オンコの実とは
オンコの実とは、いちいの木になる実のことです。主に北海道や東北などで、生け垣として植えられているいちいの木の実を、北海道の方では「オンコ」と呼びます。小さな子供や犬などが、口に入れることもあるオンコの実は、実は危険な毒性のある植物です。今回はオンコの実の特徴や毒性などを紹介します。
オンコの木の基本情報
科 | イチイ科 |
属 | イチイ属 |
木の種類 | 常緑針葉樹 |
樹高 | 20m程度 |
耐寒性 | あり |
別名 | ・オンコ ・アララギ |
北海道ではオンコと呼ばれるいちいの木は、大木になる植物でもあり、優秀な木材です。木材以外にも生け垣にも使われ、北海道では使い勝手のいい馴染みの植物です。
オンコの木の特徴
オンコの木は、耐寒性や耐陰性に優れた植物です。雌雄異体のため、実を収穫するには、2本植える必要があります。北海道では庭木や生け垣だけでなく、玉串などに加工して神事などにも用いられています。さらには木材としても利用されるなど、北海道では生活に欠かせない馴染みの植物になっています。
オンコの実と葉
オンコの実は秋に真っ赤に色づきます。見た目がベリー類に似て美味しそうに見え、りすや犬などもよく食べますが、地元ではジャムや果実酒などに加工されます。オンコの葉は、しゅっとした尖った見た目ですが、触っても痛くはありません。
オンコの効能
オンコはいちいの木として、日本全土に分布しています。そんなオンコは、実は葉に薬としての効能があります。採取して乾かしたいちいの葉は、一位葉という生薬になり、利尿作用や腎臓病、糖尿病などに効きます。しかし、薬の効能はあくまで民間薬としてであり、具体的な根拠はありません。葉にも毒が含まれているため、注意が必要です。
オンコの実の毒性
ボタニ子
オンコの実には毒性があるって本当?
そうなんだ!果肉以外の部分には全て毒性があるんだよ。特に種がもっとも危険なんだ。でも葉っぱは薬としての効能もあるから、不思議だよね。
どこに毒がある?
果肉以外の部分は全て毒性があります。中には、誤って口にした犬などが中毒になって、死亡したという話もあります。食べるときは、果肉以外の部分は口に入れないように注意しましょう。
種が一番危険
種がもっとも毒性が強く、危険です。食べてしまうと死亡することもあります。オンコの毒性は非常に強く、種であれば4~5粒も食べれば致死量だと言われています。特に子供などは種を食べると、すぐに致死量に達し、死亡する確率も高いため、種を口にしないよう十分に注意してください。
どんな毒?
オンコの種には、アルカロイド系のタキシンという毒が含まれています。心臓毒の一種で、はるか昔、紀元前に書かれた「ガリア戦記」と呼ばれる書物にも、オンコの毒が出てくるほど、古くから知られた毒です。
食べたときの症状は?
オンコの毒は、摂取量によってはかなり危険で、特に種は少量でもすぐに致死量となります。毒を摂取すると、痙攣をおこし、呼吸困難になって、ひどい場合には死亡することもあります。基本的に、果肉以外の植物全体に毒が含まれています。小さな犬などは、枝で遊ぶだけでも中毒症状がでることもあるため、散歩のときは触らせないよう気をつけましょう。
野鳥は大丈夫?
