アラビアゴムノキとは？植物の特徴・用途や似た植物との見分け方を紹介

アラビアゴムノキという名前は、かつては多くがアラビアを経由して輸出されたことに由来します。アラビアという名前はついていますが、産地はセネガルをはじめとするアフリカです。

アラビアゴムノキの幹や枝から採取した分泌物を乾燥させたものをアラビアゴムといいます。無色～淡黄褐色の塊で、水に溶けやすく、水を含むとゼラチン状の「のり」のに変化します。粘性が高く「接着」する作用をもつのが特徴です。

アラビアゴムノキの分泌液は自然にできた傷口から採取できます。雨期が終わる水分を多く含む時期に樹皮を切りつけるのが、効率よく採取する方法です。

アラビアゴムにはいくつかの名称があります。アラビアガムと呼ばれることもありますが違いはありません。ガムもゴムもドイツ語の”gummi（グッミ）"「ゴム、樹脂の意」に由来し、アラビアガムとアラビアゴムは同じものです。ほかにもアラビア樹脂と呼ばれることもあります。

アラビアゴムノキの分泌物は、樹脂状で水に溶けるとゲル状になり接着効果をもつことが特徴です。一方、ほかのゴムノキの樹液や樹脂からできるゴムは、弾力性のある一般的なゴムになります。名前に「ゴムノキ」とつく植物で接着性をもつものはアラビアゴムノキだけです。

アラビアゴムノキの分泌物を乾燥させたアラビアゴムは、さまざまな用途をもち、日常生活になくてはならない存在です。無味無臭のガラスのような褐色の塊で、多くはその塊を粉末にして用います。

アラビアガムは、アイスクリームやチョコレートなどの食品や飲料の食品添加物として用いられます。食用としての用途は、主に乳化剤（水と油を混ぜ合わせるもの）や乳化安定剤などです。ガムシロップやコーラなどの飲料にも用いられます。

アラビアガムは医薬品のコーティング剤として使われます。コーティング剤とは、粒状の医薬品の表面をおおって包み込む素材を意味します。味やにおいをカバーする、湿気から守る、溶ける速度を調整するなどがコーティングの働きです。ラベルに「アラビアゴム末」とあればアラビアゴムの粉末が使われています。

アラビアゴムは絵の具やインクなど工業製品にも使われます。水彩画に使う水溶性の絵の具の固着剤として活躍します。

アラビアガムは切手の接着面ののりとして使われています。水によく溶けて、乾くとサラッとする性質を利用したものです。かつては植物標本の作成時に台紙へ植物を固定するためにアラビアガムを用いていましたが、現在では合成のりが多く使われます。

アラビアゴムは化粧品の乳化剤としても使われます。乳液やクリームなど、水と油を混合したり、水と油が分離しないよう安定させたりするのが役割です。アラビアゴムを粉末にしたものが化粧品原料として用いられます。

アラビアゴムノキの樹皮の繊維を使用してロープなどが作られます。また、魚を捕るための漁網にも使われてきました。アラビアゴムノキの樹皮の繊維でつくるロープはとても丈夫です。

トラガントからとれるトラガントガムは、アラビアゴムとほぼ同様の用途に用いられます。粉末のトラガントガムの用途は製菓用の接着剤です。また、昆虫標本を作成するための接着剤はトラガントガムが定番とされていました。アラビアゴムは樹脂状の褐色の塊、一方、トラガントの樹脂は白くリボンのように曲がり折れやすい形状なので見分けられます。

フサアカシア（ミモザ）はアラビアゴムノキと同じアカシア属で、アラビアゴムを含む植物です。フサアカシアに傷があれば雨の日などに観察してみてください。傷の部分に水で膨潤した褐色のアラビアガムを発見できるかもしれません。アラビアゴムノキの花は、白～淡黄色に対してミモザは丸く黄色いので見分けられます。

インドゴムノキは観葉植物として広く栽培されているため、単に「ゴムノキ」と呼ばれることがあります。インドゴムノキからとれるゴムは品質がよくないため、現在では工業用としては使用されません。インドゴムノキの葉は大きくツヤのあるため、アラビアゴムとは形状が異なり簡単に見分けられます。

パラゴムノキの幹にいれた切り込みからとれる乳液は天然ゴムの原料になります。もとはアマゾン川流域にのみ自生していましたが、ゴムの需要が高まりアジア熱帯地域で大規模なプランテーションが行われ栽培されています。アラビアゴムノキのとの違いは分泌物です。パラゴムノキの幹を傷つけるとでる分泌物は白い乳液状なので見分けられます。

アラビアゴムノキから得るアラビアゴムは、食用、薬用、化粧品そして絵の具などの工業製品など、目立たないながら私たちの生活に密着した物質です。日常生活から陶芸や版画などのアート、建築までアラビアゴムはさまざまに活躍しています。