センダンの利用法
センダンは暖地では自生するほど丈夫なので、街路樹や公園樹、庭木としても利用されます。その一方で、植えてもいないのにいつの間にか生えて大きくなるため、嫌われることもある樹木です。街路樹や庭木以外の利用法をご紹介しましょう。
木材として利用
ミニシンクと一体型の、センダンで作った造作テーブル#住まいず #センダン #本物の木の家 https://t.co/Om4gz23yFh pic.twitter.com/Z3VrlVlKX7
— 有村康弘@国際結婚パパ🇯🇵🇰🇷 (@11_5daime) December 8, 2015
木材には防虫効果がある
センダンは「ミンディ材」の名で木材として利用されます。センダンはスギやヒノキに変わる新しい木材として注目されている樹木なのです。センダンは成長が早く、苗を植えて2年で4mとなり、15~20年で製材できます。しかも広葉樹の木材は世界中で不足しているため、需要が多いのです。肌目がやや粗く磨き上げが必要ですが、加工しやすく防虫効果もあります。
中山間地の耕作放棄地でも注目
センダンの木材は、人手不足や後継者不足のために放棄された中山間地の耕作地を救う救世主にもなっています。この取り組みの先駆けとなったのは熊本県天草市です。センダンは育て方も簡単で手入れに手間がかからないので、米作りができなくなった高齢農家でも栽培できます。既に農道がある場合が多いため、木材を軽トラックで運び出すことも可能です。
荒廃対策にも効果
センダンの植林は、耕作放棄地の荒廃対策にもなります。農地として施肥されてきた土地は、山林より肥沃です。放棄されるとあっという間に雑草や雑木が生えて藪(やぶ)となり、イノシシなどの鳥獣が住みついてしまいます。成長が早いセンダンを植えることにより、日光が遮られて藪になりにくくなるのです。現在では福岡県や長崎県でも植樹が進んでいます。
薬や薬剤として利用
道すがら…#センダン (栴檀)
— いまさき ひろし (@imasaki_hiroshi) August 24, 2016
白~淡黄色に熟した実は苦楝子(くれんし)と言う名の生薬で整腸・鎮痛薬に・・ pic.twitter.com/gweQAx1p8V
樹皮は駆虫薬に
センダンは古来から薬や薬剤として利用されてきました。樹皮や根皮は生薬名を「苦楝皮(くれんぴ)」といいます。煎じて内服すると駆虫薬(虫下し)として効果を発揮するのです。駆虫薬としては副作用が少なく、重宝されました。
果実も生薬に、葉は虫よけに
果実も生薬として利用され、「苦楝子(くれんし)」と呼ばれます。苦楝子の果肉を外用すると、ひび、あかぎれ、しもやけに有効です。煎じて内服すると整腸剤や鎮痛剤となります。葉には強い除虫効果があり、昔は農家の虫よけ剤として用いました。
インフルエンザ予防に効果
近年の研究で、センダンの抽出液がインフルエンザウイルスを不活性化させることがわかっています。センダンの抽出液は、インフルエンザウイルスの表面にあるたんぱく質のとげ(スパイク)を壊すのです。
空間のウイルスを撃退
とげを失ったウイルスは人の体内に入っても細胞にくっつくことができず、増殖できません。その人の体内から出ていくこともできないのです。それは感染能力を失ったことを意味します。センダンの抽出液を噴霧すると空間のウイルスを殺傷し、感染を予防できるのです。センダン抽出液を含むインフルエンザ対策商品も販売もされています。
実の核を数珠として利用
センダンの果実の核は大きく硬く、5本の溝がある特徴的な形です。べたべたする果肉をきれいに取り除くのはたいへんですが、昔から数珠を作る珠として利用されていました。
昔は獄門台に利用
獄門晒し首 平将門; 腹 昔の作品
— 手彫り刺青師・龍元 (@tattooistryugen) March 6, 2018
