ヤマナラシ(山鳴らし)とは?
ヤマナラシの基本情報
ヤマナラシとは、ヤナギ科ヤマナラシ属、雌雄異株の落葉高木です。別名はハコヤナギ、属名はPopulus、英語ではアスペンといいます。ヤナギの仲間ですが、葉の性質は街路樹として多く植えられていることで有名なポプラに近く、本州中北部から北海道の山地に分布しています。若い幹のときは、集団で生息していると山肌に白い樹皮が映えて、遠目からだととても美しく見えます。
名前の由来
ヤマナラシという名前の由来についてご紹介いたします。ヤマナラシの葉は、先端が尖っていて葉と葉の生えている感覚がとても狭いのです。そのため、山に吹くわずかな風でも葉と葉が擦れ合って音を鳴らします。少しの風なら「サラサラ」、強風なら「ザワザワ」と風の強度によって聞こえ方が違いますが、音が大きいのが特徴です。その音が雨や嵐を想像させるため、山を鳴らすヤマナラシ(山鳴らし)という名前の由来となっています。
ヤマナラシの花言葉
ヤマナラシの花言葉は、「勇気と自信」です。フラワーエッセンスとして多く使用されていて、人が恐れを抱く未知へのネガティブな考えに対して効果があるといわれています。誕生花は3月18日です。ちなみに、同じヤマナラシ属であるポプラも同じ花言葉がつけられています。
ヤマナラシは不吉?神聖?
古代ケルトの人達は、樹々信仰があり、ヤマナラシの出す木々の音は神様や妖精からのメッセージであると信じられていたそうです。しかし、ヤマナラシが生息しているのは川岸など湿気の多い土地であったため、水辺によく生息する植物は地下にある死の世界と繋がっている、ともいわれてきました。そのため、ヤマナラシは「死など不吉な予言を運ぶ恐ろしい植物」ともみられてきたそうです。
ボタ爺
ボタニ子
今でこそ有名なハロウィンだけど、発祥は古代ケルトで、日本でいうお盆のように亡くなった人を忍ぶお祭りだったんですね。
ボタ爺
うむ。そこにヤマナラシの仲間であるポプラが使われていたということは、やはり昔は不思議な力が木に宿っていたと考えられていたんじゃな。
ヤマナラシの特徴
葉の特徴
葉の長さは5cm~10cmほどで、先端が尖ったハートのような形をしています。押し潰されたように平べったくなっているので、少しの弱い風でもサワサワと鳴りやすい作りになっています。若葉の頃は、葉の裏面は白く輝いていて絹のような美しさがありますが、時間が経つにつれて黄色に変色し、翌年の春まで枝に残ります。
幹と枝の特徴
成長途中のまだ若い幹は白色っぽい灰色のような色をしていて、そろばんの玉のような菱形の模様が浮かび上がります。時間が経つに連れ段々と黒っぽい色に変化し、樹肌は徐々に小さく縦に割れていきます。幹の根元部分と上の部分とで樹皮が異なったようになるのが特徴となります。材質は柔らかく、建築や彫刻などに加工しやすいです。新枝は緑がかった灰褐色で、生えたばかりの頃は白い毛が生えています。
花と種子の特徴
花は、葉よりも早く3月~4月頃に咲きます。雌花は穂状で長さが10cmほどの黄緑色の花を咲かせます。雄花は5cmほどで色は薄茶色です。雌花が咲いた後には穂状の実がたくさんなり、さらにそのあと白くてふわふわとした綿毛を持った種子へと変化し、初夏に拡散されます。ヤマナラシに限らず、ヤナギ科の種子は白いふわふわの綿毛になるのが特徴です。
ヤマナラシの見分け方
ヤマナラシに似た植物
ポプラ
ポプラは、キントラノオ目ヤナギ科ヤマナラシ属で、明治時代に日本にやってきた外来種です。そのため「セイヨウハコヤナギ」とも呼ばれています。今では街路樹として日本でもたくさんのポプラが植えられています。同じヤマナラシ属というだけあって幹や葉の特徴、育て方などもヤマナラシと似ており、見分け方も難しそうですね。
