タコノキってどんな植物?
タコノキの基本情報
学名 | Pandanus(パンダヌス) |
形態 | 低木 |
原産地 | アフリカ、オーストラリア、太平洋諸島など |
樹高 | 10〜200cm |
耐寒性 | 弱い |
耐暑生 | 強い |
開花時期 | 5〜6月 |
結実時期 | 8〜11月 |
温室の植物園などで、「タコノキ」という植物を見かけたことはないでしょうか?タコノキはあまりよく目にする植物ではなく、その存在を知らない方も多くいます。今回は、そんなタコノキの特徴と利用方、食べ方などをご紹介いたします。また、よく似た植物である「アダン」との違いについても解説します。
タコノキの特徴
タコノキのユニークな見た目と、南国の雰囲気のある果実は一度見たら忘れないほど印象に残るでしょう。しかしその他にも見た目や生息する場所など、いくつかの特徴を持っています。しかしタコノキの情報は一般的にはあまり知られていません。この項目では、タコノキの特徴を解説していきます。
特徴①名前の由来になった見た目
タコノキの最大の特徴は、幹に生えた気根です。まるでタコの足のように太く、たくさん生えた気根は、タコノキの呼吸や吸排湿の役割を果たしています。この見た目から、タコノキは「タコの木」と呼ばれるようになりました。これが名前の由来です。タコノキはさらに、「葉が細い」「葉の淵側に茶色い鋸歯」があるなどの見た目の特徴があります。
特徴②パイナップルやドリアンに似た果実
タコノキの果実がパイナップルやドリアンなどによく似ているのは、タコノキがパイナップルなどと同じく、数十個の果実が集まった集合果だからです。この果実は夏になると枝になり、秋になると熟して色づき始めます。果実の色は黄色からオレンジ色で、この色合いもまるでパイナップルのようです。果実が熟すと、集合していた果実がポロポロと地面に落ち、丸い芯だけが枝に残ります。この点は、パイナップルやドリアンとは大きく異なる部分です。
特徴③沖縄などの温かい地域の植物
タコノキは元々、太平洋の島々に生息する植物の近縁種であり、温かい地域の植物です。日本では小笠原諸島の原生林、または沖縄などで多く観測されています。元は小笠原諸島の固有種だったタコノキは、歴史上一度も大陸と繋がったことがないとされる島々で独自の進化を遂げてきました。現代では本土にも移出されて一般にも出回っているようです。
特徴④実は育てやすいタコノキ
もともとは小笠原諸島の固有種だったタコノキですが、現在では一般的に出回っているため、家庭の観賞用植物としても人気を集めています。タコノキの苗木はインターネットなどで簡単に手に入れることができる上、育てやすいという特徴があるので、ぜひ観賞用としてご家庭でお楽しみください。タコノキは鉢植えでも室内の日当たりのいい場所でしたら充分育ちますので、場所もとりません。ただし、温かい地域の植物なので寒さには弱く、冬は注意が必要です。
特徴⑤絶滅危惧種から脱した過去
元々タコノキは、小笠原諸島のごく限られた場所でしか生息していなかった珍しい品種だったので、絶滅危惧種に認定されていました。しかし種子や苗の輸出が始まり一般的に広まったため、2000年ごろからは絶滅危惧種ではなくなったようです。次々と絶滅し数を減らしている小笠原諸島の在来種が、このように絶滅危惧種から脱する事例はとても珍しいことです。
タコノキの種子や幹の利用方
太平洋の島々に生息するアダンなどの植物と同じく、タコノキの幹・種子・葉などは、様々なものに加工され利用されています。日本ではあまり出回っていないので、日本人にはあまり馴染みがないことでしょう。あのユニークな見た目の植物を一体どのように利用するのか、気になるところです。それでは、そんなタコノキの利用方法をご紹介いたしましょう。
利用法①種子を絞って食用油に
