ニゲラとは
ニゲラはキンポウゲ科クロタネソウ属の一年草です。細くて華奢(きゃしゃ)な葉も、優しく繊細な雰囲気の花も、ひときわ目を惹く実も、個性的な姿をしています。それにもかかわらず自分を主張し過ぎないナチュラルな雰囲気で、和風の庭にも洋風の庭にも合わせやすい花です。
名前の由来
「ニゲラ」はクロタネソウ属の学名「Nigella」です。語源はラテン語の「Niger」で、「黒い」という意味です。花後に大きくふくらむ果実の中にたくさんの種子が入っており、それが真っ黒であることに由来します。「クロタネソウ」という和名も黒い種子から名付けられたものです。
ニゲラの英名
英名は「Love in a mist(霧の中の恋)」「Devil in a bush(茂みの中の悪魔)」です。「Love in a mist」は霧のようにも見える細く分裂する葉の中に咲く可憐な花の姿に由来します。「Devil in a bush」は角のような突起を持つ実の姿を表現したものです。
花言葉
花言葉は花姿に由来する
ニゲラの花言葉は「当惑」「戸惑い」「ひそかな喜び」「夢の中の恋」「夢で逢えたら」です。花言葉の由来は、英名の「Love in a mist(霧の中の恋)」といわれています。糸のように細く分裂した葉が、緑の霞のように幻想的に花を包んでいるため、夢や戸惑いを連想させ、花言葉につながったと考えられます。
ニゲラの種類
ニゲラ(クロタネソウ属)は16種が、南ヨーロッパ、地中海沿岸、南西アジア、北アフリカ、中東などに自生しています。品種による歴史や園芸種を見ていきましょう。
ニゲラの種類と分布・歴史
ニゲラ・ダマスケナ
「ニゲラ」といえば「Nigella damascena(ニゲラ・ダマスケナ)」を指します。南ヨーロッパ原産で園芸用として親しまれている品種です。16世紀のエリザベス朝時代から栽培され、自然の草花の美しさを表現する庭づくりには欠かせない花です。日本には江戸時代末期に渡来しました。和名はクロタネソウ(黒種草)です。
ニゲラ・サティバ
スパイスやハーブとして利用される「ニゲラ・サティバ」は、エジプト原産です。ツタンカーメン王の墓からも発見され、古代エジプトの時代から利用されてきた歴史があります。和名はニオイクロタネソウです。種子はスーパーフードとして注目されています。ニゲラ・サティバは、花が一重で白~淡い青色と地味なこともあり、あまり栽培されていません。
ニゲラの園芸種
「ニゲラ・ペルシャンジュエル」は八重咲きの園芸種です。花色も豊富で人気があり、日本で多く栽培されています。「ニゲラ・ブルーイスタンブール」は草丈が高く(100cm程度)、花径も大きい(約6cm)です。一重咲きで色は青だけですが、花色が徐々に変化する面白さがあります。一般的なニゲラよりも開花時期が遅いです。花びらが厚く花持ちがよいため、切り花に向きます。
「ニゲラ・グリーンマジック」は突然変異で生まれました。花びらだけでなく、花びらのように見える「がく」もない品種です。花が咲かないように見えるにもかかわらず、風船のような実がなります。切り花として花持ちがよく、白と緑の繊細な美しさと珍しさが人気です。
ニゲラの特徴
ニゲラは、印象的な植物です。特徴を知ると「ニゲラ」という名前には馴染みがなくても、「見たことがある花だ」と思うかもしれません。
特徴①草丈や葉
ニゲラは草丈が40~100cmに成長します。細い茎が枝分かれしながら伸び、その先に花をつけます。葉は対生で、糸のように細く分裂するのが特徴です。「苞(ほう)」と呼ばれる糸状の葉が、レースのように花を包み込みます。
特徴②花
開花時期は4月下旬~7月上旬で、花を楽しめる時期が長めです。花径は3~5cm、花色は白、ピンク、青、紫などで、複色(1つの花に2つ以上の色がある色)もあります。一重咲きでは花びらが5枚あるように見えますが、花びらのように見えるのは「がく」です。本来の花びらは退化して蜜腺状(蜜腺とは蜜を分泌する器官のこと)になってしまいました。
八重咲きの品種では花びらも「がく」のように発達しており、蜜腺状になりません。一重咲きでも八重咲きでも、花が咲き進むにつれて雄しべが広がっていきます。一方、雌しべはくにゃくにゃと曲がりながら伸び、ユニークな印象を与えます。
特徴③実
ニゲラは、実の観賞価値も高いです。花びら(がく)がしぼんだ時期にも花茎を切らずにおくと、実が風船のようにふくらんできます。「茂みの中の悪魔」という英名の由来となった角のような突起も、造形美を感じさせるでしょう。熟して乾燥すると実の一部が裂けて、真っ黒な種子を放出します。種子には品種によって独特の香りがあります。
ニゲラって花も実もとても素敵だわ。どんな風に利用されているのかしら。
出典:写真AC