はじめに
ストレプトカーパスという植物を知っていますか?ちょっと耳慣れない響きの名前ではないでしょうか。ストレプトカーパスには、いくつかの種類があって、それぞれに特徴があります。世界各地で人気となっている鉢花ですが、育てる人や観賞する人を魅了する特徴とは、どんなところなのでしょう。
ストレプトカーパスの基本情報
原産地 | アフリカ大陸中央部から 南東部(マダガスカル、コモロ諸島を含む) |
形態 | 多年草 |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | やや弱い |
耐陰性 | やや強い |
耐乾性 | 普通 |
花色 | 赤、ピンク、紫、青、黄色、白、黒に近い色、緑に近い色 |
花期 | 5月~6月・10月~11月 |
草丈 | 20cm~30cm |
特性 | 常緑性・花期が長い |
ストレプトカーパスの名前の由来
ストレプトカーパスという名前は、ギリシャ語のstreptos karposが由来です。意味は、ツイストフルーツ(曲がってねじれた形の果実)で、種のさやの形からつけられました。さやの中にはとても小さな種子が入っています。熟すと茶色になり、乾燥して裂けることで種子を外へ放出します。
ストレプトカーパスの種類
ストレプトカーパスは、インドアプランツとしても人気があり、どの種類も、年間を通して室内での栽培が可能です。ストレプトカーパス属は、150種以上もありますが、まず大きく2つの亜属に分類されます。ストレプトカーパス亜属とストレプトカルペラ亜属です。
ストレプトカーパス亜属
ストレプトカーパス亜属に分類されるものは、茎がない種類です(無茎種)。花茎(かけい)と呼ばれる花をつけるためだけの茎は出ます。ストレプトカーパス亜属は、さらに3つの種類に分けられます。
多葉種:葉がたくさんある種類(ロゼット種)
ストレプトカーパス亜属のうち、葉がたくさんある種類です。ロゼット種とも呼ばれます。この種類の葉が、バラの花びらのように内から外へ放射状(ロゼット状)に出ることがその名の由来です。これらの葉の1枚を「ロゼット葉」といいます。rexii(レクシー)種をはじめとする原種のほかにも、花や葉に、より見ごたえのある個性を持たせた園芸品種が多数作出されています。
単葉種:大きな葉が1枚だけある種類
一葉種とも呼ばれるこの種類は、大きな葉が1枚だけありますが、これは双葉(子葉)のうちの1枚が大きく育ったものです。珍しい姿形に成長することから人気があります。wendlandii種は、和名:「ウシノシタ」、grandis種は、和名:「オオウシノシタ」とされ、葉の見た目が牛の舌に似ていることが由来です。ほかにも eylsii種、赤い花のdunnii種など、多くの種類があります。
寡葉種:葉が1枚~3枚ほどの種類
葉が出るのが遅いため、常に1枚~3枚程度の葉数しかない種類です。中間種と呼ばれたり、多葉種に含められることもあります。polyanthus種、prolixus種のほか、多くの種類があります。
園芸品種はrexii(レクシー)種から誕生
最初に原産地からイギリスヘ持ち込まれたストレプトカーパスは、rexii(レクシー)種といわれています。現在の園芸品種の基礎となったのは、1886年にrexii種とdunii種の交配で生まれた「Kewensis種」と、1887年にparviflorus種とdunnii種の交配で生まれた「Watsoni種」です。この2種や、親株である3種を交配に使った結果、素晴らしく魅力的な園芸品種が生まれるようになりました。
ストレプトカルペラ亜属
ストレプトカルペラ亜属に分類されるものは、茎がある種類(有茎種)です。代表的なのはsaxorum(サクソルム)種で、茎を伸ばして美しい形に仕立てられるのが、人気の理由でもあります。saxorum種は日本で帰化植物として自生している場所もあります。
