世界の料理を変えた野菜
ボタニ子
トウガラシのお守り貰ったよ!
ボタ爺
中華街によくあるやつじゃな。実物のトウガラシを針と糸で通して吊り下げておく風習もあるぞ。
ボタニ子
中華料理のレシピでも、トウガラシの粉や刻みがよく使われるよね。
ボタ爺
四川料理は特にそうじゃな。魔除けのお守りにもなるくらい、トウガラシは文化に根ざしているようじゃ。
トウガラシの原産地は?
ボタニ子
「唐」辛子っていうくらいだから、トウガラシは中国原産なの?
ボタ爺
いやいや、トウガラシは中国原産ではないぞ。トウガラシの原産地は中南米。中国に伝来したのは16世紀以降じゃ。
ボタニ子
そうなんだ。じゃあ、もしトウガラシが伝わっていなかったら…
ボタ爺
四川料理の味は別物になっていたかもしれんな。インドや韓国の料理もトウガラシが欠かせない。世界の料理のレシピを塗り替えた野菜と言っても差し支えないだろう!
中南米に始まるトウガラシの旅
ボタ爺
トウガラシは、日本や中国では比較的新しい野菜じゃ。その由来を見てみよう。
トウガラシは何種類?
中南米に40種類以上分布
トウガラシ属(Capsicum)はナス科に含まれ、メキシコ、ペルー、ボリビア、チリ、ブラジルなどに野生種が分布します。Germplasm Resource Information Network(GRIN)で公開されている遺伝資源リストによると、トウガラシ属は野生種・栽培種合わせて42種類報告されています(2019年現在。変種や別名を除く)。
ボタ爺
「種類」の定義は、分類の仕方や研究者の見解によって変わりうるぞ。今後、種数は増えるかも知れないし、統合されて減るかもしれん。
ボタニ子
それでも、すごくたくさんいるんだね!普段食べてるトウガラシは、そのうちの一部でしかないんだ!
発祥は古代メキシコ
メキシコでは紀元前1500年頃に文明が出現しました。しかしトウガラシはそれ以前から食べられており、紀元前5000年よりも昔まで遡れると考えられています。
メキシコ中部ラワカン渓谷では、西暦紀元前6,500〜5,000年代の遺跡からトウガラシが出土してお り、年代的にはここが発祥地の一つとみられている。
トウガラシ、ヨーロッパへ渡る
1492年、スペインを発ったコロンブスの艦隊が西インド諸島のサン・サルバドル島に上陸しました。ヨーロッパと中南米が繋がった偉業でした。中南米原産の野菜(トウモロコシ、ジャガイモ、トマト、カボチャなど)は、それまでヨーロッパでは知られていなかったのです。
ボタ爺
中南米で食べられていたトウガラシが、ついにスペインに知られたんじゃ。
コロンブス隊は西インド諸島やカリブ湾を探検しました。その時の記録に、原住民がトウガラシを利用していたことも書かれています。のちにブラジルを領有したポルトガルも、トウガラシを発見しました。
ボタ爺
ところが、スペインからの入植が進むと原住民との軋轢が生じた。入植者は武力に訴えて中南米を征服し、現地の国々は滅ぼされてしまったんじゃ。
ボタニ子
でも、トウガラシは生き残ったんだね。
トウガラシのことを西インド諸島先住民はアヒ、メキシコ先住民はチリと呼んでいました。先住民の呼称が、そのままスペイン語のajiと英語のchilliの由来になりました。当時はコショウ(pepper)の一種だと思われていたので、トウガラシのことを「レッドペッパー」「チリペッパー」と呼ぶこともあります。
ボタニ子
日本では、トウガラシを砕いた粉のことを「チリペッパー」と呼ぶこともあるよ。チリパウダーと同じ意味だね。
そして日本へ
アジアへの船旅
16世紀に海路が開拓されると、スペイン・ポルトガル船は東アジアまで来るようになりました。彼等と共にトウガラシも中国や東南アジアへやって来たのです。
ボタニ子
四川料理にトウガラシが加わったのも、この頃なんだね!
トウガラシは南蛮貿易や後期倭寇を通じて日本に伝わったと考えられます。異国から来た野菜だったので、「唐辛子」「南蛮胡椒」などと呼ばれました。しかし伝来したばかりのトウガラシは、日本ではほとんど定着しなかったようです。中国・韓国・ベトナムなど、もともと辛い味付けを好む文化のあった国では、唐辛子がスムーズに定着しました。
江戸時代に七味唐辛子が登場
日本でトウガラシが広まったきっかけは、江戸時代に作られた七味唐辛子でした。様々な漢方薬と組み合わせ、薬効を宣伝しながら行商人が売り歩きました。七味唐辛子は庶民的な調味料になり、現在も麺類などに薬味を添えるのに活躍しています。
ボタニ子
中南米から、長い道をたどって日本まで来たんだね!次のページでは、いろんなトウガラシの種類を見てみよう!
トウガラシとハクサイをあしらい、糸で繋げた魔除けのお守り。