コムラサキ(小紫)とは?
秋になると、小さな紫色の実をたくさんつける低木があります。実をたくさんつけて枝が垂れる姿に日本の秋の風情を感じる方もいらっしゃるでしょう。この植物を「コムラサキ(小紫)」と言います。似た花を咲かせる仲間の木に「ムラサキシキブ(紫式部)」があります。「ムラサキシキブ(紫式部)」と比べて大きさが小ぶりなので、「コムラサキ(小紫)」という名前がついたと言われています。
ボタニ子
コムラサキの基本データ
学名 | Callicarpa dichotoma |
別名 | コシキブ・コムラサキシキブ |
分類 | シソ目クマツヅラ科ムラサキシキブ属 (落葉低木) |
分布 | 本州~沖縄、朝鮮半島、中国 |
高さ | 1~1.5m |
開花期 | 6~8月 |
成実期 | 9~12月 |
コムラサキ(小紫)の特徴
コムラサキ(小紫)の花の特徴
花の大きさは、とても小さく3mmほどです。葉の脇から伸びた枝に次々と10~20個ほどのつぼみをつけます。花は筒状で、先が4つに分かれて雄しべが4本、雌しべが1本あり、それぞれが花冠から飛び出しています。色は薄紫色であまり目立ちません。
花の接写画像
つぼみの接写画像
花の咲き方
花は先端に向けて房ごとに順に咲いていきます。画像では左から順に咲いています。左側は咲き終わり、中央は開花中、右側はつぼみです。一枝で一度につぼみ・花・花後が見られます。
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花の成長過程が一枝で見られるなんて面白いですね!
コムラサキ(小紫)の葉の特徴
葉の大きさは縦3~7cm・幅1.5~3cmで、長楕円形をしています。枝に沿ってほぼ等間隔に向かい合って生えます。(対生といいます)葉の形は、先が尖っていて、葉の縁の先から半分くらいまでがギザギザ(鋸歯といいます)になっています。
コムラサキ(小紫)の紅葉
コムラサキの葉は、10月頃から黄色に紅葉していきます。紅葉した黄色の葉と濃紫色の実のコンストラストが美しいです。その後、葉は次第に水分を失い落葉します。枝には実だけが残ります。
コムラサキ(小紫)の実の特徴
実はつやのある美しい紫色をしています。実の大きさは3mmぐらいの小さな実です。きれいな紫色の実が密集してつくため、とても目立ちます。9月から12月頃に結実します。花後に緑色の小さな実ができ始め、成長するにつれて次第に紫色になっていきます。
ムラサキシキブとの違いは?
「コムラサキ」と大変よく似た植物に「ムラサキシキブ」があります。(学名 Callicarpa japonica)よく似た花を咲かせ同じように紫色の実をつけるため、ほとんどの人がこの二つの植物を混同しています。「ムラサキシキブ」は北海道から沖縄の山野の林などに生えて高さは3mほどになります。「コムラサキ」より大きくなりますが、大きさ以外の違いはわかりにくいため混同されがちです。
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園芸店に売られている苗は、ラベルに「ムラサキシキブ(紫式部)」と書かれていてもほとんどは「コムラサキ(小紫)」なんですって!!だからますます混同しちゃいますね!
