彼岸花とは
彼岸花とは種を作らず、球根で増える植物です。毎年、同じような場所に葉もなく突然咲く、不思議な花です。実は、目立ちませんが花が咲いたあと同じ場所に、ロゼット状のニラやアサツキに似た葉が出て越冬し、次の年の夏に枯れ、花茎が伸びて花が咲くというライフサイクルをくりかえしています。諸説ありますが、江戸時代以前に中国から持ち込まれ、帰化しました。
ボタニ子
基本情報
学名 | lycoris radiata |
科属 | ヒガンバナ科ヒガンバナ属 |
形態 | 多年草 |
花茎丈 | 30cm~60cm |
原産国 | 中国 |
花色 | 赤、深紅、オレンジ、白、紫 |
和名 | 曼珠沙華(まんじゅしゃげ) |
英名 | red spiderlily |
別名 | 地獄花(じごくばな)、死人花(しびとばな)ほか多数 |
名前の由来
彼岸花の名前の由来は、秋のお彼岸のころに咲くためという説があります。「彼岸」という言葉は「向こう岸」という意味で、こちら側は「此岸(しがん)」です。対で「あの世」と「この世」を表す使い方ををすることもあります。彼岸花には毒があり、これを食べたら彼岸(あの世)行き、ということからこの名前になったという説もあります。
ボタニ子
彼岸花って、別名が1000種類以上あるのよ。全国各地に幅広く根づいた印ね。
ボタ爺
「ドクバナ」「シビレバナ」「カミソリバナ」などちょっと怖い別名が多いの。「キツネノタイマツ」なんてのもあるぞ。
彼岸花に毒があるか
彼岸花は全草に毒があり、鱗茎(りんけい)と呼ばれる球根の部分がとくに強く成分が含まれます。植物に含まれる毒はおもにアルカロイドで、種類がとても多くあります。彼岸花は約20種類のアルカロイドを含む毒草です。そのなかでも「リコリン」「ガランタミン」「セキサニン」「ホモリコリン」が主要成分です。
ボタニ子
口や目に入ると症状や影響が出るかもしれないけど、普通の体質の人は触るていどでは症状や影響はないわ。
ボタ爺
アフリカでは、エキスで毒矢を作って、狩りをするらしいぞ。致死量や用法など独特の文化があるんだろうから、絶対にまねしてはいかんぞ。
彼岸花の毒の成分①リコリン
リコリンは、彼岸花に含まれるアルカロイドの約50%を占める成分です。学名の「licoris(リコリス)」の語源になりました。彼岸花は、ほかの生物が成長するのを邪魔する、植物生育阻害活性が高いので、雑草対策として、田んぼのあぜ道に多く植えられました。
彼岸花の毒の成分②ガランタミン
ガランタミンは、アセチルコリンエステラーゼという、副交感神経を興奮させる酵素成分の働きを阻害します。本来毒であるガランタミンは、複数の記憶障害や軽度のアルツハイマーなどの症状を緩和する薬に、レミニールという名前で使われています。しかし、この成分は人工的に薬として開発されたもので、彼岸花が毒草であることに変わりありません。
ボタニ子
毒と薬は紙一重な部分があるってことね。専門家が薬として使えると十分に研究してから開発したのよ。
ボタ爺
素人が安易に触るとやけどするぞ。絶対に口にしてはいかんぞ。
彼岸花の毒の摂取症状
彼岸花には多くのアルカロイドが含まれ、リコリンやガランタミンのほかに、セキサニンやホモリコリンなどがあります。彼岸花は毒抜きをせずそのまま口にした場合、30分以内に中毒症状があらわれます。激しい腹痛や下痢、痙攣(けいれん)や中枢神経麻痺、嘔吐(おうと)や呼吸困難、深刻になると呼吸不全などです。毒性が強いので死亡例もあります。
ボタニ子
まちがってたくさん食べてしまうと、まさに彼岸(あの世)へ行ってしまうってことね。
ボタ爺
大量に食べなければ彼岸にはいかないが、中毒症状が出るぞ。間違って目や口に入ってしまったら、必ず、お医者さんにみてもらうんだ。
彼岸花の毒がある場所
彼岸花は花、葉、茎、球根など、どの場所にも毒があります。そのなかでも、とくに毒が多い場所は球根です。彼岸花の球根は、薄い茶色い皮に守られていますが、むくと白く、ノビルや小さなタマネギ(ペコロス)のような形をしています。葉は花が終わってから生えてきますが、細く、アサツキやニラに似ています。どちらも可食植物に似ているので、注意が必要です。
ボタニ子
お子さんがいる家の庭に生えてきたら、毒の影響があるかもしれないから、掘り起こしたほうがいいかもね。触るのはダメって教えてあげるのもいいわ。
ボタ爺
外飼いのペットのいる家も、庭に彼岸花が咲きはじめたら、注意が必要だな。致死量にいたらなくても、食べたら症状や影響がでるぞ。
彼岸花の毒の致死量
彼岸花に含まれる毒成分、アルカロイドは約20種類ですが、そのなかでも50%をしめるのがリコリンです。リコリンは彼岸花の球根1gにつき、約0.5mg、葉には約0.3mg含まれます。リコリンの致死量は、約10gです。成人か子供か、若者かお年寄りかによって致死量に多少のずれはあるでしょう。リコリン以外のアルカロイドも含まれているので、10g以下でも致死量になります。
彼岸花は、葉と花が一緒にあらわれないことから、「葉見ず花見ず(はみずはなみず)」っていう別名があるのよ。