はじめに
ドクニンジン(毒人参)はとても強い毒性をもった植物です。命さえ脅かす程の毒の成分を持っているため、山菜と間違えて食べてしまうと大変危険な植物です。今回はそんなドクニンジンについて、特徴や分布、見分け方、花言葉などをそれぞれご紹介します。
ドクニンジンとは
特徴
ドクニンジンとはその名から想像できる通り、有毒植物のひとつです。一年中枯れることはなく、見た目がパセリにも似ているので毒パセリと呼ばれることもあります。ものによっては草丈が2m以上になり、花は白色です。因みに英名ではドクニンジンをそのままポイズンキャロットと呼ぶのではなく、ヘムロックと呼ばれます。
分布
原産地はヨーロッパや北アフリカですが、現在は日本にも分布が確認できています。本州でも発見されていますが、特に北海道の札幌市で発見された報告が何件もあがっています。好む環境は、日当たりが良く水はけが悪い場所です。しかし乾燥した環境でも、湿潤した環境でも適応し成長します。
ドクニンジンの毒性
症状
ドクニンジンには、コニインというアルカロイドの一種である有毒成分が含まれています。ドクニンジンは植物全体に毒の成分があり、誤って食べてしまうと吐き気、嘔吐、昏睡、呼吸困難を起こします。最悪の場合には、死に至るほどの猛毒です。もし取り扱う場合には十分な注意が必要です。
致死量
ドクニンジンに含まれるコニインという有毒成分は60〜150mgで致死量とされています。ドクニンジンの葉であれば5枚程度、種であればごくわずかの量で致死量に達します。消化管からの吸収が早いという特徴があるため、症状が出るのがとても早いです。中毒が起こってから1時間程度で死に至ります。
死刑の執行
ドクニンジンはその有毒性から、昔ヨーロッパなどで毒杯にし、死刑の執行に使われていました。ドクニンジンは安楽死できるものと考えられていたからです。しかし、前述したようにドクニンジンを摂取すると呼吸苦、頭痛、内臓痛などの症状が出ます。そのため、決して苦痛を感じずに死ぬことができる訳ではないようです。
薬品
毒性のとても強いドクニンジンですが、その成分を生かして逆に薬として利用できます。ドクニンジンによる薬は、痙攣や関節炎に対して一定の効果を発揮します。しかし元々毒物であることに変わりはないため、少量の内服でなくてはなりません。大量に内服すると麻痺や呼吸不全に陥ってしまいます。
ドクニンジンの見分け方
ドクニンジンによく似たシャクという植物があります。上の写真はドクニンジンではなくシャクの花なのですが、確かによく似ているのではないでしょうか。シャクは食べられる山菜なのです。ドクニンジンをシャクと見間違って採取してしまうと大変なことになってしまいます。見分けるポイントは2つあるのでご紹介します。
①茎で見分ける
シャクとドクニンジンが群生した状態を上から見た場合、見分けることは困難です。そのため横から茎を見ます。シャクは葉の付け根が白くなっていますが、ドクニンジンは白くなっていません。さらにドクニンジンの茎の下の方には、赤や紫色の斑点があるのも特徴的です。
②においで見分ける
シャクはセリに似た、爽やかなでやや青臭いにおいがします。一方ドクニンジンは植物全体から悪臭を放っています。特に葉や根を潰した時には、腐敗したにおいやカビのようなにおいを放つのが特徴です。見た目はよく似たシャクとドクニンジンですが、においは対照的です。そのため匂いは見分けるための大切なポイントとなります。
ドクニンジンを見つけたら
ドクニンジンは生態系被害防止外来種としてあげられています。毒性が強いこともあり、駆除が推奨されている植物です。もしも見つけた場合には、市役所などに連絡をして指示を仰ぐとよいでしょう。もし誤ってドクニンジンを持ち帰ってきてしまった場合には、ドクニンジンが増えてしまうことがないように確実に処分します。
ドクニンジンの逸話や花言葉
ソクラテスの毒杯
前述したように、ドクニンジンは死刑の執行にも使われていました。哲学者ソクラテスもこのドクニンジンで処刑されています。ソクラテスの弟子たちは師の脱獄の手引きをしました。しかしソクラテスはそれを拒み、弟子たちの前でドクニンジンの毒杯を飲んで亡くなりました。この逸話から、ドクニンジンの茎にある赤紫色の斑点を「ソクラテスの血の跡」と呼びます。
ドクニンジンの花言葉
ドクニンジンの花言葉は「死も惜しまない」「あなたに死を届ける」「あなたはわたしを死なせる」などです。どれも「死」というワードが入っており、暗い印象を与える言葉です。これはドクニンジンが有毒成分を持っていることが由来しています。有毒ということもありますが、花言葉からしてもあまり人に贈るには適さない花と言えるでしょう。
まとめ
ドクニンジンは大変危険な有毒植物です。現在は北海道で特に発見されています。しかしドクニンジンは環境への順応能力も高いため、本州を含む日本のどこで発見されても不思議ではありません。もしドクニンジンか、そうではない山菜か判断に悩んだ場合には必ず専門家に確認をするか、食べないようにした方が良いでしょう。