名前の由来
「イスノキ」というと家具の「椅子」を思い浮かべませんか?固く頑丈で家具に使われることも多いイスノキですが、その名前の由来は諸説あり、どれも「椅子」とは関係のない言葉なのです。なぜ「イスノキ」という名前が付いたのか、名前の由来について見てみましょう。
神話に出てくる「湯津間櫛」が語源説
日本神話に登場する「湯津間櫛(ユツマグシ)」という、髪に挿して使う櫛が語源という説があります。「ゆつ(斎つ)」は「神聖な・清浄な」という意味があります。ユツマグシの木という意味の「ユツノキ」が時代を経て、「由之ノ木/由志ノ木(ユシノキ)」になり、その後「ユスノキ」「イスノキ」に変化したという説です。
九州独自の漢字の読みが由来説
イスノキは漢字で「柞」と表記します。この漢字は「ははそ/ほうそ」と読み、コナラなどブナ科コナラ属の植物を表す漢字でした。ですが、自生したイスノキが多い九州でのみ「柞」の字を、イスノキを表す「ゆす」と読む習慣があり、それが全国に伝播するうちに「ゆす」から「いす」に変化したという説があります。
沖縄の方言が由来説
沖縄では、古くからイスノキのことを「ユシギ」と呼びます。沖縄では家具や三線の棹にイスノキを使うことが多く、生垣としてもポピュラーです。家具などの素材に「良い」という意味で、「ゆし(よし)のき」と呼ばれるようになったとも考えられています。
結寿の木
ユスノキを「結寿の木」と書き、縁起のいい木や縁結びの木、病魔退散、長寿の木とされています。静岡県の小國神社では、樹齢700年~800年のイスノキの古木がご神木としてお祀りされていて、落ちたひょんの実(虫こぶ)縁結びのお守りにする人もいるそうです。
イスノキの別名
ヒョンノキ
一風変わった「ヒョンノキ」という別名は、虫こぶで作る笛がひょうひょうとなることが由来です。虫こぶの部分を「ひょんの実」ということもあります。江戸時代の俳人・安原貞室は、この風変わりな名前が、意外なことを表す「ひょんなこと」という言葉のもととなったと記しています。
蚊母樹(ぶんぼじゅ)
蚊母樹(ブンボジュ)はイスノキの中国名です。この言葉もイスノキの虫こぶに着目した言葉で、虫こぶから羽のついた小さな虫が出てくる様子が表現されています。やはり、虫こぶがイスノキの大きな外見的特徴であると言える名前ですね。
イスノキの育て方
育て方①栽培環境
イスノキの耐寒性・耐暑性は普通程度です。耐陰性に優れているので日陰になる場所でも育てられます。ただし、日陰では成長が遅くなるので、大きく育てたい場合は日当たりのよい場所をおすすめします。植えつけ後、根が張るまでは乾燥に気を付けますが、雨水だけでほとんど水遣りもいりません。肥料もほとんど不要で、庭木や生垣向きの樹木です。
育て方②植えつけ
植えつけは3月~10月頃が適しますが、暑さで弱りやすい時期である7月~8月頃は避けましょう。土壌を選ばず、アルカリ性土壌でも成長します。活発に発根するため、植えつけ、植え替えに特別な注意は必要ありません。ただ、イスノキは比較的成長が遅く、植え替えをすると更に成長に時間がかかるので、生垣などは最初から決めた場所に植える方がいいでしょう。
育て方③剪定
放置していると、樹高が高くなりやすく、樹形が乱れやすい性質なので、定期的な剪定をおすすめします。剪定は開花の時期が終わった後、夏から秋が適期です。強健な木なので、思い切った剪定をしても弱りません。枝が込んでくると、害虫被害が出やすいので、不要な枝は間引きして剪定し、風通しを良くします。生垣などでは、適切な高さで樹形を揃えて剪定しましょう。
育て方④増やし方
イスノキは発根性が良いため、挿し木で容易に増やすことができます。ある程度成熟した枝が適しているので、前年に出た枝が適当です。15cmほど切って、土に埋まる部分の葉をはさみで落として、挿し木用の用土に植えつけます。発根するまでは、直射日光を避け、水切れを起こさないように管理しましょう。発根剤がなくてもよく根を張ります。
育て方⑤害虫対策
虫こぶのないイスノキは珍しいというほど、アブラムシが付きやすい木です。薬剤等で対策することはできますが、大きくなると完全に防虫することは不可能と言えます。虫こぶができても、成長に影響はないので気にならなければ対処不要です。他にはイスノキシロカイガラムシが付くことがあります。防除剤を月2回程度まくと抑制することができます。
まとめ
木自体はあまり目立たないイスノキですが、家具や杖、櫛などに加工され、意外と身近な存在でした。ヒョンノキや蚊母樹と言われるほど、虫こぶも大きな特徴でしたね。花に注目されない木ですが、開花の時期には赤い小さな花を探してみるのも一興です。公園や街路樹など、虫こぶを目印に探してみてはいかがでしょうか。
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