地域による精霊馬の飾り方の違い
人々の崇拝や感謝の気持ちが込められた精霊馬ですが、地域によってさまざまな習慣があります。まず精霊馬をお供え物として飾るのは関東以東であるということです。関西以西から九州などでは、精霊馬を飾る習慣がほとんど見られません。地域によって魂が帰ってくる方法の選び方が違うというのは面白いものです。
お盆のときのお供えの習慣を確かめよう
それでもお盆にご先祖をお迎えするためとして、提灯の灯りを普段より多くする、お菓子や花を飾るということはどの地域でも見られます。住んでいる地域が変わったときは、お供えの仕方、精霊馬の飾り方について近所の習慣を確かめておきましょう。また仏教の宗派によっても飾り方やお供え物の選び方が違ってきます。
なすときゅうりの精霊馬を飾る時期
ご先祖の魂が帰ってくるのは8月13日とされ、16日には帰って行きます。お供え物ですので、仏壇とは別の精霊棚を置いて精霊馬を飾りますが、棚の形の選び方はさまざまです。一般的には仏壇の前に精霊棚を置き、他のお供えのお菓子や花とは別の棚にして飾ります。にぎやかにして故人をしのび、魂をお迎えするのです。
なすときゅうりの精霊馬を飾る向き
精霊馬は先祖の魂が乗って移動しますから、乗りやすい方向に置いてあげましょう。地域によって牛で迎えるのか馬で迎えるのかが分かれるところですので、事前に確かめておきます。馬で急いで帰ってきてもらうのであれば、きゅうりで作った馬の頭を家の内側のほうに向けて置きます。16日に帰っていただくときは、ゆっくり帰ってもらうのなら、牛の頭を家の外に向けて置きます。このとき、お土産を持ってのんびり帰ってもらう、という考え方もあります。
なすときゅうりの精霊馬の作り方
簡単なので、精霊馬を作ってみましょう。ご先祖様が乗りやすそうな牛と馬ができるよう解説いたします。材料は、なすときゅうり、そして足にする爪楊枝または串、割りばしです。新鮮な野菜を使って生き生きとした牛や馬にしましょう。
足を付けて安定させる
きゅうりは馬に、なすは牛に見立てますので、まっすぐな野菜よりも、曲がったものやふくらみのあるもののほうが自然です。できあがりを想像して、なすやきゅうりを用意しましょう。足を割りばしで作る場合は、なすやきゅうりに刺さりやすいよう先をとがらせておきます。なす、きゅうりそれぞれに4本ずつ刺して足とし、安定して自立するようにしておきます。できあがったら精霊棚に飾ります。
なすときゅうりの精霊馬の処分の仕方
16日にお送りした後は、精霊馬のなすときゅうりは処分するのですが、以前は川や海に流しました。今では環境の問題から、条例で禁止されていることもあるので、土に埋める、燃やしてしまうなどして処分します。塩で清めて和紙に包み、捨てる方法もあります。お供え物なので、決して食べません。この方法や、処分する時期も地域や仏教の宗派によって違いがあります。
近年見られる愉快な精霊馬
物があまり豊かでなかった頃は、お供えにするなすやきゅうりも貴重な食物でした。近年は型にとらわれず自由な発想で精霊馬が作られることがあります。なすで新幹線の形にしたり、馬も彫刻のようにハイクオリティなものが作られたりするようです。
故人をしのぶ人々の気持ち
ちょっと見たところでは、ふざけているように感じられるかもしれませんが、作った人は亡くなったおばあちゃんに早く帰ってきてほしいから新幹線を作った、と言いますし、ご先祖様が帰ってきたときにびっくりさせたくて立派な精霊馬を準備することもあるのです。意味のない行為ではありません。
面白い形の精霊馬も、もともとはご先祖様に早く帰ってきてほしいとか、この世で楽しい時間を過ごしてほしいと念じて作るのですから、ご先祖様を待ちわびている気持ちに違いはありません。精霊馬を作るのは、今は亡き人をしのぶ、優しい気持ちを皆が持ち合わせていることを確認できるよい機会といえるでしょう。精霊馬を作りながら故人をしのび、会話が弾んでいれば、ご先祖の霊も安心してあの世へ帰っていくことができるでしょう。
まとめ
お盆だから飾る、と思っていた精霊馬には、人々のさまざまな思いが込められていることがわかりました。亡くなったご先祖様に乗っていただくためのなすの牛ときゅうりの馬は、生きている人の優しい心の表れです。また、自然の恵みに対する人々の謙虚な気持ちや感謝が表れているともいえるでしょう。何気ない季節の決まりごとの中にもいろいろな意味があることがわかります。小さな「なぜ」の中に面白い意味があるものです。それぞれ大事に守り伝えたいものですね。
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出典:写真AC