カノコソウの種類
カノコソウには、同じスイカズラ科の種類の植物があります。これらの植物はカノコソウとよく似ていて、ときには間違えられることもあるのです。ここでは、カノコソウによく似た植物の基本情報や見分け方について紹介します。
ツルカノコソウ
学名 | Valeriana flaccidssima |
和名 | ツルカノコソウ(別名ヤマカノコソウ) |
属名 | スイカズラ科カノコソウ属 |
分布 | 本州・四国・九州 |
生息地 | 山地の日の差し込む湿った場所 |
草丈 | 20~40cm |
花の特徴 | 白または薄いピンク色の筒状花 花径約2mm |
見分け方
花が咲き終わるころになると、根元からツルを出すのがカノコソウとの大きな違いです。ツルカノコソウの茎はやわらかく、花の咲き初めの頃は直立していますが徐々に倒れ気味になっていきます。花期は4~6月とカノコソウより早く、草丈や花や葉がカノコソウより小さいのが見分けるポイントです。ツルカノコソウには薬効成分がなく生薬として使われることはありません。
ベニカノコソウ
学名 | Centranthus ruber |
和名 | ベニカノコソウ(別名レッドバレリアン) |
属名 | オミナエシ科セントランサス属(ベニカノコソウ属) |
原産地 | ヨーロッパ南部~地中海沿岸 |
草丈 | 50~80cm |
花期 | 5~7月 |
花の特徴 | ピンク・赤・白の筒状花 花径5~6mm |
見分け方
ベニカノコソウはヨーロッパ原産の植物で、日本には明治時代中期ごろに園芸用として伝わりました。カノコソウとの大きな違いは花の色が濃いピンクや赤いものが多いところです。また、おしべとめしべがそれぞれ1本ずつ花から伸び出ているのも見分けるポイントです。ベニカノコソウの新芽や根は食べられますが、薬効はありません。
セイヨウカノコソウ
学名 | Valeriana officinalis |
和名 | セイヨウカノコソウ(別名バレリアン) |
属名 | オミナエシ科カノコソウ属 |
原産地 | ヨーロッパ・北アジア |
草丈 | 20~150cm |
花期 | 6~9月 |
花の特徴 | 白・薄ピンク色の筒状花 花径5~6mm |
見分け方
セイヨウカノコソウは、江戸時代後期ごろにポルトガル医師が使う薬として日本に渡りました。花や葉の形やにおいはよく似ていますが、カノコソウよりも草丈が大きいのが見分ける最大のポイントです。また、セイヨウカノコソウは日本には自生していないため、山地などでは見かけることはありません。
用途
セイヨウカノコソウは、不眠症や不安の薬として古代ギリシャの時代から使われてきたといわれています。ヨーロッパでは不眠症以外にもてんかん発作・消化管の痙攣や不快感・頭痛・動悸などにも使用されていました。現代でも「バレリアン」という名前で睡眠導入剤や安眠、ストレス緩和などのサプリメントとして使用されています。
カノコソウの用途
カノコソウは、花を楽しむものとしてよりは根の部分をお香や薬として昔から日本で用いられてきました。ここでは、カノコソウの用途や生薬としての効能などについて詳しく紹介します。
生薬
カノコソウは、江戸時代後期ごろにポルトガル人から薬として使えることを教えてもらい使用されるようになりました。現在は、「吉根草(きっこんそう)」という生薬名で根や地下茎の部分を乾燥させ漢方薬の配合の1つとして使用します。鎮静効果があり、ヒステリーや神経過敏症、心臓神経症などに用いられます。
香料
カノコソウの独特のにおいはインドの「甘松香」に似ているとされ、日本では平安時代から香合わせの材料として使われていました。ドイツでは精油を気付け薬やお菓子の香料の原料として使われていて、戦前は日本で作られたカノコソウの精油を輸出していました。そのほかにも、まれにたばこの香料として利用されます。
まとめ
カノコソウは、夏に鹿の子絞りのような小さな花を咲かせます。独特のにおいがあり、精油が香料として使われたり鎮静剤として根が漢方薬として使われたりするなどと、昔からいろいろな用途のある植物です。しかしカノコソウにはよく似た植物があるため、見分けるときは今回の記事を参考にしてみてください。
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