乾燥野菜とは
古くから、日本人は野菜を乾燥させて食してきました。切り干し大根のような乾物が乾燥野菜の代表的なものです。近年では、カップラーメンに入っているネギや、フリーズドライの味噌汁など、乾燥野菜の出番はどんどん増えてきています。
古くから作られている
古くから、たくさん採れた野菜を干して保存することは、世界中で行われてきました。日本では切り干し大根や、干ししいたけ、干し芋などが有名ですね。海外ではドライトマトやドライポルチーニなどが知られています。これらは重要な保存食として野菜の採れない時期の食を支え、地域に根付いた食文化をつくってきました。
用途が増えている
成長のきっかけはカップラーメン
乾燥野菜の用途は、昔ながらの干し野菜だけではなく、どんどん広がってきています。乾燥野菜の市場が成長したきっかけは、1970年代ごろから急速に普及したカップラーメンのかやくとしてネギが採用されたことでした。ネギの加工にはフリーズドライ技術が採用されています。カップラーメンの売り上げが伸びるにつれて、乾燥野菜の需要も伸びていき、乾燥野菜の加工業者も増えてきました。
さまざまな商品も登場
近年では、パックの野菜だしや、粉末状の野菜スムージー、乾燥野菜入り味噌汁やスープなど、さまざまな商品が登場しています。また、災害時の非常食やにも用いられていますよ。
野菜を乾燥すると栄養は損なわれる?
「カラカラに乾いた野菜なんて、栄養が抜けているのではないか?」と気になっている方もいるかもしれません。実際には、乾燥野菜は栄養豊富な食物です。乾燥することで、増える栄養や変化する成分に注目してみましょう。
乾燥野菜で増える栄養
乾燥野菜が注目される要因の1つは、その栄養価の高さです。野菜を干すことで、ビタミンD・ビタミンB群のビタミンや、カルシウム・カリウム・食物繊維などの含有量が増えます。生の大根と、水で戻した切り干し大根とを比べると、鉄が3倍、食物繊維が4倍、カルシウムは5倍に増えています。
乾燥野菜で変化する栄養
生のしいたけにはビタミンDはほとんど含まれていませんが、しいたけの「エルゴステロール」は紫外線に当たるとビタミンDに変化します。ビタミンDはカルシウムやリンの吸収を促し、血中のカルシウム濃度を一定に保つ働きがあるとされるビタミンです。また、干すことによってデンプンが糖に変わり、甘味が増すものもあります。
乾燥野菜で減る栄養
残念ながら、干すことで減ってしまう栄養もあります。水溶性のビタミンのビタミンCやカロテノイドは、天日干しや乾燥加熱処理によって減ってしまいます。
乾燥野菜の加工方法
乾燥野菜を作るには、自然のエネルギーを利用する昔ながらの方法と、乾燥機を用いる方法とがあります。
天然乾燥
天然乾燥は、陰干しや天日干しなど、自然のエネルギーを使って野菜を乾燥させる方法です。干ししいたけやかんぴょうなどは、昔からこの方法で作られてきました。乾燥コストが低く済むことがメリットですが、時間や手間・場所が必要なことや、天候に左右されやすく品質の均一化が難しいといったデメリットがあります。
人工乾燥
自然の力ではなく乾燥機を使って乾燥野菜を作る方法も、さまざまに工夫されてきました。天候に左右されずに野菜を乾燥できることや、短時間で乾燥できることなどが大きなメリットですが、乾燥コストは高くなります。大きく分けて「エアードライ(熱風乾燥)」と「フリーズドライ(凍結乾燥)」があり、いくつかの技術を組み合わせた複合機なども開発されています。
熱風乾燥
熱風を野菜に吹き付けて乾燥させる技術で、人工乾燥の中では多く使われています。乾燥速度が速く、均一に仕上がること、ランニングコストが安いことがメリットです。その反面、加熱により成分変化を起こしやすいというデメリットがあります。
低温乾燥
低温乾燥は、湿度を下げた低温(20~30℃)の空気によって乾燥させる方法です。栄養成分や、香り・色の変化が少なくて済みますが、熱風乾燥に比べて乾燥に時間がかかり、装置がやや高価です。
凍結乾燥
凍結乾燥は食品や野菜を凍結させ、真空に近い状態まで減圧してから加熱し、氷の昇華(しょうか)によって乾燥させる方法です。高熱を加えないため、ほかの乾燥方法に比べてビタミンCの損失が少なく、色や香りの変化も少なくて済みます。食品の復元性にも優れているのもポイントです。軽く小さくなるため、宇宙食などにも採用されています。
家庭でできる乾燥野菜の作り方
家庭で乾燥野菜を作るなら、まずは手軽な天日干しから始めてみましょう。干すことで食感や風味が変わり、野菜の新しいおいしさに気付くでしょう。材料は、ニンジン・カボチャ・ナス・ダイコンなど、お好みの野菜を用意してください。
乾燥野菜を作る手順
- 野菜をよく洗って、水分を切る
- 野菜を5mm程度の厚さにカットする
- カットした野菜を、重ならないようにザルに並べる
- 風通しと日当たりがよい場所で1~2日干す
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ざるを並べるスペースがなかったら、縦にざるが連なる専用ネットを購入するのもおすすめです。省スペースで、おいしい乾燥野菜が作れます。コンパクトに折りたためるため、収納も簡単です。
乾燥野菜のメリットとデメリット
野菜を干すことは、先人から受け継がれた生活の知恵です。冷蔵庫のない時代、生の野菜を干して保存するのはとても重要なことでした。ここでは、野菜を乾燥することで得られるメリットを見ていきましょう。
メリット①長期保存ができる
ポイントは水分量
野菜を干すことで、水分量は生のときよりも減少し、数%~30%ぐらいまでになります。水分の多い生野菜をそのまま置いておくと、腐敗しやすいうえに、収穫後も生きて呼吸をすることで貯えた甘味や旨味を消費して味を損なってしまいます。しかし、野菜を干すとこのような品質低下を抑えられ、長期間保存することが可能になるのです。
非常食としての需要が高まる
東日本大震災をきっかけに、乾燥野菜は非常食としての価値が見直されてきています。長い避難生活の中では、味噌汁などの温かいものや、野菜を使ったメニューが求められるといわれます。また、台風などで野菜が不作になり、新鮮な野菜が不足するときのためにも、乾燥野菜を備蓄しておくことは必要だと考えられるようになっているのです。
メリット②旨味が増す
乾燥野菜は生の野菜と比べて味が凝縮され、旨味や甘味が強くなっておいしくなります。和食に欠かせない干ししいたけには、旨味成分の「グアニル酸」が豊富に含まれていますが、生のしいたけを干すことによってはじめて生成します。また、もう1つの旨味成分である「グルタミン酸」も生しいたけと比べて15倍も増えるのです。
デメリット①色や香りが失われる
天日干しでは、ビタミンCなどの栄養が損なわれるだけでなく、クロロフィルやカロテノイドといった色素が分解して、退色してしまうことがあります。また香り成分も、干すことで分解してしまうものもあります。この短所を克服したのが、高熱を加えずに乾燥させるフリーズドライなどの技術です。栄養や色、香りをあまり損なうことなく乾燥野菜に加工できます。
まとめ
乾燥野菜は、野菜を長期保存し、栄養価を高めるために昔から取り入れられてきた知恵です。現代では、乾燥機を使って効率よく、栄養を損なわないように乾燥する方法も多くあります。食卓に乾燥野菜を積極的に取り入れて、食の楽しみを広げてみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC