くちなしとは
くちなしの花は5〜6月に常緑の木に咲く白い花です。香りがして花の存在に気づくこともあるような強く甘い香りが特徴です。どのような花なのでしょうか。ご紹介します。
くちなしの基本情報
名称 | くちなし(梔子) |
学名 | Gardenia jasminoides |
分類 | アカネ科クチナシ属 |
分布 | 東アジア、日本では静岡県以西の森林に自生 |
樹高 | 1〜3m |
開花時期 | 5〜6月 |
用途 | 庭木、盆栽、着色料・染料、香水 |
くちなしは5〜6月に白い花を咲かせる樹種です。開花の時期に近くを歩いているだけでも、その香りに気付けるほど強い香りがあります。日本でも自生している地域もあり、古くから庭木として親しまれてきました。果実は染料や食品の着色料として使われ、鑑賞するだけでない用途を持っています。
くちなしの花の特徴
くちなしは白い美しい花と芳香で知られていますが、花にはどんな特徴や種類があるのでしょうか。ご紹介します。
一重咲き
5〜6月の初夏の季節に真っ白い6枚の花弁の花を咲かせ、甘く強い香りを持っています。真ん中に黄色く大きなめしべ、その周りに6本のおしべがあります。花は黄色っぽくなり枯れていきます。花が終わると果実を付けます。
八重咲き
八重咲きのくちなしも一重と同じ季節に咲きます。香りも一重と同じ香りがありますが、果実が実ることはありません。庭植えにしていると花の中に小さい虫がたくさん発生することがあります。
コクチナシ
花が小さめで葉も細長く、樹高が30〜40cmくらいの小さく育つ品種です。鉢植えや盆栽に向いています。
くちなしの育て方
くちなしは地植えや鉢植えで育てることができて、花を楽しめます。育て方をご紹介します。
地植えの育て方
- 植え付けと置き場…反日陰でも育ちますが、できるだけ日当たりの良い場所を選んでください。
- 用土…乾燥に気を付け、腐葉土などを混ぜるとよいでしょう。
- 水やり…夏場は乾燥したらたっぷり水やりをします。
- 施肥…3月に固形肥料を与えます。
- 剪定…7月ごろには来年の花芽が作られるので、伸びすぎた枝は花後すぐに剪定しましょう。
鉢植え、盆栽の育て方
- 植え付けと置き場…日当たりと風通しの良い場所に置きます。寒さに弱いので冬は軒下などに置きます。
- 用土…鉢植えは赤玉土小粒3:腐葉土1の割合で、盆栽は赤玉土小粒のみで植え付けます。
- 水やり…夏場は乾燥したらたっぷり水やりをします。
- 施肥…3月に固形肥料を与えます。肥料が多いと花付きが悪くなるので注意します。
- 剪定…7月ごろには来年の花芽が作られるので、伸びすぎた枝は、花後すぐに剪定しましょう。実を鑑賞する場合は、鑑賞する実を残し、花芽を確認しながら剪定します。
注意する害虫
葉にオオスカシバの幼虫がつくことがありますが、見つけ次第、補殺します。鉢植え、盆栽では特に注意してください。花にスリップス(アザミウマ)の発生を予防するために、オルトラン粒剤をあらかじめ根元に散布しておくとよいでしょう。
くちなしの用途
くちなしは古くから花の鑑賞以外にも用途がありました。開花の季節以外の楽しみでもあります。どのように使われているのか、ご紹介します。
くちなしの花の香り
くちなしの花は甘く強い匂いがします。くちなしの花の香りの香水は「シャネルのガーデニア」「グッチのフローラガーデンコレクションのガーデニア」「サンタマリアノヴェッラのガーデニア」のオーデコロンが有名です。
くちなしの実
私たちは古くからくちなしの果実が橙色に熟す時期に収穫し、乾燥させて、いろいろな用途に使ってきました。代表的なものをご紹介します。
着色料・染料
秋に収穫できる一重のくちなしの果実は着色料として使われてきました。おせち料理の栗きんとんの色付けなどが有名です。安全で簡単な着色方法です。
【栗きんとんのサツマイモの着色方法】
- くちなしの実がオレンジに色づいた頃に収穫し、乾燥させます。
- 乾燥したくちなしの実を2つに切り、不織布でできたお茶パックなどに入れます。
- サツマイモと一緒に茹でます。
漢方薬
くちなしの果実は山梔子(さんしし)、梔子(しし)として、昔から消炎、止血などに生薬として使われていました。漢方薬にも用いられています。
くちなしの花言葉
くちなしの花言葉は「私は幸せ」「幸せを運ぶ」「清潔」「胸に秘めた愛」です。強い香りが広がるところが「幸せを運ぶ」こと、白い美しい花が「清潔」を表しています。
歌謡曲「くちなしの花」
「くちなしの花」という歌謡曲があります。1973年に発売された水木かおる作詞、遠藤実作曲の渡哲也さんの大ヒット曲です。くちなしの花の香りがする時期に別れた女性を思い出す、花言葉の「胸に秘めた愛」を歌ったような、とても悲しい歌です。
まとめ
くちなしの花は強い芳香を放つ、美しい白い花です。育て方は簡単で庭木や鉢植えで花を咲かせることができます。初夏に花を鑑賞し、秋に実を収穫して、年の瀬の栗きんとん作りに利用すれば、一年中楽しむことができる樹種です。庭の地植えや鉢植えで楽しんでみてはいかがでしょうか。