クリンソウとはどんな花?
学名 | Primula japonica |
属性 | サクラソウ科サクラソウ属 |
分類 | 多年草の山野草 |
生息場所 | 北海道~本州、四国の渓流や湿地 |
開花時期 | 4月~6月 |
草丈 | 40~80cm |
一時は絶滅も心配された花
クリンソウは、日本が原産の山野草で、北は北海道から四国までの山間部に生息しています。サクラソウによく似た花が咲き、湿気を好むので、川が流れている沢地や湿地などに自生しています。夏の高温や直射日光に弱いので、冷涼で半日陰の場所を好みます。一時は絶滅も心配されましたが、最近では保護活動も盛んになってきて、地元住民に守られながら群生して生息するようになりました。
名前の由来
漢字で書くと「九輪草」
クリンソウは、漢字で書くと「九輪草」です。お寺の塔や仏閣の屋根の上に付けられている9個の装飾のことを九輪というのですが、クリン草の花姿がこの九輪によく似ているので、九輪草と名付けられたというのが名前の由来です。
別名は宝塔草(ホウトウソウ)・七階草(ナナカイソウ)・七重草(ナナエソウ)
クリンソウはほかに別名もあって、「宝塔草(ホウトウソウ)」という別名は、お寺の宝塔の上にある装飾品に似ているということに由来しています。また、クリン草は茎を中心にした輪状に咲く花が3~7段咲くので、「七階草(ナナカイソウ)・七重草(ナナエソウ)」と呼ばれることもあります。
絶滅危惧種
クリンソウは、かつて、スコットランド人の植物採集家ロバート・フォーチューンから、「日本で一番美しい花」と絶賛されました。そんなクリンソウは、絶滅危惧II類に指定されています(今すぐにではないけれど、将来的に絶滅の危険が増大している種)。冒頭で触れた通り、最近では、クリンソウを絶滅させてはいけないと、地元住民などによる保護活動も盛んになってきました。
クリンソウの特徴
クリンソウの花の特徴
クリンソウの花の開花時期は4月~6月です。サクラソウによく似た7~8輪の花が、茎を中心にして丸い輪を描くように咲き広がります。この輪状の花が下から上へ、3~7段ほどにまで伸びながら咲いていきます。クリン草の花の色は赤紫色ですが、園芸種として品種改良されて、ピンク色や白色やオレンジ色のクリン草も見られるようになりました。
クリンソウの葉の特徴
クリンソウの葉は、20~30cmほどの大きな楕円形の葉が、茎の一番下の株元に近い所から10~20枚程度生えます。葉は株元だけに生えて、上に伸びる茎には全く生えないのが特徴です。葉の周りにはギザギザの切れ込みがあり、白い葉脈がしっかりと入っています。
クリンソウの生息地
クリンソウは、強い日差しが当たらない半日陰で、湿り気が多いところを好んで生息します。森の中にある渓流地などでよくクリンソウを見かけるのは、こういうことが理由です。開花している間は日当たりがいい方が望ましいのですが、夏の暑さに弱いので、直射日光が当たらないように気をつけないといけません。
クリンソウの群生地①奥日光中禅寺湖畔の千手ヶ浜
栃木県の奥日光中禅寺湖畔の千手ヶ浜にクリンソウの群生地があります。クリンソウが咲く環境を保護するために、マイカーの乗り入れは禁止されているので、無公害バスや遊覧船を利用して行きます。日光と言えば東照宮や華厳の滝などはよく知られていますが、千手ヶ浜はクリンソウの季節になると、多くの観光客やカメラマンでにぎわうスポットになっています。
場所・アクセス
- 電車 : 東武日光線「東武日光」駅で湯元温泉行きの東武バスに乗り、赤沼バス停で下車。赤沼バス停から無公害バスが出ています。
- 車 : 千手ヶ浜には車では行けないので、赤沼駐車場に車を止めて、無公害バスに乗ってください。
- 遊覧船 : 中禅寺湖遊覧船で「船の駅中禅寺」を出発して「千手ヶ浜」まで。
クリンソウの見頃
世界遺産の観光地として有名な日光ですが、奥日光はクリンソウの群生地としてもよく知られていています。クリンソウは暑さに弱いのですが、比較的涼しい日光では、6月~7月までの一ヶ月間ほど見頃が続きます。
群生地の見どころ
奥日光の千手ヶ浜には車で乗り入れることができないので、無公害バスに乗るか、中禅寺湖の遊覧船を利用して行きます。普段訪れることのないような場所にひっそりと群生するクリンソウは、秘境感があってとても美しいですよ。特に見どころなのが「仙人庵」というところで、ここは私有地なのですが、クリンソウの開花時期には一般開放してくれています。荒らされないように柵をしている場所もありますが、みんなで保護して、優しい気持ちで花を楽しみましょう!
クリンソウの群生地②兵庫県ちくさ湿原
兵庫県宍粟市千種町のちくさ湿原は、日本最大級のクリンソウ群生地です。近くにはキャンプ場やスキー場があり、夏でも涼しい環境なので、園内にある大小7ヵ所の群生地には、約40万株ものクリンソウが咲いています。
場所・アクセス
- 電車・バス : JR姫路駅から神姫バスで「山崎」駅下車、バスを乗り換えて「千種」駅下車、そこからタクシーを利用する。
- 車 : 中国自動車道路の山崎ICまたは作用ICから、ちくさ高原ネイチャーランドを目指してください。
クリンソウの見頃
ちくさ湿原のクリンソウの見頃は、5月中旬~6月中旬です。公式HPでは開花情報もアップしているので、訪れるときは参考にしましょう。
群生地の見どころ
ちくさ湿原は日本一の群生地と言われるだけあって、園内にはたくさんの群生地が点在していて、クリンソウを見ながら森の中を散策するコースも整備されています。地元の「クリンソウを守る会」の方々によって大切に保護されているので、年々クリンソウの数が増えています。花の最盛期にはクリンソウまつりも開催されて、地元の高校生が育てたクリンソウの苗も販売されるので、家で育ててみたい方はぜひ訪れてみてください!
クリンソウの花言葉
「幸せを重ねる」「物思い」「物覚えの良さ」「少年時代の希望」
クリンソウの花言葉、「幸せを重ねる」は、重なるように花が咲くことに由来して、愛する人やこれから結婚する友人などに送ると喜ばれそうです。また、静かに咲いている様子から、「物思い」にふけっているかのように見えたのかもしれません。「物覚えの良さ」は、あなたのことを忘れない、という気持ちを込めて贈ることもできますね。「少年時代の希望」は、純粋な少年時代の夢と希望にあふれている花言葉です。
まとめ
クリンソウは多くの人から愛されて保護されている山野草です。小川が流れる緑深い森の中で、人知れずひっそりと咲く可憐なクリンソウには心惹かれるものがあります。外国人からも美しい日本の花と称されているクリンソウですが、保護していかないと絶滅する危惧もあります。地元の方の保護活動で、毎年きれいな花を咲かせる群生地もあるので、そういう場所では近寄って荒らすことがないように、優しい気持ちでクリンソウを観賞しましょう!