キハダの効能と利用法
キハダには驚くほど多くの利用法があります。健胃整腸薬、湿布薬、染料、スキンケア成分としても大活躍のキハダの効能と利用法を見ていきましょう。
効能と利用法①苦味健胃整腸剤として
キハダは薬の原料として、苦味健胃整腸剤として古くから用いられてきた歴史をもち、縄文時代の遺跡からも発見されています。奈良や高野山の陀羅尼助(だらにすけ)、長野県の百草丸(ひゃくそうがん)など、日本各地さまざまな名前の薬に苦味健胃整腸剤として配合されてきました。
陀羅尼助(だらにすけ)とは
日本の薬の元祖とされるのが陀羅尼助(だらにすけ)です。奈良県大峰山で修験道(しゅげんどう)の開祖、役行者(えんのぎょうじゃ)が陀羅尼経(だらにきょう)を唱えながらキハダのエキスを煮詰め、これを陀羅尼助(だらにすけ)と名付けたのが始まりだと伝えられます。
奈良時代に作られた民間薬
陀羅尼助(だらにすけ)が作られたのは奈良時代と伝えられているので、1300年も前のことです。疫病が流行し、多くの人々が腹痛で困っていたとき、修験道(しゅげんどう)の行者(ぎょうじゃ)が陀羅尼助(だらにすけ)を作って人々を救ったと語り継がれています。
山伏による普及
山伏(やまぶし)とは特定の山の中で修業する修験道(しゅげんどう)の行者、ほら貝や杖を持っているのが特徴です。山伏たちの旅の携行品として陀羅尼助(だらにすけ)は小さな丸薬とされ陀羅尼助丸(だらにすけがん)となり全国に広まりました。奈良県吉野郡洞川(どろがわ)温泉は陀羅尼助丸(だらにすけがん)の生産地です。
効能と利用法②止瀉薬として
古来から民間での使い方として下痢や腹痛があるときに、オウバクが役立つと伝わられています。下痢、食あたり、水あたりで困ったときにキハダが有用だと昔の人は知っていたのです。
古来民間で健胃・下痢止として用いられた“黄柏(オウバク)”から抽出された塩化ベルベリンを成分とする「下痢止」です。
効能と利用法③湿布薬として
収斂、消炎作用をもつキハダは、湿布薬としても活躍してきました。粉末に酢や水を混ぜてドロドロの状態に練り、ガーゼなどの布に塗り付けます。腰痛、捻挫、関節リウマチ、打ち身などの患部に湿布薬として貼りつけます。
効能と利用法④眠気冷ましとして
眠気を覚ますほどの苦い味をもつキハダは、古くから眠気覚ましとして用いられてきました。キハダの苦い味でとうにもならない眠気を吹き飛ばしていたと想像するとなんだか微笑ましいですね。
効能と利用法⑤うがい薬として
キハダの煎じ液は抗菌作用が期待されるためうがい薬としても有用といわれます。口内炎にはオウバクの粉末を蜂蜜で練って患部に塗るという民間療法がおばあちゃんの知恵として伝わっています。
効能と利用法⑥入浴剤として
オウバクの煎じ液は入浴剤として神経痛、打撲、捻挫、熱をもった肌を冷ます効能が期待できるといわれます。樹皮を煎じた液を入れますが、浴槽が黄色く染まらないよう量や時間を調整しましょう。お湯を洗濯などに使用すると衣類が黄色く染まるので注意が必要です。
効能と利用法⑦スキンケア剤として
スキンケア製品にも薬効成分として抗菌作用、抗炎症作用、保湿、バリア機能の改善を目的として配合されます。スキンケア製品のラベルにキハダ樹皮エキスの名前を見つけてみてはいかがでしょうか。
効能と利用法⑧染料として
キハダの黄色は日本の伝統色である黄檗色(キハダイロ)と呼ばれます。かつては紅花染めの下染め用の染料として、赤ちゃんのおくるみの染料として使用されました。防虫効果を期待して仏教経典を書くための紙をキハダを染料として染めた歴史があり、正倉院や薬師寺に今もその書物が残ります。
効能と利用法⑨薬用酒として
キハダの樹皮と氷砂糖、ホワイトリカーで3カ月ほど熟成させた薬用酒は、食欲増進、殺菌作用、健胃、整腸などの働きが期待でき、毎日少量を続けて飲みましょう。苦い味が強いので、他の薬草酒とブレンドする、砂糖や蜂蜜といった甘みを加えるなど味を調整してください。
次のページではキハダの薬としての特徴やキハダの育て方について解説します。
出典:筆者撮影