植物から繊維がとれる!?
原料となる繊維の用途
古来より、日本のみならずアジア大陸各地において、カラムシの綿毛を原料として繊維を生み出してきました。茎の部分を蒸して皮を剝ぎそれらを繊維にするという知恵と技が受け継がれてきたのです。カラムシの繊維は糸の原料になったり、布や生地にして衣類などに利用したりと広く利用されてきました。麻生地は水にぬれても丈夫な性質があり、ロープや消防の消化ホース、漁網など幅広い用途に利用されています。
植物でみる日本の歴史背景
アジア大陸においてもカラムシの呼び名にはいろいろ種類があり、日本国内でも地域色が強く出います。カラムシ・マオ・ちょま・ラミーなど、いくつかの呼び名があるのも特徴の一つです。現在の伝統的工芸品として受け継がれている小千谷縮や宮古上布などは、カラムシの繊維を原料として織られていた麻の生地を利用しているのです。
糸や生地の原料
青苧糸
青苧糸のできるまでを順序立ててご紹介していきます。
- カラムシの群生を刈り取る作業から入ります。
- 葉や枝などはきれいに駆除します。
- 次に、茎の表皮を剥いでいきます。
- 青苧は乾燥させ、細く裂いてバラバラにしていきます。
- バラバラにした青苧を少しずつ紙縒りのように捩じっていきます。
カラムシは地下茎が発達しているため、軍政を刈り取る作業が何よりも大切になっています。青苧糸を作る原料は主に茎の部分を利用するため、葉や枝などはきれいに駆除します。茎の表側は俗に甘皮と呼ばれていて、この甘皮の部分を剃刀などを使ってそぎ落としていきます。削がれて残った部分というのが繊維、つまり青苧と呼ばれるものなのです。
こうしてできたものが、青苧糸です。昔の人々はこうした一連の流れをすべて手作業で行っていたことを考えると、頭が下がる思いです。青苧糸を利用した産業が成り立つにつれて、青苧糸の商人が集まり青苧座という組合を結成しました。文献によると日本の各地にいくつか青苧座があったことが分かっています。西暦1300年代後半からは、青苧糸の生産が大変に盛んだったことがうかがえます。
ラミー糸
かつて手作業で青苧糸を紡いでいた青苧座のあった江戸時代とは打って変わって、大正時代に入るとラミー糸を作るための機械化が進み社会に流通するようになっていきます。ラミー糸の製造方法は、青苧糸と同じ製造工程で作られます。このラミー糸は、青苧糸よりも強靭な性質を持つことからその用途は幅広く、工業用のミシン糸に使われたり漁網やロープなどに利用されたりしています。天然素材の繊維の中で、最も丈夫な繊維だともいわれています。その用途は、ラミー糸単体で織られる麻をはじめ、ウールなどのほかの繊維と一緒に加工されるものも作られるようになっていきました。
繊維植物から作られる麻にも種類があります。ラミーのほかにも、亜麻という繊維からはリネンが作られているのをご存知でしょうか。リネン繊維の用途は、夏用の衣料や寝具などに用いられていることが多くその存在は多くの方が知っていることでしょう。ラミーもリネンも繊維を使って麻生地を作りますが、どちらも乾きやすくて保温性があるという特徴を持っています。どちらも用途は同じなのですが、ラミー糸を使用した麻の方が黴菌に対しての体制があるため、その点で見分け方ができるようです。
カラムシの外敵と駆除
カラムシを主な食用としている生命体、それは昆虫です。昆虫類は苦手な方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかしカラムシは昆虫にとって、なくてはならない植物なのです。そこでここではカラムシにつく外敵やその駆除方法などについて解説していきます。
ふくらすずめ(福良雀)の幼虫
毛虫は、ふくらすずめだけではなく蝶やその他昆虫などでも黒い毛虫が存在するので、見分け方が難しいです。幼虫はカラムシの葉を食用とするため、カラムシが繁茂するのと時期を同じくし、年に二回夏と秋に発生しカラムシの群生も食い尽くされてしまう恐れがあります。発生する時期になったらこまめにカラムシを観察して、毛虫を駆除するようにしましょう。
ラミーカミキリ
白黒鮮やかな模様の昆虫は、ラミーカミキリムシというカミキリムシの一種です。明治時代以降に日本国内でも見られるようになり、その名の通りラミーに付着し日本に運ばれてきたと考えられています。主にラミーやカラムシを食用としており、幼虫の時期は茎の中で過ごし、成虫になるころには地上の葉や茎をはじめ地下茎までをも食用とします。こちらもカラムシが食べられないように、早めに駆除するようにしましょう。
アカタテハ
アカタテハはタテハチョウの一種
アカタテハは幼虫の時の姿は棘がある黒い毛虫で、幼虫の時期の過ごし方に特徴があります。カラムシの葉っぱの付け根を食用とし、その葉っぱの左右を自ら放出した糸で綴ってロール状にした巣を作りその中に隠れて過ごします。幼虫は棘のある毛虫であるため駆除してしまいたくなりますが、その羽を広げた蝶がカラムシの群生の上を飛んでいる光景も素敵ではないでしょうか。
タテハチョウの見分け方
似たようなタテハチョウの種類に、ヒメアカタテハという蝶が存在しています。そのヒメアカタテハとの見分け方は、羽の部分が黒褐色か橙色かという見分け方にあります。
カラムシの驚きの用途
カラムシを駆除する前に
日本ではカラムシの葉を食用としている地域があり、茹でることで独特の粘りが出るそうです。カラムシが繊維質であることからその栄養価も高く、食用としての用途もあるのです。ベータカロテンにいたってはほうれん草の約4倍の含有量を誇っており、さらにはミネラルも豊富なのだそうです。駆除してしまうのは本当にもったいないです。
駆除する時期の見分け方
カラムシは地下茎を持っている非常に丈夫な植物です。そのため、駆除しようと地表に出ている部分だけをいくら刈り取っても、地下茎までもを取り除かなければ永久的に自生するのです。しかし、カラムシも冬の寒さには弱く枯れやすくなっています。そこでカラムシを駆除するのには、秋の終わりごろから冬の間にかけて除草剤などを利用して駆除するのが効果的です。
まとめ
昔の人々は自然環境と上手に共存しながら、生活の中に自然を取り入れて利用してきたことがよく分かります。ラミーやちょまなど、カラムシという名称はまったく含まれていないにもかかわらず、人々のあいだではカラムシとして認識されてきました。繊維をとって麻にするという用途のほかに、こうして昆虫の生態系を保っていることや、茹でて食用とすることもできるのです。雑草だからと駆除してしまう前に今一度見直してみる価値がありそうです。
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出典:写真AC