ひょうたん(瓢箪)の栽培方法④人工受粉・摘果
ひょうたんの花は、仲間である夕顔の花とよく似ています。夕顔の花は源氏物語にも登場するように、昔は観賞用とされていました。ひょうたんの花も白くなよなよとした花びらをした、優し気な花です。前述した通り、雌花は子づるの1枚目~3枚目の葉の付け根、孫づるでも1枚目~3枚目の葉の付け根につきます。それより先のつるにつくのは雄花です。両方とも白い花ですが、雌花には画像のように子房(実になる部分)がついているため見分けがつきます。
ひょうたんの受粉
花の中心部の形も同じではありません。画像左が雌花、画像右が雄花です。ひょうたんの花は夕方~夜にかけて開花します。自然界では夜行性のスズメガが花粉の仲立ちをしますが、梅雨前にはまだスズメガがいないため人工授粉が必要です。しかし雌花と雄花が同時に咲くとは限りませんし、雨の日に咲いた雄花の濡れた花粉は機能しません。そのため雄花が咲いたら、いくつかを冷蔵庫で保存しておきます。保存可能期間は3~4日です。
雨の日の受粉を避けるため、受粉は梅雨前に行うのが理想的です。受粉の方法は、雄花の花びらをむしり取り、雌花の花柱を折ったり傷つけたりしないように、まんべんなく花粉をつけます。子房に生えている毛は、虫などから実を保護しているため、できるだけ触らないほうがよいです。受粉が成功すると、子房の部分が徐々に大きくなりながら垂れ下がってくるでしょう。
ひょうたんの摘果
受粉後、3~7日を目安として摘果(果実の間引き)を行います。できた実は全部育てたくなりますが、小さい実しかならなかったり、栄養不足で全て枯れてしまったりするからです。ジャンボひょうたんなど特に大きく育てたいものでは、最初は子づるに1つずつ実を残しておき、10cm程度に育ったところでよいほうを残して1株当たり1つにしぼります。千成ひょうたんでは、悪い実を摘果する程度でもよいでしょう。摘果する際に残す実を決める際のポイントは次の4つです。
摘果で残すよい実の基準
- 開花したときの子房の長さが長いもの(大きなひょうたんになる傾向がある)
- ひょうたんになったときに口になる部分があるもの
- 子房の形がよく、毛が多いもの
- 受粉の際の雌しべの状態がよかったもの
摘果を行ったら、残した実のつけ根の葉と、その葉と同じ維管束でつながっている葉は特に大事にします。維管束でつながっているため、光合成でできた養分が実に送られ、実が育ちやすくなるからです。例えば画像の赤く塗った実を残す場合は、つけ根にある17番の葉と、この実に栄養を送ってくれる2、7、12、22番目(画像緑の丸印)を大切にします。葉を5枚ずつ数えていけば簡単です。
ひょうたん(瓢箪)の栽培方法⑤収穫
ひょうたんの実が徐々に大きくなってくると収穫を心待ちにする人も多いでしょう。しかしこの頃に、病害虫以上に厄介な問題が発生することがあります。悲しいことですが、それは心無い人間です。珍しいため欲しくなってしまうのでしょう。夜の闇に紛れてこっそりと、大きな実を選んで盗んでいく人がいるのです。幼稚園の園庭で園児が楽しみに待っていたひょうたんが、大きいものだけ未熟なうちに盗まれた例もあります。盗難にも十分お気をつけください。
収穫の時期の判断方法
ひょうたんは受粉後28~40日程度の時期が、実が肥大する期間です。果実の肥大が止まると、最低1カ月程度の成熟期間に入ります。つまり、受粉後2カ月(6月中旬に受粉したものは、8月中旬~下旬)が収穫時期の目安です。他にも収穫時期の判断基準はあります。
収穫時期の判断方法
- 受粉後2か月が経過した
- 緑色でだんだん重くなっていった実が、白っぽく軽くなる
- 実の近くの巻きひげが枯れる
- 口の辺りの毛がなくなる
ひょうたんの実はおしり(下)の方から熟して毛が取れてくる。口の辺りの毛が取れるのが最後
ひょうたんは収穫時期が遅れても問題ありません。未熟なうちに収穫すると、皮が薄く壊れやすいため慌てて収穫しないようにします。茎や葉が枯れるまで置いてもよいです。しかし台風で落ちて割れる危険性を考えると、台風襲来前に収穫するのが望ましいでしょう。
収穫の方法
収穫の方法は特に難しいことはありません。実を落とすと割れることがあるので、特に大きな実の場合は注意して行います。上に種抜きの穴を開ける場合は、画像のようにつるをある程度残して切って、後で口のすれすれのところでつるを切り落としましょう。おしりの真ん中に穴を開け、つるは残してその風情を楽しむという方法もあります。その場合は、つるの形を見ながら好みの長さを残して切ればOKです。
ひょうたん(瓢箪)はベランダやプランターでも栽培できる?
ひょうたんは基本的に地植えが向いています。しかし千成ひょうたんのような小型の種類であれば、鉢植えやプランターでも栽培は可能です。最近は窓際やベランダなどでグリーンカーテン(緑のカーテン)として利用しながら、収穫を楽しむ方も増えています。直径30~50cm以上の鉢か65cm以上の深く大型のプランターに1株程度が目安です。慣れた方は行灯づくりに仕立てることもあります。用土は赤玉土5:腐葉土5程度か、野菜用の培養土が適当です。
鉢植えやプランターの場合は特に水切れしやすく、盛夏の時期には朝夕2回の水やりが欠かせません。つるは、つる植物用の10cm程度の網目のネットを張って誘引します。グリーンカーテンの場合は高さを抑えて幅広く育てるのが基本です。そこで、6枚目の本葉が出たら摘心し、子づるが伸びたらまた6枚目の本葉が出たところで摘心することを繰り返します。つるはネットに均一に広がるように誘引して結束しましょう。古い葉や余分な脇芽は摘み取ります。
ベランダなどでの鉢植えやプランター栽培では、小ぶりな千成ひょうたんといえども根の張りが十分とはいきません。養える果実の数に限りがあるため、千成ひょうたんでも摘果は必要です。ベランダ栽培での注意点としては、枯れた葉などで樋(とい)がつまらないようにしましょう。また、受粉などの際にはベランダから落下しないよう十分注意が必要です。土の上げ下ろし、水やりが十分できるかも考慮します。その他の育て方は普通のひょうたんと同じです。
出典:写真AC