初夏の花と梅雨
春から夏に向かってぐんぐん気温の上がり始める初夏は、植物にとっても過ごしやすく成長の著しい季節でもあります。そんな初夏の季節にやってくるのが梅雨です。日本在来の草花にとっては過ごしやすい梅雨の時期も、外来種によってはかなり厳しい環境になる場合があります。
梅雨を苦手とする初夏の花
梅雨を苦手とする初夏の花は、おもに過剰な湿度を好まない植物です。代表的なものとしては、地中海性気候の環境を原産地とするハーブ全般と考えるとよいでしょう。そのほかには、植物全体にトライコームと呼ばれる産毛状の細かい毛が生えているものや、ブッシュ状に細かく枝葉が密生するタイプの植物があげられます。
初夏の梅雨対策
初夏は鉢植え栽培の出番!
梅雨時の環境下では、トライコームや込み入った枝葉を持つ植物は熱がこもりやすいです。湿気の多い状態が続くと蒸れて枯れる原因となります。過ごしやすい環境にする対策として切り戻しをしたり、込み入った葉をすかしたりすると効果的です。植木鉢での栽培に切り替え、天候によって置き場所を変えるのもよいでしょう。
植木鉢向きの初夏の花【一年草】
①ペチュニア
学名 | Petunia |
和名 | ツクバネアサガオ(衝羽根朝顔) |
科・属名 | ナス科・ツクバネアサガオ属 |
原産地 | 南アメリカ中東部亜熱帯~温帯 |
形態 | 一年草 |
開花時期 | 4月中旬~11月中旬 |
草丈 | 10~30cm |
花の色 | 白、ピンク、赤、黄、青、紫、複色 |
耐寒性 | やや弱い |
耐暑性 | 普通 |
栽培難易度 | ★☆☆☆☆ |
花の種類が豊富なペチュニアには草姿の乱れない園芸品種のサフィニアがあり、よく流通しています。日なたの大好きな植物のため、天気のよい日は日の当たる場所に出し、雨が降ってきたらベランダなどに取り込むとよいでしょう。強い雨風あたると大きな花弁がよじれたり、裂けたりして見苦しくなります。
②ロベリア(エリヌス:アズーロコンパクト)
学名 | Lobelia |
和名 | ルリチョウソウ(瑠璃蝶草) |
科・属名 | キキョウ科・ミゾカクシ属 |
原産地 | 南アフリカ |
形態 | 一年草 |
開花時期 | 4~6月 |
草丈 | 10~20cm |
花の色 | 白、ピンク、水色、青、紫 |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | 弱い |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
ブルー系の花色で清涼感のあるロベリアは多花性の植物です。花と葉は隙間がないほど密になり、長期間の雨に当たると蒸れてしまいます。様子を見ながら切り戻しして風通しをよくしてください。ロベリアは単色で植えるのもよいですが、白い花と青系の花をあらかじめ混植した状態で販売されているものもあります。
植木鉢向きの初夏の花【多年草】
①フランネルフラワー
学名 | Actinotus helianthi |
別名 | アクチノタス |
科・属名 | セリ科・アクチノータス属 |
原産地 | オーストラリア |
形態 | 多年草 |
開花時期 | 4~6月、9~12月 |
草丈 | 30~100cm |
花の色 | 白、複色 |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | やや弱い |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
名前のとおり、フランネルの生地を思わせる柔らかい質感のフランネルフラワーは、蒸れやすい性質の植物です。きれいな花姿を保つには、年間を通して雨の当たらない場所で管理するとよいでしょう。枯れた葉や花がらをこまめに摘み取り、風通しをよくすることが大切です。
②オキシペタラム
学名 | Tweedia caerulea |
別名・和名 | ブルースター・ルリトウワタ(瑠璃唐綿) |
科・属名 | キョウチクトウ科・トゥイーディア属 |
原産地 | ブラジル・ウルグアイ |
形態 | 多年草 |
開花時期 | 5~11月 |
草丈 | 40~100cm |
花の色 | 白、ピンク、青 |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | 強い |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
オキシペタラムは、ピンク色の蕾と水色の花色のコントラストが美しい植物です。日照の多い乾燥した環境を好むため、降雨と多湿が苦手です。雨に当たると花にシミや斑点ができることがあるため、鉢植えで雨が当たらないように管理するとよいでしょう。白い花の品種もあり、こちらは「ホワイトスター」の名前で流通しています。
