月桃とは?
月桃は、沖縄原産の多年草です。よく似た植物があるため、「本月桃」「シマ月桃」などと呼んで区別することもあります。沖縄では「サンニン」という名前で昔から親しまれ、奄美大島などでは「さねんばな」とも呼ばれます。自生地以外でも鉢植えや温室で育てられていますが、諸外国でも人気があり、よく知られている観葉植物です。
基本情報
分類 | ショウガ科ハナミョウガ属(アルピニア属) |
学名 | Alpinia zerumbet (以前はAlpinia speciosaとされていました) |
英語名 | Shell Gingerなど |
形態 | 多年草 |
原産地 | 沖縄 |
草丈 | 約2m~3m |
花期 | 5月~6月 |
耐寒性 | やや弱い(3℃まで) |
耐暑性 | 強い |
特性 | 常緑性 |
名前の由来
月桃の名前の由来は、つぼみの房が三日月に似ていて、さらにそのひとつひとつは桃にそっくりだからいう説や、台湾語の発音に漢字を当ててつけられたという説があります。
花言葉
月桃の花言葉は「爽やかな愛」です。花言葉の由来は、風にそよぐ葉と花の姿からつけられたという説や、香りが爽やかで甘いことからという説があります。
月桃の特徴
月桃は沖縄県、鹿児島県南部、台湾などに自生し、庭や畑のまわりに植えられることも多い植物です。花と葉には独特の甘くて深い芳醇な香りがあります。成長が早く丈夫で、土壌を選ばず育ちます。特に好む生育条件は、日当たりがよく真夏に半日蔭になる場所で、土の栄養分が高く適度に水分が保たれ、水はけがよいことです。
繁殖力が旺盛
月桃は、繁殖力が旺盛なのも特徴のひとつで、こぼれ種や株わかれで増えて群生します。また、台風などで葉が傷んだり塩害があったりしても枯れず、害虫もほぼつかない強い植物です。暖地では庭に植えた場合も特に手入れの必要はありません。成長した株は耐陰性も得ます。
①花の特徴
月桃は、2年以上経った株の先端に花芽をつけます(2年未満の若い株に花が咲くことはほとんどありません)。花芽は赤紫色のさやに包まれていますが、次第にさやが2つに開き、総状花序(そうじょうかじょ)が出て垂れ下がります。花のついた茎の長さは約30cmです。
ボタニ子
「総状花序」とは長い茎に柄を持つ花がたくさんついているものです。
つぼみは白く楕円形
月桃のつぼみは楕円形で大きさは約3cm、苞(ほう)という葉が変形したものに包まれている状態です。苞の色や形はその植物によりさまざまですが、月桃の苞は真珠を思わせる光沢の白色、先端がピンク色で色も形も花びらによく似ています。
花びらは3枚
月桃の花びらは3枚でやや厚みがあり、そのうちの2枚は苞と同じ白色、先端がピンク色です。花は5月~6月(沖縄では梅雨の頃)に咲き、房のようになっている上の方から開いていきます。苞は開花後も花の基部に残ります。
唇弁(しんべん)がある
月桃の花びらは唇弁と呼ばれる中央の1枚が大きく、長さは約4cm~6cmです。ふちにフリルのようなひだがあり、黄色と赤の目立つ色をしています。唇弁は、花粉を媒介する虫を引き寄せ、とどまらせるために役立ちます。
花粉のある雄しべは1つだけ
月桃の花の雌しべは1つ雄しべは3つですが、花粉のある雄しべは1つだけで長さは約2.5cm、雌しべの柱頭の上にあります。あとの2つは、花粉のない仮雄しべと呼ばれるものです(長さは約2mm)。唇弁や仮雄しべを持つ花には蜜がないことが多いのですが、月桃には蜜もあります。
②葉の特徴
月桃の葉は先がとがっていて、平たく細長い形をしています。長さは約30cm〜60cm、幅は約5cm〜15cmです。茎のように見えるものは偽茎(ぎけい)で、葉がさやのようになって重なりあったものです。偽茎には直立性があるため、まっすぐ上へと伸びていきます。葉がつくのは偽茎の先端です。
③茎の特徴