タコノキの果実は食べられるのですが、実は残った種子は「松の実のような味」で微かにナッツ感があり、食用油として使うことがあるようです。しかし一般的にはほとんど出回っていないようで、そのため、その味を知っている人もほとんどいません。
利用法②太平洋の島々の家の建築材に
タコノキの近縁種であるアダンの生息地である太平洋の島々では、島民たちの家を建てる建築材として利用されているようです。床や壁、屋根などあらゆる場所に使われていて、温かい地域の人たちの生活によく馴染んでいることがわかります。また、葉などは乾かして丈夫にし、帽子やかごなどの雑貨作りに使われているようです。
利用法③庭園や鉢で鑑賞用に
日本で最も一般的なタコノキの使い方は、鑑賞用として育てるというものです。エキゾチックな見た目の面白さ、そしてその育てやすさから観賞用としての人気が上がっています。かつて絶滅の危機に晒されていたタコノキですが、現代では簡単に入手できるようになったのも、広く認知された理由です。テレビなどでもその育て方が紹介されるなど、今や鑑賞用として一般的な植物になっています。
タコノキの果実の食べ方
食べ方は「そのまま食べる方法」と「茹でて食べる方法」の2通りで、そのまま食べるのが最もポピュラーです。タコノキの果実は集合果で、その果実が熟すとスナックパインのように集まっていた果実が取れますので、面倒な皮剥きなどが要らず楽に食べられます。食感はパイナップルとは違いホクホクで、まるでドリアンかラフランスのようです。そして気になる味は、甘みがほんの僅かに感じられる程度あります。パイナップルのような強い甘みではありませんが、食用としてタコノキを用いている地域もあるようです。
タコノキとアダンの違いは?
タコノキと近縁種で、見た目もそっくりな「アダン」という植物があります。沖縄や小笠原諸島を訪れるとよく見かけるタコノキとアダンには、簡単に見分ける方法があります。この項目で、この2種類の植物の違いと、その見分け方についてご紹介いたしましょう。
違い①木の生え方
タコノキとアダンは木の生え方が違うので、遠くからでも見分けることが可能です。多くのタコノキは空に向かって真っ直ぐに成長するのですが、アダンは斜めに傾くように成長します。タコノキとアダンを見分ける際は、まず少し離れてその木の生え方を観察しましょう。直立しているのがタコノキ、斜めになっているのがアダンです。
違い②樹高(木の高さ)
タコノキとアダンは、樹高(木の高さ)に違いが見られます。アダンが約3mなのに対してタコノキは大体約5mで、タコノキの方が大きいのです。その違いは一見分かりにくいですが、離れて見てみるとよく分かります。
違い③枝の数
タコノキとアダンをよく見比べてみると、その枝の多さにも違いがあることに気づきます。アダンは枝を多くつけるのに対して、タコノキは枝の数は少なく、すっきりとした印象です。気根も長くて太めで、気根の数はタコノキの方が多い、という違いもあります。枝が多いのはアダン、気根が多いのがタコノキと覚えておきましょう。
違い④果実の大きさや、実のなる場所
タコノキとアダンの違いは、特徴的な果実にもあります。タコノキの果実は丸くて大きめ、比べてアダンの果実は小さめです。また、タコノキは枝からぶら下がった状態で果実がなりますが、アダンは葉に近い部分に果実がなります。ちなみに、この2つの果実の味は非常によく似ていて、アダンの方が少し酸味が感じられるようです。
まとめ
タコノキは暖かい地方によく生息している、パイナップルやドリアンに似た果実をつける植物です。名前の由来ともなった、タコの足のような個性的な見た目は不思議で、人々を惹きつける魅力があります。さらに、絶滅危惧種から脱した過去や、その利用法や食べ方などもユニークです。最近ではインターネットなどでも簡単に入手でき、鑑賞用としての人気も高まっていますので、ご家庭でも育ててみてくださいね。
出典:写真AC