ヨシの利用法
日本人とは長いお付き合いの歴史をもつヨシは、軽くて丈夫な棒として日常の暮らしになくてはならない素材として利用されてきました。そんなヨシの利用法についてご紹介しましょう。
利用法①食用
ヨシの若芽は少し苦味を感じますが、タケノコと同じように食用になります。春に新芽が出たら収穫して、皮をむいて天ぷらや和え物にしてみましょう。地域の名産として食用のヨシパウダーを開発してクッキーなどの商品開発を進める地域もみられます。
利用法②葦船
日本の神話では「古事記」にイザナギノミコトとイザナミノミコトとの間に生まれた蛭子命(ヒルコ)が葦船に乗せられて海に流されたと記され、葦船が神輿(みこし)として神事に利用されるなどヨシは昔から神聖なものとして使われていました。
利用法③楽器
竹と同じようにヨシの茎は中が空洞になっているのでヨシ笛などの楽器に加工されます。西洋のパンフルートはヨシ笛の長さを違えて並べたものです。古代中国の簫(しょう)も同じ系統で、雅楽などで使う篳篥(ひちりき)には乾燥したヨシで作った葦舌(した)として振動音源部として利用します。
利用法④紙
ヨシからとるヨシパルプからは紙を産み出すことができます。まだまだ木材パルプ紙の品質にはかないませんが、中国では実用化されトイレットペーパーなどに加工されています。日本ではごく少量の琵琶湖のヨシがハガキなどに加工されています。
利用法⑤よしず
ヨシのもっともよく知られた利用法が葦簀(よしず)で、蒸し暑い日本の夏を涼しく過ごすための日よけとして今も重宝されています。残念ながら日本のヨシが利用されることは少なく、中国で生産される低価格なよしずが大部分を占めます。
利用法⑥ペン
ヨシを切って削りペンとして利用するヨシペンは、筆記用具の中でも長い歴史をもちます。紀元4世紀以降の古代エジプトの遺跡から発見されていて、新訳聖書が書かれた時代ではもっとも一般的な筆記具でしたが、その後より硬く、長期の使用に耐える羽ペンが主流となってしまいました。
利用法⑦屋根材
日本の伝統の家の屋根は瓦が一般的になるまでは、ヨシ、ススキ、ワラなどの植物を屋根材として使っていました。ススキやワラと比較するとヨシは耐久性、排水性にすぐれ、夏は涼しく、冬はあたたかく過ごせる素材としてよく利用されました。
利用法⑧腐葉土
腐葉土は水はけを改良するなどの土壌改良剤で、栄養分を含んだ肥料ではありません。菊の愛好家からは大輪の菊が咲くとヨシを利用した腐葉土が人気です。菊以外にも花や野菜などの栽培にも利用できます。
利用法⑨生薬
地上部が枯れる冬、ヨシの根茎を採取して乾燥させたものは蘆根(ろこん)という生薬名で呼ばれ、利尿や消炎のための漢方薬に処方されます。またヨシの茎の部分は葦茎(イケイ)という生薬で、ヨモギ、麦茶、ハトムギ茶などとブレンドして美容や健康目的のお茶としても利用されます。
ヨシの花言葉
ヨシの花言葉は「音楽」「哀愁」「考える」です。なぜこのような花言葉があたえられたのか?ヨシ笛の哀愁を帯びた音色が聞こえてきそうな花言葉についてご紹介しましょう。
考える
有名な言葉「人間は考える葦である」にちなんだ花言葉ですね。17世紀フランスの哲学者パスカルの大自然と比較して、人間は弱いヨシのような存在ではあるけれど、単なるヨシではなく、考えるヨシなのだという名言を残したのです。
音楽
ヨシと音楽は切っても切れない関係です。西洋の今でも楽器には、ダンチク(ジャイアントリード)という種類のヨシが使用され、プラスチックなども試されますが、替わる素材がみつからないというほど、ヨシは楽器にとって欠かせない植物なのです。
まとめ
実は日本の文化と深い関係で結ばれた植物、ヨシについてご紹介しました。日本では短歌などにも多く詠われ、世界では文学やことわざにたびたび登場して、何かを考えさせる力のある植物でもあります。そのヨシの魅力を伝えるため、各地でこのヨシを守る活動が広がっていますので、参加してみてはいかがでしょうか。
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