つる性雑草は厄介な存在
ヤブカラシやヘクソカズラといったつる性の雑草は、庭などに生えると景観が悪くなるだけでなく、周囲の植物も枯らしかねません。しかし、生命力が高く繁殖力も強いため、駆除するには非常に厄介な存在です。地上の茎を刈っただけでは簡単に再生してしまいます。闇雲に除去するのではなく、駆除のやり方やコツを知ることが、つる性の雑草を駆除する第一歩になるでしょう。
つる性植物の特徴
つる性雑草の多くは、つるがほかの植樹やフェンスに絡みつき、上へと成長します。地下では、地下で生きる茎である地下茎を張り巡らして生育します。地下茎の役目は根のように植物を固定させたり、養分を蓄えたりすることです。地下茎からは根が伸び、周りの植物に絡みつくこともあります。地上や地中でつる性雑草に巻き付かれた植物は栄養が行き渡らず、また光合成が妨げられるため枯死してしまう場合もあります。
ボタ爺
地下茎は養分を蓄えており、節から次々と発芽するため、寸断したり切り刻んだりしてもすぐ再生するんじゃ。
ボタニ子
庭につる性雑草が現れたら大変ね。代表的なつる性雑草を紹介するわ。
つる性雑草の主な種類
ヤブガラシ
科 | ブドウ科 |
別名 | ヤブガラシ・ビンボウカズラ |
繁殖 | 種子、地下茎 |
種類 | つる性の夏生多年草 |
分布 | 北海道西南部より南 |
ヤブガラシの地下茎はほかの植物の根に、つるは幹や枝に絡ませながら、どんどん上へ伸びていきます。つるは2〜3mにもなります。ヤブガラシは、樹木が多く地面の上まで草が覆っている場所では繁殖しにくく、森の中ではあまり見られません。地面の草がきれいに刈り取られた公園、手入れされた民家の庭などで、さらに絡みつく低木やフェンスなどがあると、ヤブガラシは繁殖しやすくなります。
ヤブガラシの開花は6〜8月です。西日本を中心に、種子を作るタイプのヤブガラシも生息していますが、日本各地のヤブガラシは結実しないタイプが多いようです。そのため駆除は地下茎による繁殖をおさえるのがカギです。地下茎は10cmほどに切っても、そこから個体が再生します。地下茎や根を全て取り除くのは難しく、除草剤で枯らすのが確実です。
ボタ爺
ヤブガラシの花にはチョウやスズメバチなどの昆虫が寄って来るんじゃ。
ボタニ子
雑草そのものも困るけど、庭にハチが多くなるのも厄介ね。
ヘクソカズラ
科 | アカネ科 |
別名 | ヘクソカズラ・ヤイトバナ |
繁殖 | 種子 |
種類 | つる性の夏生多年草 |
分布 | 日本全土 |
ヘクソカズラはつるをほかの樹木に巻きつけ、旺盛に成長します。草の汁には特有のにおいがあります。ヘクソカズラは大きく成長すると、茎が硬くなり、ハサミ程度では駆除できません。見つけた場合は迅速に駆除しましょう。
ヘクソカズラの開花期は6〜9月で、その後丸く乾燥した実をつけます。種子で繁殖する植物ですが、残っている根から新しい芽が生えてくることもあります。駆除は種子ができる前の時期に、根もあわせて除去する必要があります。
クズ
科 | マメ科 |
別名 | クズ ウラミグサ |
繁殖 | 種子、地下茎 |
種類 | つる性の夏生多年草 |
分布 | 日本全土 |
マメ科のクズの特徴は、地下茎と根塊(こんかい)に養分を溜め込み、やせた土でも繁殖できることです。つるは成長が非常に早く、真夏には1日に1mも伸びることもあります。生命力が強く、庭を覆いつくす勢いです。地上部を刈り取ることで光合成を阻害し枯らす方法もありますが、繁殖してしまい、しっかりと根付いた後は、除草剤で根から枯らす駆除が最適です。
ボタニ子
「根塊」とは、さつまいものような、地下茎から出る大きく太った根のことよ。
特に秋は、クズの根がしっかりと根づく時期で、茎の付け根は木のように硬くなるため、草刈りしても枯らすのは難しくなります。また草刈りにより茎の分岐点が増え、冬を越した翌年はもっと生育が盛んになることもあります。
ガガイモ
科 | キョウチクトウ科 |
別名 | ガガイモ カガミクサ |
繁殖 | 種子、地下茎 |
種類 | つる性の夏生多年草 |
分布 | 日本全土 |
ガガイモは、日当たりのよい野原や畑、道端で繁殖します。ガガイモは再生力が強く、一度定着すると駆除の非常に難しいつる性雑草です。横走根と呼ばれる横に長く伸びた地下茎は寸断されるとさらに増殖します。とうもろこし畑などで、ロータリ耕転の際にガガイモの根を切断すると、そこから出芽して畑全体に広がってしまいます。
開花期は8〜9月で、種子と地下茎の両方で増えます。大きく成長したもののみ花をつけ、秋になるころには、種子の入った長さが10cmの袋果(たいか)ができます。袋果は多くはできません。ケサランパサランの正体は、ガガイモの白く長い毛をもつ種子だといわれています。
出典:著者撮影