オトコエシはどんな花?
「オトコエシ」はどんな植物でしょう。秋の七草の1つであるオミナエシは、その花姿をぱっと思いつく方も多いと思いますが、では、オトコエシは?というと少し難しいかもしれません。よく似ていると言われるオトコエシとオミナエシの違いなどを含めて、オトコエシの特徴について詳しくまとめてみました。
オトコエシの基本情報
分類 | スイカズラ科オミナエシ属 |
学名 | Patrinia villosa |
和名 | オトコエシ(男郎花) |
別名 | チメクサ(血目草)トチナ(土地菜) |
生息地 | 北海道~九州 |
オトコエシの外見は?
オトコエシは、60~100cmほどにもなる直立した茎の上部に小さな白い花を密集して咲かせます。開花時期は8月~10月頃です。日当たりのよい草地や林の中に自生しています。葉にはぎざぎざがあり、葉、茎、根にも白くて粗い毛が生えています。また、花の後にできる果実にはうちわのような翼があるのも特徴です。
オトコエシ(男郎花)とオミナエシ(女郎花)の違い
名前の由来
オトコエシとオミナエシの外見から
秋の七草としても有名なオミナエシは、楚々として咲く女性的な姿から「女郎花(オミナエシ)」と書きます。それに比べて、大柄で、たくましく野生的な様子から「男郎花(オトコエシ)」と言われるようになったという説が一般的です。
別の(ちょっと男尊女卑的な)意味からという説も
昔、白い飯=米を食べていたのは、男性だけでした。女性は、黄色い飯=粟(あわ)を食べていたということから、白い花を米、黄色い花を粟に見立てて名付けられたという説もあります。「エシ」は「飯(めし)」が変化した言葉だということで、男飯が「オトコエシ(男郎花)」に、女飯が「オミナエシ(女郎花)」になったと言われています。
ボタニ子
今ではあまり良い意味で使用しない「女郎(じょろう)」という言葉ですが、本来は貴族の女性のことだったんですよ。
オトコエシとオミナエシの外見の違いは?
匍匐茎と地下茎
オトコエシは、匍匐茎(ランナー)を地上を這うように伸ばして、その先端に子苗をつけます。それに対して、オミナエシは、地下茎で繁殖します。この点は2つの植物が大きく違う点と言えます。
オトコエシの実につく翼
オトコエシは、果実に翼をつけます。オトコエシの翼はとても発達した立派なものです。一方、オミナエシはこの翼をつけません。でも実は、日本に6種あるオミナエシ属は、全て果実に翼を持っていて、オミナエシが翼を持たないのが例外なのです。
ボタニ子
ちなみに・・・
ほかのオミナエシ属はみんな黄色い花で、オトコエシだけが白い花を咲かせるんですよ!
オトコエシとオミナエシのミックス?!
匍匐茎で繁殖するオトコエシと地下茎で繁殖するオミナエシは、同じ場所に自生することがほとんどありません(まれにあります!)が、この両者は交雑することができます。その名も「オトコオミナエシ」です。白と黄色い花が混じったり、クリーム色になるものもあります。
オトコエシの花言葉とその由来
花言葉は「野性味」
オトコエシの花言葉は、「野性味、慎重、賢明」です。その由来は、全て名前の「男郎花(オトコエシ)」から来る男性的というイメージから来ているようです。反対に、「女郎花(オミナエシ)」の花言葉は、「美人、はかない恋、親切」で、女性的な花姿から連想される言葉が由来となっているようです。
オトコエシは食べられる?
生薬としてのオトコエシ
オトコエシ、オミナエシの全草を乾燥したものを「敗醤(はいしょう)」と呼び、生薬として使用します。「敗醤(はいしょう)」とは、オミナエシ属の根が腐ると、醤(味噌、醤油などの発酵食品)を腐らせたような臭気があるところから名付けられたものです。煎じたものが解熱、解毒、消炎、下痢に効能があるとされています。
オトコエシの食べ方
春に摘み取った若葉や柔らかい茎は、茹でておひたしにして食べることができます。胡麻和えやバター炒めにしてもよいでしょう。夏の若いつぼみは、天ぷらにして食べることもできます。ただし、摘んで時間が経ってくると匂いがしてくる場合があるので、すぐに調理をすることをおすすめします。
オトコエシまとめ
オトコエシとオミナエシとの違いを中心にご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。秋の七草の1つである有名なオミナエシと同じ仲間ではありますが、あまり知られていないオトコエシ。オミナエシに比べて強壮な感じと、そのかわいらしい小さな白い花が好まれ、近年では自分で育てる方もいらっしゃるようです。秋の散歩で、オミナエシを見つけたときは、ぜひ近くにオトコエシを探してみませんか。かわいらしいクリーム色の交雑種があるかもしれませんよ。
出典:写真AC