キササゲとは?
キササゲはノウゼンカズラ科の落葉高木で、もともと中国を原産としますが、日本各地で栽培されたため、今では川岸などの湿った場所に野生化しています。樹高は5~15mほどになり、広く大きな葉っぱが対生します。6~7月頃、淡黄色で内側に紫色の斑点のある花を咲かせます。キササゲの果実と根皮、樹皮は生薬として用いられ、主に腎臓や肝臓の機能改善に有効とされています。そのほかにも利尿効果や解熱・解毒効果、水虫に効果があるといわれます。
樹木の特徴
キササゲは樹高5~15mまで大きくなる落葉高木ですが、高さ1m程度の生育ステージで花を咲かせる成熟の早い樹木です。桐の木に似た、長さ10~25cmほどの広く大きな葉っぱを対生し、葉柄は比較的長いのが特徴です。樹皮は灰褐色で縦方向に浅い裂け目を作ります。
花と果実の特徴
キササゲの花は淡黄色で縁が縮れており、内側に紫色の斑点を持ち、枝先に約10花を円錐状につけます。開花時期は6~7月です。花後に20~30cmほどの細長い果実ができます。果実は蒴果(さくか※)で晩秋にはじけ、種子を飛ばします。果実は「梓実(シジツ)」と呼ばれ、生薬として用いられます。(※蒴果:果実のうち、乾燥して裂けて種子を放出する裂開果の形態の一つ。〈参考〉コトバンク)
名前の由来
キササゲの語源
キササゲは漢字で「木大角豆」と書きます。キササゲの語源は、マメ科の野菜である「ササゲ(大角豆/学名:Vigna unguiculata Walp.)」に果実が似ていることから、木になるササゲの意味で「キササゲ(木大角豆)」と呼ばれるようになったと伝えられています。
別名「シジツ」、「アズサ 」の語源
キササゲは別名を「シジツ(梓実)」や「アズサ (梓)」といいます。原産地の中国で呼ばれる「梓(シ)」の名前に由来すると考えられています。また、「シジツ(梓実)」はキササゲの実を乾燥させた生薬名としても使われます。
別名「カミナリササゲ」、「カワラササゲ」の由来
キササゲは「カミナリササゲ(雷電木)」、「雷除けの木」、「雷の木」の別名を持ち、キササゲを植えておくと雷除けになると考えられたことに由来します。また、キササゲが川岸など水気の多い場所を好むことから「カワラササゲ」とも呼ばれます。
ノウゼンカズラ科キササゲ属の仲間
同じノウゼンカズラ科キササゲ属の仲間には、アメリカキササゲ(別名:カタルパ、学名:Catalpa bignonioides)、トウキササゲ(唐楸/学名:C. bungei)、オオアメリカキササゲ(別名:ハナキササゲ、学名:C. speciosa)があります。
アメリカキササゲ(カタルパ)
アメリカキササゲの別名「カタルパ」は本種の属名でもあり、ノースカロライナ州での呼び方が語源といわれます。キササゲと同様、薬用として用いられます。開花時期はキササゲと同じ6~7月ですが花は大ぶりです。花色はキササゲより白く、内側には紫色の斑点があります。明治時代にアメリカから伝わり、新宿御苑に植えられたのが始まりとされます。アメリカキササゲの香りには鎮静作用があるといわれます。
トウキササゲ(唐楸)
中国原産で、中国ではキササゲとともに街路樹や木材に利用されています。キササゲ同様に薬効があり、キササゲと併せて「梓実(シジツ)」という生薬名で呼ばれます。漢字表記の「唐楸」はキササゲを中国語で「楸」と表すことに由来すると考えられています。
オオアメリカキササゲ(ハナキササゲ)
オオアメリカキササゲ(ハナキササゲ)は樹高30mにまでなり、葉っぱは広卵円形です。開花時期は5~7月で、アメリカキササゲよりもさらに大ぶりの白い花をつけます。和名の「ハナキササゲ」は「花を愛でるためのキササゲ」の意味です。明治・大正時代に「黄金樹」の名前で日本に入ってきましたがあまり定着しませんでした。(参考:GKZ植物事典)
「キササゲ(木大角豆)」基本情報
- 分類:ノウゼンカズラ科キササゲ属/落葉広葉、高木
- 学名:Catalpa ovata
- 英名:Yellow catalpa、Chinese catalpa
- 別名:シジツ(梓実)、アズサ (梓)、カミナリササゲ(雷電木)、雷除けの木、雷の木、カワラササゲ
- 花色:淡黄色
- 開花時期:6~7月頃
- 高さ:5~15m
- 同属植物:アメリカキササゲ(カタルパ、C. bignonioides)、トウキササゲ(C. bungei)、オオアメリカキササゲ(ハナキササゲ、C. speciosa)
- 花言葉:夢心地
- 生薬としての薬効:利尿効果、むくみおよび水虫の症状改善、解熱・解毒効果など。主に腎臓や肝臓の機能改善に有効とされる(ただし、現在は漢方薬としての処方ではなく、民間療法としての用いられ方が主体)
生薬としての効果と成分
民間療法として活用される
キササゲの果実は利尿薬に、樹皮は解熱・解毒薬として皮膚のかゆみやできものに利用されます。現在は漢方薬として処方はされないようですが、腎臓の炎症、むくみ、ネフローゼ症候群、肝臓の硬化(肝硬変)、水虫などの改善や、解熱・解毒、利尿効果があるとされ、民間療法で用いられます。
キササゲの生薬成分
果実のさやの部分にカリウム塩、果実にカタルポサイド、カタルパラクトンなどの成分が含まれています。他にもクエン酸、カタルピン、オキシレン酸、プロトカテキン酸などを含有しています。
生薬の煎じ方
キササゲの果実(梓実)や樹皮を煎じるには、いずれも5~10g程度を60~800mLの水に入れ、弱火で約15~20分間の加熱が一般的です。通常、一日数回に分けて服用されます。
ボタニ子
一度にたくさん服用すると、胸やけや嘔吐の症状があらわれることがあるので注意が必要です!まずは少量を試してみると良いですね。
お茶として飲用もOK
果実が入ったままのさや10g(1日量)を400mLの水に入れ、液量が半量になるまで煎じ、これを3等分にして一日3回飲用します。トウモロコシの実や芯を同量合わせて用いてもよいでしょう。
服用に事前相談が必要な場合
下記に該当する方は、キササゲの服用前に医師や薬剤師、登録販売者への相談が必要です。
①医師の治療を受けている人
②妊婦または妊娠していると思われる人
③授乳中の人
④高齢者
⑤薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人
ボタニ子
服用後に皮膚に発疹や赤み、かゆみが見られる場合は、副作用の可能性があります。すぐに服用をやめ、医師や薬剤師に相談しましょう!
まとめ
キササゲは中国から伝来し、雷除けとして日本でも神社などに植えられてきました。現在では漢方での処方はされないようですが、腎臓や肝臓の機能改善に有効とされ、民間薬として今でも用いられています。副作用も報告されているため、まずは少量から試すのが良いでしょう。医師の治療を受けている方などは、服用に際して担当医等への事前相談が必要です。キササゲの薬効を自然からの贈り物として、生活に上手に取り入れられると良いですね。
出典:写真AC