来

出典:写真AC

漢字で書くと、ナンバンギセルは南蛮煙管となります。南蛮とは時代によって異なりますが、東南アジアやポルトガル、スペインなどの外国を意味する言葉です。キセルは日本では江戸時代に広まった喫煙具で、日本に入ってきた南蛮人が使っていたキセル(パイプ)に草姿が似ていたことから、南蛮煙管という名前になったといわれています。

万葉集には「思ひ草」の名前で登場

出典:BOTANICA

ナンバンギセルの別名は思草(オモイグサ)です。古くは奈良時代の終わりに成立した万葉集に「思ひ草」として登場する植物が、ナンバンギセルだとされています。人々の生活の中で、キセルに例えられる以前から、尾花(ススキの別名)に寄り添って咲く花として知られていたことがわかります。首をかしげて咲く姿が、なにかを思っている人の姿のようにも見えますね。

ナンバンギセルは寄生植物か?

ナンバンギセルは寄生植物です。静かにひっそり咲いているように見えて、実は近くに生えている他の植物から栄養を吸い取っているのです。寄生植物とは、土に直接ではなく、他の植物に根っこを張ってその植物の栄養を吸収します。ナンバンギセルも同じく寄生植物で、葉緑体をもっていないので自ら栄養を作ることができず、寄生する植物から全面的に栄養をもらって生きています。

ナンバンギセルの宿主

特定の植物を宿主(親草)として生長するのが寄生植物です。ナンバンギセルは一般的にイネ科の植物の根っこに寄生し、自然の中ではススキとともに見られるケースが多いですが、宿主の種類が多いのも特徴です。陸稲、サトウキビ、ミョウガ、ギボウシなどにも寄生し、収穫を目的とした作物がナンバンギセルに養分を吸い取られ、弱ったり枯れたりする被害もあります。

ナンバンギセルの特徴

出典:写真AC

ナンバンギセルは、土の中から花茎だけを伸ばし、ひょっこりとユニークな形の花を咲かせる姿が特徴的です。ナンバンギセルは、野原や公園のススキの草陰にひっそり咲いていることもありますし、愛好家が育てている鉢を見せてもらうこともできます。壺のような円筒形の花の構造はどうなっているのか、葉はどこにあるのか、種はどんな形なのかなど、特徴を見ていきましょう。

葉の特徴

ナンバンギセルには葉らしきものが見当たりませんが、全くないわけではありません。ナンバンギセルの葉は退化しており、地中の根の近くに小さな芽のような形の鱗片葉というものが存在します。このように葉が退化し葉緑体をもたないため、生長に必要な養分を全く自分では作ることができず、全面的に他の植物に寄生し、栄養をもらって生きているのです。

花茎の特徴

出典:写真AC

地中でススキやイネなどの植物の根っこに寄生したナンバンギセルの地上に出てくる部分は、花茎だけです。不思議で妖しげな雰囲気をもった花茎の色は、茶色っぽい紫や薄黄色の単色、または紫系の色と薄黄色の縞模様などがあります。先端の萼(がく)は先が尖り、薄皮のついたピーナツに似た紡錘形をしています。成熟すると破れ、中から花が顔を出します。

花の特徴

ナンバンギセルは8月~10月頃が開花時期です。花の大きさは3cm程度。色は紫系、または紫と白のグラデーションなどです。真っ白な花もあり珍重されています。茎1本につき1つ、うつむいたような角度で咲く花は、付け根にある大きな萼に包まれた形状です。花の構造は筒型で、奥に黄色い大きな雌しべがあり、花びらの辺縁は浅い切れ込みがあります。

実(種)の特徴

花の時期が終わると、ナンバンギセルは実を結び、花の奥の雌しべが大きくふくらみます。結実後、1~2カ月で焦げ茶色に枯れた姿となり、花びらはなくなっても大きな萼の部分はそのまま残り、実を包んでいる形になります。この中に細かい粉状のナンバンギセルの種がたくさん詰まっています。自然の環境では、この種がこぼれ落ち、またススキなどの根に寄生します。

ナンバンギセルの育て方

出典:写真AC

北海道から沖縄までの全国の草地や公園などで身近に見られるナンバンギセルですが、いざ自分で育ててみるときにはどうしたらいいのでしょうか。寄生植物のナンバンギセルの育て方の重要なポイントは、単独では育たず、宿主となる親草が必要ということです。とはいえ、難易度はそれほど高くありません。親草と一体になった種まき済みのポットや苗を購入して育てるほか、種からも栽培できます。

苗を購入する

山野草の苗/ナンバンギセル(南蛮煙管)3号ポット

参考価格: 955円

出典: 楽天
出典: 楽天
出典: 楽天
出典: 楽天
楽天955円

インターネットや山野草を扱っている園芸店で、既にススキなどの親草に寄生しているナンバンギセルを購入できます。はじめて育てる場合には、この方法からがおすすめで、鉢植え、庭植えともに栽培可能です。親草に元気がないとナンバンギセルも育たないので、育て方のポイントは親草の生育に適した用土や管理方法を施し、親草をいきいきと生長させることです。

種から育てる

ナンバンギセルは種から育てられますが、種の状態ではあまり流通していません。はじめて栽培する場合は、園芸仲間や愛好家から種を分けてもらうか、山野草を専門に扱うショップをあたって種を探します。また、種をまく前の準備として、ススキやミョウガといったナンバンギセルの宿主となる親草を入手して丈夫に育てておく必要があります。

種のまき方

種と親草が用意できれば、あとはさほど難しくありません。3~4月頃、あらかじめ育てておいたススキなどの親草にナンバンギセルの種をまきます。方法は、親草の根本を掘り、露出させた根の上にナンバンギセルの粉状の種をまぶすように付着させて、また土で覆います。すべて発芽するわけではないので、少し多めの量をまきます。

2年目から種をまくということも

種や親草の用意が難しい場合、1年目は親草とセットのナンバンギセルのポットなどを購入して育て、秋に種を取り、2年目にその種をまくところから育てる方法もよいのではないでしょうか。多年草の親草をしっかり管理して育てつつ、採取した種をまけば毎年楽しめます。放置でもこぼれ種が地中にもぐり発芽することがあります。

ナンバンギセルと親草の管理

種まき後はナンバンギセルの花茎が出てくるのを待ちながら、親草に合った生育環境を整えます。ナンバンギセルは養分の摂取を親草に頼っているので、親草がよく育つことはナンバンギセルにとっても大切なことなのです。ナンバンギセルが養分を吸いすぎると親草が枯死してしまうので、ススキやミョウガなど、選んだ親草ごとに適した管理を行い、肥料を与えるのもよいでしょう。

まとめ

出典:写真AC

ナンバンギセルは実に多くの表情をもっている植物です。形はユニークでいて美しく、もの影に咲く奥ゆかしさや風情がある一方、寄生植物としての妖しさやたくましさも兼ね備えています。さまざまな魅力をもっているからこそ、古くから鑑賞され歌に詠まれてきたのでしょう。散歩の途中にススキやイネの根本にナンバンギセルを探してみてはいかがでしょうか。または、寄生植物を園芸に取り入れてみるのも楽しいものです。

koke_dama
ライター

koke_dama

見る人の心を癒やす植物の力。偉大ですね!

関連記事

Article Ranking