「コムラサキ」と「ムラサキシキブ」の違い
「コムラサキ」と「ムラサキシキブ」の違いを表にしてみました。
コムラサキ | ムラサキシキブ | |
大きさ | 1.5m~2m(低木) | 2m~3m(低木) |
実の付き方 | 密集して付く | まばらに付く |
葉の鋸歯(ギザギザ) | 上半分くらい | 全体 |
枝の伸び方 | 垂れる | 直立して伸びる |
花(実)の付く位置 | 葉から少し離れた位置 | 葉と同じ位置 |
「コムラサキ」は実がたくさん生って見栄えがしますが、「ムラサキシキブ」は実が少なく地味な印象です。庭木として植えてあるものはほぼ「コムラサキ」と言えるでしょう。
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ムラサキシキブを英語では「Japanese beautyberry」と言うそうです。
ムラサキシキブ属の植物
ムラサキシキブの仲間の植物には、シロシキブ(学名 Callicarpa japonica form.Albibacca)ヤブムラサキ(学名 Callicarpa mollis)、オオムラサキシキブ(学名 Callicarpa japonica var. luxurians)があります。シロシキブは、実の色が白色です。白色の似た花を咲かせ、庭木として流通しています。ヤブムラサキは、葉の裏や花のがくに星状毛が密集しています。オオムラサキシキブは、葉は熱くて大きく、枝も太く花は50個ほどが密集します。すべて落葉低木です。
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続いて、コムラサキ(小紫)の育て方をご紹介!
コムラサキ(小紫)の育て方
樹勢が強く、耐暑性・耐寒性もあり、とても育てやすい植物です。夏の花から秋の実、紅葉と様々に楽しめるコムラサキ。庭木としておすすめです。植木鉢でも育てられますが、樹勢が強いため根詰まりを起こしがちなので、2年に1回は植え替えが必要です。
植え付け
落葉期の12月または2~3月頃に植えます。日当たりのよい場所か午前中よく日の当たる場所で、湿り気のある土壌が適しています。西日に弱いため、西日の当たらない場所にします。地植え・鉢植えともに植え付けるさいには、腐葉土・堆肥をよく混ぜて保湿性を高めます。
水やり
地植えの場合は、水やりの必要はありません。雨不足や真夏で乾燥気味の場合は、たっぷり水をやります。鉢植えの場合は、土が乾いたらたっぷりと水をやります。鉢植えで水切れになると枯れる恐れがありますので、夏は特に水やりに注意しましょう。
肥料
特に必要ありません。
病害虫
日当たりが悪い場所では、うどん粉病になることがあります。また、カイガラムシ・毛虫などが発生することがあります。カイガラムシは見つけたら、ブラシなどでこすり落とします。茂りすぎると発生しやすので、剪定をして風通しをよくします。また、毛虫が発生しやすいので、見つけたらすぐに葉ごと取り去ります。
剪定
植えてから数年は自然に任せても形は整いますが、樹勢が強いので数年で剪定が必要になります。長く伸びすぎた枝や古い枝は付け根から切り落とします。残した枝も3芽ほど残して短く剪定します。剪定の時期は葉が落ち始めた12月頃からです。葉が落ちた後の枝と実を楽しむ場合は、遅くとも2月までには剪定をしましょう。
増やし方
挿し木と種で増やすことができます。挿し木で増やす場合は、6~7月頃に今年伸びた枝を挿し穂とします。また、種で増やす場合は、実をつぶして中から種を取り出して種まきをします。乾燥すると発芽しないので、種を取り出したらすぐにまくことが大切です。2年目ぐらいから、花が咲きます。
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コムラサキの実が落ちて、こぼれ種から発芽することがあります。鳥が運んできたり、子供がどこからか拾ってきたりした実から発芽することもありますよ。我が家のコムラサキも植えたものではないの。
蝶のコムラサキ
ガーデニング好きの人は「コムラサキ」というと植物ですが、蝶好きの人は蝶を思い出すようです。「オオムラサキ」という蝶より小さいので「コムラサキ」と名付けられました。「コムラサキ」の雄は、羽の茶色の模様の中に紫色がかった模様があります。メスは、紫色が入っていないので地味だそうです。
まとめ
「コムラサキ(小紫)」の実は、美しく秋の庭を彩ってくれます。庭で楽しむだけではなく、生け花に使ったり、アレンジメントやドライフラワーに使って楽しむこともできます。管理にそれほど手もかかりませんので、庭木として植えてみてはいかがでしょうか。
「ムラサキシキブ」も「コムラサキ」も源氏物語の作者である「紫式部」にちなんで名前が付いたと言われています。