タマムシとは
タマムシは見た目の美しさが特徴の昆虫です。全体的に緑色の光沢があり、見る角度によって色が変わります。日本にも数多くの種類が生息しており、その中でも代表的なのが「ヤマトタマムシ」です。宝石のような緑色の光沢をもち、その美しさから文化的な価値をもちます。しかし、タマムシはすべての種類に緑色の光沢があるわけではなく、黒色の光沢だったり、光沢がなかったりと、多種多様なタマムシが存在します。
基本情報
ここではタマムシの中でも代表的な、ヤマトタマムシの情報を紹介します。
学名 | Chrysochroa fulgidissima |
目名 | コウチュウ目 |
科名 | タマムシ科 |
亜科名 | ルリタマムシ亜科 |
和名 | ヤマトタマムシ |
体長 | 25~40mm |
生息地 | 本州・四国・九州・沖縄 |
活動時期 | 6~9月 |
特徴
タマムシの最大の特徴は、宝石のように輝く光沢です。光沢は全体的に緑色で、縦に2本赤色のラインがあります。日が当たると目立つため、天敵である鳥に狙われそうですが、鳥は色が変わるものを怖がる習性があるため、見る角度によって色が変わるタマムシの光沢は身を守る手段です。また、警戒心が非常に強く、人が近づくと機敏な動きで逃げます。鳥や爬虫類に狙われると動きを止め、死んだふりをすることもあります。
タマムシの生態
見た目が美しいタマムシは、どのような生態をもつのでしょうか。ここからはタマムシの生息地や生活史、そして捕獲・飼育の方法を解説します。人に対して害のない虫なので、観賞用に飼育してみるのもおすすめです。
生息地
ヤマトタマムシの生息地は、北海道を除く日本全国で、エサとなるケヤキやエノキが生えている平地や低山地で活動しています。日中の日差しが強く暑い時間帯に活動し、夜は幹の陰に隠れています。また、種類によっては北海道に生息している種も存在するため、タマムシ科で見ると生息地は日本全国です。
生活史
タマムシの活動時期は6~9月で、最も活動が盛んなのは7月後半です。9月になると交尾が行なわれ、メスはエノキ、ケヤキ、サクラの枯れ木などに産卵します。卵からかえった幼虫は木の幹をエサとしながら成長し、サナギを経て2、3年で成虫になります。成虫の寿命は2か月程度で、長い年月をかけて育ち、儚い命を全うします。
捕獲と飼育方法
タマムシは警戒心が非常に強く、日中は動きが機敏なため人が近づくとすぐに逃げてしまいます。そのため、捕獲する場合はタマムシの動きが鈍る夕方にしましょう。飼育する際は、昆虫用の虫かごに入れて飼育します。エサはエノキやサクラの葉っぱなので、枝ごと入れてあげましょう。ストレスに非常に弱い虫なので、むやみに触ることは厳禁です。
タマムシの文化的価値
タマムシはその美しさから、古くから文化的な価値をもつ珍しい昆虫です。タマムシの羽は縁起がいいとされ、その美しさは死んでも保たれます。縁起のいい虫とされ、タマムシをタンスに入れておくと虫よけになる、着物が増えるといった言い伝えがあります。他にも、玉虫色という色があったり、玉虫厨子といった工芸品があります。
玉虫色とは
玉虫色とは、実際の色を意味するのではなく、見る角度によって色合いが変わることです。また、見方によってどのようにも解釈できるあいまいな表現として、「玉虫色の~」という表現方法もあります。
玉虫厨子
奈良の法隆寺に、「玉虫厨子(たまむしのずし)」という仏教工芸品があります。これは、装飾にタマムシの羽を使用している飛鳥時代に作られた国宝です。残念ながら今ではほとんどの羽が失われ、その美しさは色あせてしまいました。しかし、生きているうちだけでなく、絶命してもなお美しさを保つタマムシに、昔の人々も特別な思いを抱いていたのです。
出典:写真AC