Severed head of Taira no Masakado; torso, old work #獄門 #晒し首 #平将門 #手彫り #刺青 #龍元 #SeveredHead #TairanoMasakado #tebori #irezumi #ryugen pic.twitter.com/62dxTPH5zG
このように役に立つセンダンですが、「獄門の木」「さらし首の木」という不吉な呼び名もあります。センダンは古来より、斬首処刑された罪人の首をかけてさらす獄門台として使われていました。獄門台に使われた理由としては、センダンの木が邪気を払うと考えられていたためとも、除虫効果があるためともいわれています。
棺桶にも使われた
平家物語の中で、壇ノ浦の戦いで捕らえられ処刑された平宗盛父子が、生首をかけられたのもセンダンの木でした。センダンは棺桶や火葬の薪、死者の杖としても利用され、「棺桶の木」とも呼ばれます。それゆえ縁起が悪く家運が衰えるとして、庭に植えたり利用したりするのを嫌う人もいるのです。
「栴檀は双葉より芳し」とは
樹木見本園ではセンダンの花が咲いています。
— 都立水元公園 (@ParksMizumoto) May 22, 2019
「栴檀は双葉より芳し」でいうセンダンは白檀のことで、このセンダンではありません。#センダン#水元公園 pic.twitter.com/lbrame1Fej
センダン(栴檀)が出てくることわざに、「栴檀は双葉より芳し(センダンはふたばよりかんばし)」があります。しかしこの「センダン」は違う植物を意味しているというから驚きです。どういうことなのでしょうか。「栴檀は双葉より芳し」の意味もご紹介しましょう。
この「センダン」は「ビャクダン」のこと
「栴檀は双葉より芳し」の「センダン(栴檀)」は「ビャクダン(白檀)」のことです。「白檀」といえば線香を思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。むしろ、アロマの「サンダルウッド」といった方がピンとくるかもしれません。
ビャクダン(白檀、学名 Santalum album)はビャクダン目ビャクダン科ビャクダン属の熱帯性常緑樹です。センダンとは全く似たところはありません。ビャクダンは最初は独立して育ちますが、生長するにしたがって吸盤で宿主の根に寄生する半寄生性植物です。花は4弁で、最初は黄緑色でだんだん暗赤紫色となります。
中国では白檀を栴檀と呼んだ
ビャクダンの原産地はインドです。雌雄異株で育て方も難しいことから、インドでは伐採と輸出を規制しています。精油成分に由来する爽やかな甘い芳香が特徴で、紀元前5世紀頃から高貴な香木として珍重されてきました。中国では、この「白檀(ビャクダン)」を「栴檀(センダン)」と呼んだため、混同されることになったのです。
「栴檀は双葉より芳し」の意味
雨降りと湿度と気温の高さで発芽しだす。#ビャクダン pic.twitter.com/PHX3TOWSfw
— りい(りいのすけ) (@Lenosuke) July 11, 2015
「栴檀は双葉より芳し」とは、成長してから大成する人は、子供のころから普通の人とは違って優れていることを意味する例えです。ビャクダンは、発芽して双葉の出る頃から香気を放つのだろうと称されます。これは類いまれな芳香ゆえの誇張表現です。幼少の頃から異彩を放っているのだろうと想像されものですが、実際は自然には香りません。
まとめ
センダンは若葉の頃から花期、黄褐色の実をつける時期、落葉まで、季節折々の姿を楽しめます。なんといっても花期の満開の頃は樹木全体に薄紫の霞がかかったように美しく、香りも素敵です。落葉した後に残るたくさんの黄褐色の実も風情があります。
庭木としては大きさや忌み木であることに一考の余地がありますが、育て方も簡単です。庭に植えなくても、センダンは昔から日本人の身近にある木なので、意外なところに生えているのを発見するかもしれません。センダンの季節ごとに見せるさまざまな姿を鑑賞してみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC