秋の彼岸とは?
秋の彼岸とはいわゆる「お彼岸」のことであり、仏教関連の行事です。彼岸は「春の彼岸」と「秋の彼岸」があり、この時期に行われる仏教の行事を彼岸会(ひがんえ)と呼びます。
秋の彼岸の期間
秋の彼岸は、秋分の日の前後3日の7日間のことです。2020年では9月22日が秋分の日なので、その前後の時期が秋の彼岸です。彼岸入りは2020年9月19日で、彼岸が明けるのは9月25日になります。この期間が秋の彼岸と呼ばれています。秋分の日は、毎年同じ日ではないので、彼岸も毎年同じ週ではなく移動するのが特徴です。
彼岸の意味
彼岸は仏教の言葉で「煩悩を脱する」「悟りの境地にたどり着く」ことを指します。また、仏教では現世のことを此岸(しがん)、仏様の住んでいる世界を彼岸とあらわします。つまり彼岸とは悟りを開いた仏様がいる世界のことで、極楽浄土を指しているのです。そのほかにも、彼岸はご先祖様がいるあの世と示されることもあります。
名前の語源
彼岸の語源は、サンスクリット語です。サンスクリット語の「パーラミター(波羅蜜多)」に由来しています。波羅蜜多は、到彼岸(とうひがん)とも呼ばれ、仏教において菩薩が仏になるために修行をすることを指します。波羅蜜多は、超える・渡るという意味合いもあり、そこから到彼岸と訳されたのです。
日に願うが語源
「日に願う」は太陽信仰の言葉です。古来より日本は作物の豊作や収穫を感謝した祈りを捧げ、太陽やご先祖様にお供えしたといわれています。この祈りが「日の願い」、日願(ひがん)とされ、そこに仏教の「彼岸」の考えが加わり、今の「お彼岸」になったのです。彼岸は、昼夜の長さが切り替わる時期なので、農業にとってとても重要な日でした。
ボタニ子
六波羅蜜(とくはらみつ)の教え
六波羅蜜とは、彼岸に到達するために行われる6つの修行のことです。彼岸とは、悟りを開いて到達できる世界のことであり、この六波羅蜜にある6つの徳を積めば極楽浄土にいけると信じられていました。彼岸が中日を抜いて、前後3日あるのはこの六波羅蜜が由来だといわれています。彼岸は先祖供養だけではなく、自分を見つめなおす期間でもあったのです。
6つの徳
- 布施(ふせ):見返りを求めず分け与えること
- 持戒(じかい):戒律を守ること
- 忍辱(にんにく):どんな辱めを受けても耐えること
- 精進(しょうじん):努力をして誠心誠意尽くすこと
- 禅定(ぜんじょう):自分を冷静に見ること
- 知慧(ちえ):5つのことを実行し、中道を歩み成就させること
彼岸が年に2回ある意味
彼岸が年に2回あるのは、太陽が関係しています。春分の日と秋分の日は太陽が真東から登り、真西に沈むため明るい時間と暗い時間が同じ長さです。仏教の世界では彼岸は西に、此岸は東にあるとされています。明るい時間と暗い時間が同じ長さの春分の日と秋分の日は、あの世とこの世が一番近く通じやすいと考えられ、先祖供養をするようになりました。
秋の彼岸で行うこと
彼岸はお盆と似通ったところがありますが、目的が違います。お盆は先祖の霊を迎えいれることが目的ですが、彼岸は先祖供養や仏教の修行が目的です。秋の彼岸と春の彼岸では同じことをしますが、お供えものが変わります。秋の彼岸は、作物がたくさん収穫できたことに感謝するという意味合いもあるのです。
お供え
秋の彼岸でのお供えは一般的には「おはぎ」です。おはぎをお供えする理由は、赤い色の小豆はめでたい色、魔を払う色と考えられていたからです。秋に収穫した小豆を粒あんしにておはぎを作ります。おはぎの名前は、萩の花に由来しています。萩は秋の七草の1つです。
おはぎ以外のお供えは?
