椿と山茶花
冬の風物詩である椿と山茶花ですが、この2つの花は非常に似通っており、一見しただけではどちらかほとんど見分けがつきません。しかし、よく観察すると、この2つの花は似ている部分だけではないことにも気づきます。まずはそれぞれの花の基本情報からみてみます。
よく似ている椿と山茶花
名前 | ツバキ |
学名 | Camellia japonica |
分類 | ツバキ科ツバキ属 |
形態 | 常緑樹 |
名前 | サザンカ |
学名 | Camellia sasanqua |
属名 | ツバキ科ツバキ属 |
形態 | 常緑広葉樹 |
両方とも分類が「ツバキ科ツバキ属」とされています。分類的にもかなり似た種類であるということがうかがえます。形態は椿が「常緑樹」とされているのに対し山茶花は「常緑広葉樹」です。厳密にいえば異なるカテゴリーになるのかもしれませんが、一般的には見分けがつかないというのが正直なところでしょう。
椿と山茶花の違い
では椿と山茶花は一体どの点で異なるのか、具体的に見ていきます。一つ一つの特徴を細かく見ていくと、椿と山茶花が違う植物ということがよくわかります。
季節と開花時期の違い
椿:12~4月 山茶花:10~2月
椿が真冬に咲き始め、翌年春ころまで咲き続けるのに対し、山茶花はが秋口から咲き始め春の前に花期が終わります。春の訪れを表す花として挙がるのは椿、童謡「たき火」に歌われるのは山茶花、というのはそれぞれの開花時期にゆえんするものです。
葉っぱの違い
椿:大きくツヤツヤ、黒っぽい 山茶花:小ぶりでマット、明るい緑
椿の葉は山茶花に比べて大きいです。艶があり、葉の根本に毛が生えていません。しかし山茶花の葉は椿より小さく、色も明るい緑色です。葉の根本と裏面には短い毛が生えています。また、椿の葉の縁は山茶花に比べてまっすぐに見えるのに対し、山茶花の葉の縁はノコギリのようにギザギザしているという特徴もあります。しかし、これらは2つの葉を見比べて初めてわかる程度のものなので、数本の木の葉っぱを取ってみて、同時にチェックしてみるとわかりやすいかもしれません。
花の違い
椿:全開せずカップ形 山茶花:全開して平たい
椿は全開せずに全体的に丸みを残した状態で咲くのに対して、山茶花は付け根から花びらが全開し横から見るとかなり平たく見えます。したがって、画像の花は椿です。
椿:花首から落ちる 山茶花:花びらが散る
散り方に関してはこの2つの花は全く異なっています。花首からもげて落ちる椿に対して山茶花は花びらが一枚一枚散っていきます。椿の花が落ちる様子は江戸時代の武士に「首が落ちる」ことを連想させ「椿は縁起が悪い」と敬遠されたのは有名なエピソードです。
香りの違い
椿:ほとんどない 山茶花:芳香がある
ほとんど香りのない椿に対して山茶花は花に顔を近づけてみると種類によってはかなりはっきりその香りがわかります。近づける距離の花なら、実際に香りを嗅いでみるのもわかりやすいポイントです。
椿と山茶花の見分け方
椿と山茶花のそれぞれの特徴がわかったところで、花の見分け方のポイントを解説します。複数の見分け方を心得ておくと、咲いている場所を問わずに確実に見分けられるでしょう。
季節で見分ける
冬の終わりに咲いていたら椿、秋に咲いていたら山茶花です。これは最も簡単な見分け方ですが、開花時期が重なる冬は迷います。その時は別な特徴の部分で見分けてみましょう。
花・葉っぱで見分ける
花が丸くカップ形なら椿、全開して平たければ山茶花です。画像は山茶花になります。また、葉が黒っぽくツヤツヤしていれば椿で、緑色で艶がなければ山茶花です。葉の縁がギザギザかどうかも大きなポイントですが、近づけない距離の木であれば上記の方法で見分けましょう。
香りで見分ける
かなり近くまで近づける距離の木なら香りで見分けるのもおすすめです。椿はほとんど香りを感じないのに対して山茶花は芳香を感じます。
まとめ
名前も花の形も知っていても、それぞれの違いまではあまり知られていない椿と山茶花ですが、両者にははっきりと見分けるポイントがいくつかあります。寒い季節には町のあちこちで見かけることが多くなるこの両者を、特徴を押さえて見分けながら歩くのも1つの楽しみです。それぞれの花の違いを見分けられれば、通りを歩くのがますます楽しくなることでしょう。