もみじと楓(かえで)ってどこが違うの?
みなさんは唱歌「紅葉(もみじ)」をご存知でしょうか。子どもの頃に歌ったことがある方も多いと思います。「秋の夕日に 照る山もみじ 濃いも薄いも 数ある中に」。これは歌詞の最初の部分です。夕日の中、きれいに輝くもみじが目に浮かびますね。中盤では「松をいろどる楓や蔦(つた)は」と、楓も登場します。この歌のように、秋を彩る代表的な葉の「もみじ」と「楓」ですが、このふたつは何が違うのでしょうか。
もみじとは
「もみじ」と聞いて思い浮かべるのは、赤く色付いていて、手のひらのような形をした葉ではないでしょうか。このような葉を持つ樹木は、イロハモミジやオオミミジなどで、一般的にもみじと呼ばれている木です。しかし、これらの樹木は植物分類学ではカエデの仲間に属します。名前に「モミジ」という言葉が入っているのに、ふしぎですね。
「モミジ科」は存在しない?
実は、「カエデ科」はありますが、「モミジ科」という分類は存在しません!前述したように、一般的に「もみじ」と言われる樹木は、カエデ科やムクロジ科、フウ科だったりします。日本人に親しまれてきた「もみじ」という名前は、植物分類上の科に関係なく、手のひらのような形をしている、切れ込みをいくつか持った樹木を指して使われる名前なのです。
「楓」ってどんな種類?
「もみじ」という名前は、総称として使われることを説明しました。では、「楓」はどうでしょうか?「楓」は、植物分類上の「カエデ科」の樹木を指すことがあります。例えば、イタヤカエデという樹木はカエデ科で、きれいに紅葉します。カエデ科なので「楓」と呼ばれます。
切れ込みの数が関係している?
「もみじ」と「楓」。なんとなく思い浮かべると、楓の方がもみじよりも葉に入っている切れ込みの数が少なくありませんか?実は、イタヤカエデなど、代表的な楓の形は、もみじのような手のひらの形をしていません。しかし、切れ込みの数で全ての樹木を判断することは難しので、参考のひとつとして考えましょう。
楓の葉はさまざまな形がある
楓という名前は、葉がまるでカエルの手のような形をしていることに由来しているといわれています。しかし、楓の仲間の葉は、非常にさまざまな形をしています。例えばハウチワカエデという樹木の葉は、その名前のように、天狗のうちわのような形をしています。また、同じくカエデの仲間のチドリノキはサクラの葉のような切れ込みのない形で、一目見ても楓とわからないでしょう。
もみじの種類の見分け方を解説!
楓の種類はとても多いとお伝えしましたが、つまり、もみじの品種も非常に多いということになりますね。もみじは、どの品種も非常に趣きのある特徴を持っています。わかりやすい特徴ゆえに判別しやすいもみじもありますが、似ている葉を持つ樹木も存在します。見分け方を熟知していたとしても、1枚の葉を見ただけで品種を当てるということは難しい場合がありますので、ここでは、もみじの基本的な見分け方についてご紹介します。
もみじは大きく3種類に分けられる
現在日本には、数え切れないほどのもみじの種類があります。これらの多くは、さかのぼっていくと下の3つに分けられます。これらをもとに、江戸時代から少しずつ品種改良をされて、もみじの品種は増えていきました。今では、もみじの種類の多さや奥深さ、美しさは日本だけではなく、海外でも人気があります。
もみじは大きく3つに分けられる
- イロハモミジ
- ヤマモミジ
- オオミミジ
見られる場所による見分け方
イロハモミジとヤマモミジは、切れ込みの数や葉の周囲のギザギザなど、見比べてもとても似ていて違いがわかりづらいです。しかし、ヤマモミジは日本海側で、イロハモミジの多くは四国や九州を含めた太平洋側で見られるという特徴があります。これより、山地など自然の中で見られるもみじは、発見場所をひとつの参考にすることができます。
葉の切れ込みの大きさによる見分け方
一般的にもみじと呼ばれる葉は、写真のように切れ込みがいくつか入っていますね。実は、この切れ込みの大きさは、もみじの種類により異なります。たとえば、枝垂れ品種の切れ込みは、写真のような手のひらの形のもみじと比べると、とても深くなっています。
もみじにより切れ込みの数も違う
もみじの中には、切れ込みの数が決まっている品種がありますので、その数が見分ける際の参考になります。しかし、ハウチワカエデは9~11個の切れ込みを持つなど、数が定まっていない品種もあります。また、切れ込みの数で楓かもみじか判断するという見分け方も聞きますが、全てにこれが当てはまるわけではありません。切れ込みの数と、他の見分け方も参考にしながら判断しましょう。
葉のギザギザによる見分け方
もみじは、葉のふちにギザギザを持つ種類が多いですが、持たないものもあります。ギザギザがないというのは、イチョウの葉のふちのように平らになっているということです。また、ギザギザを持つ種類の中でも、品種によりギザギザの大きさや並び方は異なるので、見分ける際の大きな参考になります。イロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジを例にあげてみましょう。
もみじのギザギザの違い
- イロハモミジとヤマモミジは、大小さまざまなギザギザが並ぶ。
- オオモミジは、小さいギザギザのみが並ぶ。
紅葉する時期による見分け方
童謡「真っ赤な秋」では、「真っ赤だな 真っ赤だな つたの葉っぱも真っ赤だな もみじの葉っぱも真っ赤だな」と歌われています。しかし、もみじが紅葉するのは秋だけではありません!春や夏に赤色や紅色になる品種もあるのです。いつどんな色の葉が見られるのか、これはもみじの品種やその年の天候、環境に大きく左右されます。また、1枚の葉の中でグラデーションが見られる品種もあります。
春もみじも人気
春もみじは、春に紅葉する品種で、ノムラモミジなどが有名です。春は芽吹きの季節のため、庭や公園では黄緑色の景色が見られますね。しかし、春もみじの仲間はこのときに赤色の葉をつけます。このため、庭に植えた場合は赤色がとても目立ち、アクセントになります。さらに、赤色と緑色がお互いに引き立て合うという色彩効果も生み出します。色鮮やかな景色を生み出す春もみじは、昔から人気があるおすすめの品種です。
そのほかの見分け方
葉のギザギザや紅葉の時期などのほかに、枝の付き方や葉の色に個性的な特徴を持つもみじもあります。春もみじであるタムケヤマやアオシダレモミジなどは、とても風流な枝垂れの品種です。また、サンゴカクは冬に枝が赤くなるので、一風変わった雰囲気を楽しむことができます。
それではこれから、おすすめのもみじの品種を、特徴や見分け方とともにご紹介します。
出典:BOTANICA