おはぎ以外には、季節のお菓子や果物をお供えすることが多いです。お菓子は洋菓子ではなく和菓子が一般的で、落雁(らくがん)や、ご先祖様が好きだったものをお供えすることもあります。
ボタニ子
お供えしたものは、「おさがり」として食べます。お墓などにそのまま放置しないでくださいね。
お墓参り
彼岸はお墓参りに行く人も多いです。しかし、彼岸ではお墓で手をあわせるだけではなく、掃除も行います。普段できないすみずみまで掃除するのです。普段のお墓参りで墓石は軽く拭くという方も多いですが、彼岸は墓石だけではなく墓石の周りもきれいに掃除します。掃除はご先祖様にお参りする前に行うのが望ましいです。
お墓の掃除とお参りの手順
お墓についたら、まず合掌してから掃除を始めましょう。掃除は、墓石周りの草むしりから始め、古い花を取り除いた後、花立や線香皿などを洗います。最後に、墓石が傷つかないように柔らかい布やスポンジなどで磨きます。掃除が終わると打ち水で墓石を清め、花やお菓子などのお供えをしてください。食べ物などは半紙を敷いてお供えするのがポイントです。すべて終わったら故人と縁の深い人からお参りをします。
ボタニ子
これは、一般的なお墓参りの手順です。宗派によっては異なりますので、お寺に確認してくださいね。
お墓参りに行く日
彼岸では、中日である秋分の日の午前中にお墓参りに行くのがいいとされています。しかし、明確にこの時期に行きなさいという決まりではなく、彼岸の入りや彼岸明けに行っても大丈夫です。
仏壇は?
自宅に仏壇がある人はお墓同様にきれいに掃除をしましょう。仏壇以外にも仏具の掃除もしてください。普段掃除ができないところまですみずみと行い、仏壇や仏具を清めます。
初彼岸の場合
初彼岸とは、故人がなくなり49日後に訪れる最初の彼岸のことです。新盆とはまた別で、初彼岸は法要をしないことが多いです。もちろん、きちんと供養したい場合には法要を行うこともあります。そのときは喪服を着ていきましょう。
秋の彼岸と春の彼岸との違い
秋の彼岸と春の彼岸では、行われる時期などに違いがあります。基本的には先祖供養することは同じです。しかし、秋の彼岸は作物の収穫を、春の彼岸は作物の豊作を祈っての行事です。
違い①時期
春の彼岸は、春分の日の前後3日間のことです。日数こそは秋の彼岸と一緒ですが、秋の彼岸とは季節が違います。ちなみに故人が亡くなってから、最初の彼岸が春の場合は、春の彼岸が初彼岸となります。
違い②お供え
春の彼岸ではおはぎではなく「ぼたもち」をお供えします。秋に収穫した小豆を春まで保存して作ったものがぼたもちです。ぼたもちは、牡丹の花の名前に由来しています。そのほかは、秋の彼岸と同じで季節の和菓子や果物、故人の好きなものをお供えします。
おはぎとぼたもちの違いは?
「おはぎ」と「ぼたもち」の違いは、あんこの調理法です。材料は同じですが「ぼたもち」がこしあんなのに対して、「おはぎ」は粒あんです。これは、秋に収穫したばかりの小豆は皮が柔らかいため、皮も食べることができたので粒あんでおはぎが作られました。春は秋に収穫した小豆を使用します。保管することで皮が固くなってしまうため、こしあんのぼたもちにしていたのです。
まとめ
彼岸は此岸と彼岸が最も近くなる日で、先祖供養が行われる行事です。それだけではなく、自分自身を見つめなおす期間でもあります。秋の彼岸と春の彼岸ではやることは変わりませんが、お供えものがかわります。ぜひ、この彼岸に自分自身を見つなおし、ご先祖様へ感謝の言葉を伝えてくださいね。
「日願」の説は、お彼岸という行事がインドや中国にはなく、日本独自のものであることから導き出されました。