イスノキとは
イスノキとは、マンサク科の常緑高木です。日本では伊豆以西の暖地に自生しています。関西以西では、生垣や庭木に用いられることも多い樹木です。非常に頑丈な木質から、材木としてもよく利用されています。葉や枝の部分にこぶができることが多く、このこぶを見てイスノキを見分けられるほどです。そんなイスノキの特徴について見てみましょう。
基本情報
分類 | ユキノシタ目マンサク科イスノキ属 |
学名 | Distylium racemosum |
別名 | ユスノキ・ユシノキ・ヒョンノキ |
分布 | 関東以西の本州、四国、九州、琉球列島 済州島、台湾、中国 |
樹高 | 約20m |
葉 | 楕円形で厚みがありツヤのある深緑 |
花色 | 花弁はないが雄蕊の葯は赤 |
開花期 | 4月頃 |
園芸種として
大きく成長するイスノキですが、生垣や街路樹として2m程度に整えたり、野趣あふれる立ち姿で雑木林風の庭に取り入れられます。花や実は目立たず、観賞価値は低いとされていますが、変種としてシダレイスノキや、深緑の葉に黄色い斑が入るフイリイスノキという種類があり園芸種として育てられています。
特徴
イスノキにできるこぶの正体
イスノキの一番の特徴ともいうべき「こぶ」は、虫こぶといって虫が寄生することでできるこぶです。イスノキに寄生して虫こぶを作る虫は、アブラムシの仲間です。葉に虫こぶを作る「イスノキコムネアブラムシ」や、果実のようなまゆ型の虫こぶを作る「モンゼンイスアブラムシ」「イスノフシアブラムシ」などが確認されています。この虫こぶは、中が空洞で穴が開いているので、笛にして遊ぶことができます。
赤い花は季語になっている
イスノキは、4月頃に雄花と両性花を咲かせます。花弁はなく、雄蕊の葯の部分が赤い小さな花です。小さく目立ちませんが、深い緑の葉の脇に咲く小さな赤い花が美しいことはよく知られています。その姿は「蚊母樹の花・むしくさの花・まさかきの花・瓢木の花・ゆすのきの花」として開花の時期でもある晩春の季語にもなっています。
丈夫なので杖や木刀の素材になる
木質がとても頑丈なため、材木として頻繁に利用されます。高級な黒檀や紫檀の代用として床柱などの建材や、家具、杖などによく加工されています。古流剣術の示現流などでは、硬質なイスノキの木刀だけを使うことが有名です。また、その頑丈さから、歯が欠けると縁起が悪いとされる櫛の中でも、イスノキの櫛は、皇室に収められたり、位の高い女性に愛用されてきました。
染めの材料や釉薬として使われる
虫こぶにはタンニンという成分が含まれ、古くから染色につかわれてきました。イスノキの虫こぶを使った染料は、媒染剤の成分で変化しますが、黒みがかった薄茶色や亜麻色に染まります。また、イスノキを燃やした灰は「柞灰(いすばい)」といわれ、有田焼の釉薬として用いられた歴史もあります。
ボタニ子
次ページからはイスノキの名前の由来について紹介します。
出典:写真AC