ヤツデとは?
ヤツデは、ウコギ科ヤツデ属に属する常緑の低木です。日向ではなく、日陰で育てることのできる樹木として知られています。また、葉っぱの形が特徴的であり、大きいものでは20cmを超える葉っぱもあります。
基本情報
学名 | Fatsia japonica |
分類 | ウコギ科ヤツデ属の常緑低木 |
名前 | 八つ手、八手、天狗のうちわ |
花期 | 11月~12月 |
分布 | 関東以西の海岸付近の森林、公園など |
ヤツデは日本固有種
ヤツデは日本原産であり、固有種として知られていました。江戸時代にヨーロッパに渡り、フランスで作られた種類のヤツデもあります。ヨーロッパでも、現在は公園の樹木として植えられていることがあります。日本では、公園や庭木の陰樹として植えられていますが、海外では観葉植物として扱われることも多いそうです。
奄美大島と小笠原諸島のヤツデ
奄美大島と小笠原諸島には、ヤツデの仲間が自生しています。特に小笠原諸島に自生しているヤツデの種類は、小笠原諸島の固有種で、このヤツデの仲間は絶滅危惧種に指定されている種類です。
花の特徴
花期は11月~12月で白い小さな花が球体のような花序を作ります。さらにその球体の花序が集まって、円錐花序を作るのが特徴です。咲き始めたばかりは白い花ですが、満開時には真ん中の部分が黄色に染まっていきます。花は小さく花びらも小さいですが、花茎が花と同じ色をしているため、よく目立ちます。すぐに見つけることができるので、探してみてください。花が終わったあとは果実になります。
白い花が球体状につき、さらに球体が集まって円錐花序をつくりだしています。
雄花から雌花へと変わる花
ヤツデは雌雄同株ですが、花は初めは雄花でのちに雌花へと変わっていくのが特徴です。開花したばかりのころは、雄しべと花びらがありますが、それが落ちてしまうと柱頭が伸びてきて雌花へと変わります。これは、同株での受粉を避けるためだといわれています。
ボタニ子
花びらがついているのが雄花、ついていないのが雌花に変わった花です。花びらがまだ開いていないのがつぼみですね。
開花しない花がある
花は、円錐花序の上から徐々に開花していきますが、中には開花しないものもあります。特に基部の花は開花しません。この花は、突然の環境変化に耐えられるための予備のものだといわれています。
独特な匂い
花には独特な匂いがあるのが特徴です。これは、ヤツデが昆虫が少なくなった冬に花を開花させるからだといわれており、この独特な匂いを発することで少なくなった昆虫を呼び寄せているといわれています。このことから、ヤツデは虫媒花であることがわかります。
果実の特徴
果実は、翌年に黒く熟します。熟すまで果実は緑色をしていて、花と一緒に見ることができます。その後、果実は茶色になり、徐々に黒色に熟していくのです。果実の中には、種子が1つ入っています。その果実を鳥が食べることにより、ヤツデは生息地を広げています。果実が熟したあとも先端に花柱が残るのが特徴です。
熟すと黒色になります。
葉っぱの特徴
葉っぱは枝先にあつまり、螺旋状に互い違いにつく互生です。掌のような形をしていて、7~9の奇数で裂けています。また、葉っぱが大きいのも特徴で、大きくなるものでは20cmを超えるものもあります。厚みがあり、ツヤがあるため、少しの傷では傷が目立ちません。切り込みが入っている部分には、鋸歯(きょし)があるのも特徴です。
新葉・若葉
新葉は黄褐色で、毛が生えていますが成長するにつれて無毛になります。若葉は明るい黄緑色になり、成長すると、葉っぱは濃い緑色になっていきます。
切れ込みの部分のみ、キザキザした鋸歯があります。
8つに裂けているのはまれ
葉っぱは、基本的には奇数で裂けています。八つ手と、名前には「8」の数字が入りますが、名前の通り8つに裂けているのはまれで、ほとんどが7か、9に裂けています。
斑入り葉っぱや切れ込みが深い種類ものある
一般的には濃い緑色をしている葉っぱですが、中には斑入りの種類もあります。斑入りは、黄色や白色の斑紋が入るものや葉の縁が白くなるものなど、さまざまな種類が生み出されているのです。斑入りだけではなく、葉の切れ込みが深くなっている種類もあります。海外で植えられているヤツデは、斑入りの種類が人気が高いそうです。
葉柄は長い
葉柄(ようへい)は20cm〜40cmと長いです。また、大きな葉っぱを支えるためか、それなりの太さもあるのが特徴です。
幹の特徴
日陰を好む傾向にあり、高さも2~4mくらいまでしか大きくなりません。枝分かれも少ないですが、まれに2~3本に枝分かれすることがあります。葉っぱが落ちると半月形をした葉柄のあとがのこります。若い枝は初めは緑色をしていて、毛が生えているのが特徴です。
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出典:高倉