はじめに
紫色の美しい花を咲かせる鳥兜(トリカブト)は、毒があることで有名です。毎年山菜採りのシーズンには、ニリンソウと間違えて毒を接種してしまうという事故が多く起こります。安全に植物を楽しむには、正しい知識を備えておくことが大切です。そこで、今回はトリカブトについて詳しくご紹介します。
トリカブトとは
トリカブトは多年草の植物で、湿気の多い木陰や草原、沢筋などに自生しています。日本国内には40種類ものトリカブト属が発見されており、花の色は白や黄色、ピンクなど様々です。毒性が強く、間違えて接種してしまうと、最悪の場合死に至ると言われています。また、美しい花をつけるトリカブトは、観賞用として自宅での栽培が可能です。
トリカブトの特徴
トリカブトにも様々な種類があり、ツル性のものや直立、または斜めに生えていることがあります。茎は1mほどの高さまで成長しますが、花の形なども種類が多く、素人には見分けがつきにくい危険な植物です。トリカブトは根から茎、花や葉っぱの全体にアコニチンという毒があります。間違えて採取することのないように注意したい植物です。
ニリンソウとよく似ている
トリカブトとニリンソウの若葉はよく似ており、花をつける前の状態では区別をつけるのが難しいと言われています。ニリンソウの群落の中にトリカブトが混成している場合もあり、誤飲事故が後を絶たない原因のひとつです。誤飲してしまった場合、食後10分~20分の間に症状が出ることが多く、重篤になりやすいと言われています。
トリカブトの花
トリカブトの花は帽子のような変わった形をしており、美しい紫色が特徴的です。ニリンソウとよく間違えられるヤマトリカブトは、夏~秋に花を咲かせます。下向きに咲くトリカブトの花は、毒があることを忘れるほど可憐で、不思議な魅力のある植物です。園芸種として出回っているものもあるため、自宅で花を楽しむ方も多くいます。
トリカブトの名前の由来
古来の舞楽に使われていた衣装「鳥兜(とりかぶと)」に似ていることから、トリカブトと呼ばれています。ほかにも別名があり、兜花(かぶとばな)や兜菊(かぶとぎく)、ヘルメットフラワーなどと様々な呼び名がある植物です。また、古くから漢方薬としても使われていたトリカブトは、「鳥頭(うず)」や「付子(ぶし、ぶす)」といった別名があります。
トリカブトの毒性
トリカブトは、アコニチン系アルカロイド(アコニチン、メサコニチン、ヒパコニチンなど)の毒を持っています。この毒は植物がもつ毒の中でも極めて強い毒であり、トリカブトに接触しただけでも皮膚から吸収されるほど危険な毒です。北海道が生息地のエゾトリカブトは、もっとも強い毒をもつと言われています。
致死量
トリカブトの毒は植物全体に含まれていますが、中でも根は毒性が一番強く、注意が必要です。致死量はとても少なく、3~4mgと言われています。誤って食べてしまった場合、ほとんどの人に中毒症状があらわれるほど強い毒です。歴史をさかのぼると、トリカブトの根や茎から毒を抽出し、毒殺や狩りなどに使用されていることが伝えられています。
毒による症状
トリカブトの毒には、しびれや嘔吐、腹痛や下痢、血圧低下や不整脈などの症状があらわれます。通常24時間以上生存していれば、回復することが多いです。しかし、症状が悪化した場合には、けいれんや呼吸不全で6時間以内に死に至るという事例が報告されています。トリカブトの毒は皮膚からも吸収されるため、素手で触るのを避けた方が無難です。
生息地で毒の強さが変わる
日本全国に自生しているトリカブトは、ほとんどの種類に毒があります。しかし、生息地によって毒の強さが違うことがわかっており、北へいくほどトリカブトの毒が強力です。環境によって毒の強さが変わってくるため、九州などに自生するトリカブトの毒は北海道のトリカブトに比べて弱いと言われています。
トリカブトの花言葉
植物には様々な花言葉がつけられており、トリカブトにも花言葉がいくつかあります。「人嫌い」や「復讐」、「騎士道」や「栄光」といった花言葉が有名です。これらの花言葉には、花にちなんだ由来があります。歴史と関わる由来が多いため、長い歴史とともに人間と共存してきたことがよくわかる植物です。
花言葉の由来
- 人間嫌い:世間と関わりのない修道士の様子が、人間嫌いと連想されたことからつけられた。(修道士の頭巾姿が花の形と似ていたため)
- 復讐:トリカブトがもつ毒性のイメージからつけられた。
- 騎士道:花の形が騎士のシンボルでもある兜に似ていたことからつけられた。
- 栄光:戦場で戦う騎士や、国を守る騎士がもたらす栄光を連想してつけられた。