キハダの薬としての特徴
生薬名はオウバク
採取時期
生薬「オウバク」はキハダの周皮を除いたコルク質の樹皮を乾燥させたものです。樹齢12~25年ほどの木を切り倒して樹皮を採取します。採取は木が水分をたっぷり含む梅雨時(6~7月ごろ)が適期です。この時期は薬効成分が豊富で、雨で水分を含み樹液が盛んに流動するため、コルク質がはがしやすくなります。
採取方法
太い枝や幹を1mの長さの輪状に切り、縦に切り込みを入れておきます。その切り口にくさびを差し込み、丁寧にコルク質をはぎ取った後、外皮を取り除き、コルク質の内皮を日干ししたものが漢方の生薬「オウバク」です。鮮やかな濃黄色で、厚みがあって折れやすく、噛むと強烈な苦い味があり、粘りがあるものが良品とされます。
薬効成分
生薬「オウバク」には、アルカロイドのベルベリン、パルマチン、フェロデンドリンなど多くの薬用成分が含まれます。特にキハダの樹皮をなめたときに感じる苦い成分であるベルベリンは抗菌作用など健康をたもつためのさまざまな効能をもつといわれます。
漢方処方用薬:消炎、清熱の作用を期待し、薬方に配合する。また、打撲などの外用に用いる。
生薬製剤:苦味健胃、整腸止瀉薬。
漢方処方例
オウバクが漢方薬として処方される例として、滋陰降火湯(じいんこうかとう)、知柏地黄丸(ちばくじおうがん)、白頭翁湯(はくとうおうとう)の他、湿布薬である中黄膏(ちゅうおうこう)などがあげられます。
滋陰降火湯(じいんこうかとう)、知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
構成生薬のうち、黄柏と知母の組合せで、消耗性疾患における発熱に用いられる。
白頭翁湯(はくとうおうとう)
構成生薬のうち、黄柏、白頭翁、黄連の組合せで、アメーバー性・細菌性の下痢に用いられる。
中黄膏(ちゅうおうこう)
化膿性打撲に用いられる。
キハダの育て方
必要な環境
キハダは日当たりが良好で適度に湿った土質を好みます。肥沃で水はけのよい、日なたまたは半日陰の場所を選びます。高さ20mほどの大きな木に成長するので植え付けする場所は計画的に考えましょう。環境があえば基本的な育て方は手間いらずで、日本全土で栽培できます。
栽培カレンダー
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
施肥 | ||||||||||||
剪定 | ||||||||||||
開花 | ||||||||||||
樹皮収穫 | ||||||||||||
果実収穫 |
種まき
種の採取は10月に完熟した果実を収穫し、果皮を取り除いてから水洗いして、表面の精油分を取り除きましょう。種まきの前に水につけて湿らせるか、砂と混ぜて種子に傷をつけると発芽しやすくなりますよ。通常、秋に種まきをすると翌春には発芽しますが、翌年に発芽しなければ翌々年になる場合もあります。
増やし方
キハダは挿し木で増やすことができますが発根は簡単ではありません。また切り株からの萌芽(ほうが:芽をだすこと)も少ないと報告されています。移植することも困難なので、種から苗木を育て、植え付けましょう。樹皮が採れるまでには10~20年の月日が必要です。
キハダの木材としての利用
キハダの木は黄白色の木目が美しく、芯材の美しい黄褐色が目を惹きます。材としては強いわりにやわらかく、反りや狂いが少ないのが特徴です。そのため、床柱、床板などの建材、テーブルやタンスなどの家具、お盆やお椀などのキッチン用品としてさまざまなジャンルで有効に利用されています。
まとめ
健胃整腸薬、湿布薬にも使われてきたキハダの苦い樹皮、漢方薬にも使われ、はちみつ採取にも役立つ木なのですが、今では山の奥の奥に自生するのみ、栽培も時間と手間がかかるため減少しているのが現状です。
出典:筆者撮影