➂ゼラニウム
学名 | Pelargonium Regal Group |
和名 | ナツザキテンジクアオイ(夏咲天竺葵) |
科・属名 | フウロソウ科・テンジクアオイ属 |
原産地 | 南アフリカ |
形態 | 多年草 |
開花時期 | 4~7月、9~11月(四季咲き性) |
草丈 | 20~80cm |
花の色 | 白、ピンク、赤、オレンジ、紫、複色 |
耐寒性 | やや弱い |
耐暑性 | 普通 |
栽培難易度 | ★★★☆☆ |
ゼラニウムは四季咲き性の植物で、とりわけ初夏の開花がみごとです。日本の気候にあった植物ではないため、高温多湿期に枯れてしまうことがよくあります。なるべく風通しのよい、涼しい場所で管理しましょう。雨の日は鉢植えをベランダや軒下などに取り込んでください。
植木鉢向きの初夏の花【ハーブ】
①オレガノ・ケントビューティー
学名 | Origanum 'Kent Beauty' |
別名・和名 | ラウンドリーブドオレガノ、花オレガノ |
科・属名 | シソ科・ハナハッカ属 |
原産地 | ヨーロッパ、地中海沿岸地方 |
形態 | 多年草 |
開花時期 | 6~7月 |
草丈 | 10~20cm |
花の色 | ピンク |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 普通 |
栽培難易度 | ★★★☆☆ |
オレガノケントビューティーはピンク色の萼(がく)の隙間から、目立たない小さな花を咲かせます。四季咲き性の高い観賞用ハーブで、初夏に生育が活発になります。株は全体的にカサカサとした質感で多湿を好みません。湿度の多い状態が長く続くと、根が腐ることがあるため注意しましょう。
②サントリナ
学名 | Santolina chamaecyparissus |
別名・和名 | ラベンダーコットン、ワタスギギク(綿杉菊) |
科・属名 | キク科・ワタスギギク属 |
原産地 | 地中海沿岸地方 |
形態 | 低木 |
開花時期 | 5~7月 |
草丈 | 30~60cm |
花の色 | 黄、淡黄 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い(多湿に弱い) |
栽培難易度 | ★★★☆☆ |
黄色く丸い花が目を引くサントリナは、花のない時期はシルバーリーフとしても活用できます。こんもりとまとまる株ですが、梅雨時に株の内部が蒸れて黒くなったり、根腐れをおこしたりすることがあります。水やりを控えめにしてこまめに込み合った枝をすかし、風通しをよくしておきましょう。
植木鉢向きの初夏の花【球根植物】
①アマリリス(春咲き種)
学名 | Hippeastrum |
和名 | ー |
科・属名 | ヒガンバナ科・アマリリス属 |
原産地 | 南米 |
形態 | 多年草・球根植物 |
開花時期 | 4月下旬~6月 |
草丈 | 40~80cm |
花の色 | 白、ピンク、赤、黄、複色 |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | 普通 |
栽培難易度 | ★★☆☆☆ |
アマリリスは華やかで一株でもかなりの存在感あります。成長が早く、4月に球根を植え付ければ6月ごろには開花します。発芽~生育期がちょうど梅雨時にあたるため、雨に当てないように気をつけましょう。
②カラー(畑地性)
学名 | Zantedeschia |
和名 | オランダカイウ(オランダ海芋) |
科・属名 | サトイモ科・オランダカイウ属 |
原産地 | 南アフリカ |
形態 | 多年草・球根植物 |
開花時期 | 6~7月 |
草丈 | 15~100cm |
花の色 | 白、ピンク、赤、オレンジ、黄、紫 |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | 強い |
栽培難易度 | ★★★☆☆ |
カラーは白い花(正しくは苞)のイメージを持たれることも多いですが、畑地性は色の種類が豊富です。梅雨時のカラーの管理で気をつけたいことは、雨に当たることで軟腐病にかかりやすくなることです。軟腐病にかかると茎や葉が根元から倒れてきます。軟腐病を防ぐには、雨の当たらないところに植木鉢ごと避難させるのがよいでしょう。
初夏の花の美しさを梅雨時も楽しもう!
梅雨の合間の天気のよい日には、植物にたくさん日光に当てて成長を促します。天気の状況によって置き場所を変えられる鉢植えやプランターでの栽培は、地植えとはまた違ったメリットがあります。植物にとっての最適気温である初夏のガーデニングを臨機応変に楽しみましょう。
出典:写真AC