そんな危険な毒を含んでいる実を野鳥は食べているのに、大丈夫だろうか?という疑問がわきますよね。しかし、種だけを吐き出しているのか、飲み込んでも消化せずに、糞と一緒に出しているのか正確なところは不明ですが、野鳥はよく食べているのに、中毒になったり死亡したりということはありません。
天然記念物「黄金水松」
オンコにはたくさんの別名がありますが、その中に、「水松」というものがあります。オンコと聞いてもピンとこない人も、「水松」であればご存知かもしれません。それは北海道の「黄金水松」と呼ばれる木です。天然記念物にも指定されている、樹齢1,700年という、太古から北海道に存在する巨木です。
黄金水松公園にある「黄金水松」
北海道の先住民族アイヌの人々にも、黄金水松に関する伝承が数多く残っています。高さ20m以上、周囲6mにも渡って枝を伸ばす巨大なオンコの木は、致死量に至るほどの毒をもつ植物でありながらも、長い年月人々を見守ってきました。現在も地元のシンボルとして親しまれ、毎年「黄金水松公園まつり」なども開催されています。
オンコの実の食べ方
オンコの食べ方は、さまざまあります。熟した果実は生のまま食べられ、果実酒にしたり、ジャムにもできます。ただし、食べるときには、種が傷ついていないかしっかり確認しましょう。わずかでも種に傷がついているようなら、危険なため食べずに破棄しましょう。
オンコの実の味は?
オンコの実はほんのり甘い味がします。口に入れるとトロっととろけるような食感で、少し粘りけもあります。ただし、あまり香りはしません。北海道にはオンコ原生林という、オンコが群生している林があり、観光地になっています。味が気になるようであれば、北海道に行ったときはぜひ、寄ってみてください。
オンコの実のレシピ
オンコの実を生で食べるときは葉や種に気をつけ、道すがらちょっと摘まんでと簡単に食べられますが、ジャムやお酒に加工する場合には、驚くほど手間がかかります。ここでは、ジャムとお酒のレシピを紹介します。
ジャムにして食べる
オンコの実の食べ方には、ジャムにして食べるというものがあります。
材料 | 分量 |
オンコの実 | 500g程度 |
砂糖 | 200g程度 |
レモン汁 | 大さじ1杯 |
水 | 適量 |
作り方
まず、オンコの実を集めます。さらに、きれいに洗って実と種を分けましょう。このとき、わずかでも種が傷ついているようなら、その実は破棄します。
- 取り分けた実を鍋に入れる。ひたひたになるまで水も入れる。
- 弱火でゆっくり煮る。
- 3回くらいに分けて砂糖を入れる。味をみて甘さが足りないようなら、砂糖を足す。
- 焦げ付かないようにゆっくりかき混ぜ、粘りけがでてきたら、完成。
- 最後にレモン汁を入れる。
実と種を分けるのが大変
ジャム作りは、実と種の分離作業がとにかく大変です。木ベラなどでつぶしてザルで濾せばいいのですが、もし種に傷がついたら、と思うと少し怖いですよね。手間がかかるわりに味に特徴はなく、普通の甘いジャムとして食べられます。
お酒にして飲む
アデリア ガラス 保存びん クリア 3L 梅酒・果実酒びん MCコンテナー レードル付き 日本製 815
参考価格: 3,240円
果実酒にするときには、ホームセンターやネットでも売っている、梅酒、果実酒用のビンがあると便利です。
材料 | 分量 |
オンコの実 | 1.8~2㎏ |
ホワイトリカー35度 | 1.8L |
レモン | 3~4個 |
氷砂糖かグラニュー糖のどちらか | お好みで(無くても可) |
作り方
まず、オンコの実を選別します。種に問題がなければ、きれいに水洗いしましょう。
- ビンに選別したオンコの実を入れる。
- ホワイトリカーを入れる。
- レモンは皮を剥いて輪切りにする。
- レモンとグラニュー糖か氷砂糖をお好みで入れる。
苦くなるので2~3週間くらいでレモンを取り出し、2~3ヶ月ぐらいでオンコの実を濾して取り出します。実を取り出してからさらに3~4ヶ月冷暗所に保存し、琥珀色に色づくと飲みごろになります。
オンコの実を食べるときは注意して
オンコの実は、そのままでも熟していれば、美味しく食べられます。しかし、同時に果実以外の部分には、危険な毒性が含まれています。とはいえ、毒性があるからと敬遠することなく、オンコの危険性をきちんと理解したうえで、ジャムやお酒などにぜひ利用してみてください。
出典:写真AC