月桃の茎は地下茎の一種で、根茎と呼ばれるものです。根茎の見た目や香りはショウガに似ていて、地中を横に伸びる性質があります。また、根茎は根と同じく地上部を支える役割もしていて、硬く頑丈です。根茎の節から、根と偽茎が出ます。
④実の特徴
月桃の実は蒴果(さくか)です。6月頃に花が落ちて付け根が膨らみ、球形の若い実になります(直径は約2cm)。7月~8月頃は薄い緑色で、中にはすでに白色の種子がありますが、まだ熟していません。
ボタニ子
「蒴果」とは、雌しべの中が複数に分かれていて、熟すと裂けて種子を放出するものです。
熟した実は朱色~薄茶色
9月〜10月にかけて実は朱色~薄茶色に熟し、果皮が裂けて灰色の種子が出てきます。実の皮にはスジがたくさんあり、うねのようにでこぼこしています。
月桃の変種・園芸品種
月桃には見分けがむずかしく、よく似た植物がたくさんあります。変種とは、同属同種で形に違いがあり(大きさ・有毛など)、分布している場所も違う植物のことです。園芸品種とは、やはり同属同種で人間が意図的に選抜・交配などを繰り返して作り出した植物です。主に観賞価値を高める目的で作られるため、色や形の違いがはっきりしています。
①「タイリン月桃」
一般的な呼び名 | タイリン月桃(タイリンゲットウ) |
和名 | ハナソウカ |
学名 | Alpinia zerumbet var. excelsa Funak.&T.Y.Ito (月桃の変種) |
分布 | 南北大東島・小笠原諸島など (現在は、沖縄本島・宮古島などにも分布) |
草丈 | 約2m~4m |
花期 | 4月~5月 |
月桃との見分け方
タイリン月桃は草丈がやや高いこと、開花時期がいくぶん早いことが月桃と異なりますが、見かけだけでは区別がつきにくいといわれています。見分けるポイントとなる月桃との大きな違いは葉の香りでしょう。タイリン月桃の葉は、スッキリとする強めの香りがします。
②黄斑月桃
和名 | 黄斑月桃(キフゲットウ) |
学名 | Alpinia zerumbet ’Variegata’ (以前はAlpinia speciosa’Variegata’とされていた) (月桃の園芸品種) |
用途 | 観葉植物など |
月桃との見分け方
黄斑月桃は緑色の葉に黄色の筋状の斑が入った園芸品種で、葉の色が月桃と違います。観葉植物としてはもちろん、熱帯をイメージしたガーデンづくりなどにもよく使われる品種です。
月桃に似ている植物
月桃とは同属で種は異なりますが、よく似ている植物もたくさんあります。
①斑入り月桃
和名 | 斑入り月桃(フイリゲットウ) |
学名 | Alpinia sanderae、 Alpinia vittata(どちらも同じフイリゲットウを指す) |
原産地 | ニューギニア |
株の大きさ | 高さ:約1.8m、幅:約0.8m |
用途 | 主に観葉植物 (葉の美しさから観賞価値が高いとされている) |
寒さに弱い
斑入り月桃は、月桃より寒さに弱く気温が14℃以下では生育しないほか、直射日光も苦手で長時間当てると葉やけをおこします。月桃や黄斑月桃との大きな見た目の違いは、葉の斑が白いことや成長した株でも小ぶりなことです。花がつきにくい種類ですが、大きな株が濃いピンク色の苞を持つ白色の花を咲かせることがあります。
②烏来月桃
中国語名 | 烏来月桃 |
学名 | Alpinia uraiensis |
原産地 | 台湾北部・北東部 |
草丈 | 約2m~4m |
花期 | 4月~5月 |
烏来月桃と月桃との大きな違いは、花をつけた茎が垂れ下がらず上向きに伸びていることです。葉の香りは月桃より弱いと感じられるでしょう。
月桃には人々をとらえる魅力がある!
月桃は、花や実が色鮮やかで丈夫、そして独特の香りを持つなど、人々をとらえる魅力にあふれた植物です。初めて月桃に出会った人には新鮮な興味を持たせてくれる、自生地で慣れ親しんだ人には懐かしさを感じさせてくれる植物でしょう。
出典:flickr.com