サクソルム種のほかにも品種は多数
ストレプトカルペラ亜属(有茎種)のsaxorum種は、ストレプトカーパス・サクソラムと呼ばれ、真っ先に定着しているようですが、ほかにも多くの有茎種があります。白い花に紫のすじが入るpallidiflorus種や、花が小さく紫色が濃いめのholstii種などです。
ストレプトカーパスの特徴
ストレプトカーパスは、アフリカの熱帯地方原産ですが、自生地はうっそうとしたジャングルの中が多く、岩場の上や中腹など地面のほかにもいろいろな場所で見られます。ほとんどが密生する樹木の陰になるところなので、直射日光は苦手です。湿度の高い場所を好みますが、鉢土の水分量が多いのは嫌うので、小さな鉢で栽培できるのも特徴のひとつです。
ストレプトカーパスの花の特徴
ストレプトカーパスの花の特徴は、高坏形と呼ばれる形状(長細い管状の部分から平らに花が開くもの)で、花びらは5つに分かれます。この花の特徴はストレプトカーパス属の全ての種に共通するものです。花色は、品種改良によりとても多くなりましたが、オレンジ色だけはまだないといわれています。
ストレプトカーパス亜属の特徴
スプレプトカーパス亜属の特徴は、まず、茎がないことです。葉が土から直接出ています。花茎(かけい)という花をつけるためだけの茎が出るので、通常の茎があるように見えます。冬になると、枯死線、離脱線などと呼ばれる葉の中間部分に現れる明確な線まで先端部から徐々に枯れていくという興味深い特徴があります。
単葉種は一巡で枯れる
単葉性のものは、一度花を咲かせて実をつけると枯れてしまいます。(単生植物、単生性、一巡植物)しかし、1年で枯れるとは限らず、芽を出してから実をつけるまでに数年かかる場合もあります。
園芸品種を作出しやすい
掛け合わせによる園芸品種(ハイブリッド種)の作出が容易なこともストレプトカーパス亜属の特徴です。特に多葉種(ロゼット種)には多くの品種があります。花色だけでなく、模様入り、八重咲き、香りのよい花、色が変化する花も生み出されました。葉に斑が入るもの、花や葉の大きさ、花茎の長さを変えたもの、ハイブリッド以外の園芸品種も多数あります。
葉挿しで増やせる
茎のないストレプトカーパスを増やすために、よく使われるのが葉挿しという方法です。葉を土に挿しておくと、葉から根が出てその後に新芽が出てきます。種をとって増やすこともできますが、ハイブリッド種は自家受粉でも同じ花が咲くとは限らないので、特性を保つには葉挿し、株分けが有効です。また、単葉性の葉挿しは難しいといわれています。
ストレプトカルペラ亜属の特徴
ストレプトカルペラ亜属は、茎があり、葉は小さくて厚みがあります。花の大きさは直径が2.5cm~3.5cmほどで、花色は紫、薄いピンク、白のいずれかです。花色が少ない理由のひとつは、ストレプトカーパス属の2つの亜属は交配できないため、豊富な花色を持つストレプトカーパス亜属との掛け合わせができないことです。
花期が長い
茎は、まっすぐ伸びるもの、横や下に垂れるように伸びるものがあり、吊り鉢などに向いています。また、花期が長いのも特徴で、気温を保つことなどにより年間を通して花を咲かせることもできます。
ストレプトカーパスの見分け方
ストレプトカーパスに見かけが似ている植物もたくさんあります。花が咲いているなら、花の形で見分ける方法がいちばん簡単でしょう。筒状の長細い部分があって、その先に花が開いている、花びらが5つに分かれているのがストレプトカーパスです。
まとめ
ストレプトカーパスは、園芸品種も含めると、とてもたくさんの種類があります。珍しい形に成長する種類や、美しいハイブリッド種などさまざまで、鑑賞価値も高く、見事に仕立て上げる楽しみもあります。特徴に合わせて環境を整え、元気な株に育てたいですね。
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