ドロノキ
ドロノキ(泥の木)も同じポプラの仲間で、本州中部の山奥などで見られ、旧満州国では風を凌ぐ目的のために街路樹として栽培されていましたが、現代では庭木として栽培されることはほとんどありません。樹の皮の色が泥に似ているため、ドロノキ(泥の木)という名前の由来となっているそうです。葉の形や裏面が白い部分などもヤマナラシによく似ています。
見分け方のポイント
ヤマナラシとよく似た植物が多数あるのは分かりましたが、一体どのような見分け方があるのでしょうか?見分け方のポイントは「葉」と「幹」です。ヤマナラシの葉柄は長く、左右から押し潰されたかのような扁平で卵のような形をしていて、さらに表面の基部付近に蜜線があります。そして幹も、ヤマナラシ独特の菱形の模様があるため、見慣れるとすぐに分かるそうです。見分けるときは葉と幹、この2つを確認するとよいですね。
ヤマナラシの育て方
ヤマナラシを育てる目的
北海道大学にあることで有名なポプラ並木と呼ばれる道があるように、ヤマナラシは庭木として植えるよりも公園の中や街路樹として通る人達の目を楽しませてくれるために栽培されているケースが多いようです。また、ヤマナラシの木質は木材の加工品に適しているため、加工目的としても栽培されています。
ヤマナラシが好む場所は?
ヤマナラシはヤナギの仲間で、湿地には強いほうですがヤナギほど湿気を好むわけではなく、自然に生息しているものは日当たりが良くて開けた山地に多く見られます。しかし、自分で育てる場合、暖かい平地に植えると害虫の被害にあってしまうことが多く、健康なままの葉を保つのは難しいので育て方に注意が必要です。
育て方のポイント
成長は早い
ヤマナラシの成長スピードはかなり速く、基本的な育て方としてはあまり難しくありません。成長すると樹高は10m~25mもの巨木になります。成長が早い反面、虫などの被害を受けやすく寿命は短いです。
根は浅い
ヤマナラシの根は浅いので、風が強く吹く場所で栽培していると木が斜めに傾いてしまうことがあります。倒れるのを防ぐためにも不要な枝を取り除く剪定を行いたいところですが、ヤマナラシは剪定には弱く移植も難しいようです。
価格は?
苗の価格は一般的に3,000円~5,000円程で販売されていて、ネットショッピングやホームセンターなどで気軽に購入することができます。植木鉢と一緒に購入して、鉢植えとして観賞用に育てるのも楽しそうですね。
ヤマナラシの活用法
様々な木の加工品に
ヤマナラシの木は柔らかくて軽い材質をしているのでマッチの軸や割りばし、まな板、製紙用のパルプ原料など様々なものに加工されています。加工されることには適しているヤマナラシですが、耐朽性は弱いため薪として利用するには不向きです。ヤマナラシが多く生息している北海道には、昔はマッチの軸を作る工場があったそうです。
木箱を作るハコヤナギ
ヤマナラシの別名になっている「ハコヤナギ」は漢字で書くと「箱柳」になります。これは、ハコヤナギの材質が柔らかくて加工しやすく、主に木の箱がたくさん作られていたことから「箱柳」という名前が付けられたそうです。
ボタニ子
名前に付けられるくらいだから、よっぽど木箱を作るのに適していたんだね。
まとめ
今回はヤマナラシの特徴や育て方、見分け方などをご紹介させていただきました。ヤマナラシは風が吹くことでハート型の葉っぱを大きく鳴らします。古代ケルトでは不思議な力を持つ木として伝えられてきたり、現代では様々な木の加工品として活躍していたり、ヤマナラシは昔から私たちの身近な存在の植物だったようです。初夏にはふわふわ綿毛の種子が飛んでいくので見に行くのも楽しそうですね。
古代ケルトでは、ハロウィンのときにポプラで作ったお香を焚いて故人を忍んでいたそうなのじゃ。