ナツメグとは
ナツメグは熱帯の常緑高木ニクズクの種子からとれる、カレーなどに使われる甘い香りと苦みをもつ香辛料です。ニクズクはインド、スリランカ、マレーシアなどで広く栽培されます。
基本情報
園芸部類 | 薬木 |
形態 | 常緑高木 |
樹高・草丈 | 5~30m |
花の色 | 淡黄色 |
耐寒性 | 低い |
耐暑性 | 高い |
特性・用途 |
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栽培の可否 | 可 |
ナツメグの作られ方
①種子を取り出す
ナツメグはニクズクの果実の中心にはいる種子です。ナツメグの作られ方は、ニクズクの果実から種子を取り出すことから始まります。ニクズクの木は成長がゆっくりで、種をまいてから果実の収穫まで約7年かかります。卵型の黄色い果実は長さ約5cm、果皮はジャム、砂糖漬け、ジュースなどに加工します。
②仮種皮(メース)を取り除く
ナツメグは鮮やかな赤い網目状の仮種皮メースに包まれています。ナツメグが作られる際はメースを取り除きます。取り除いたメースは乾燥させて香辛料として用います。メースの香りはナツメグに似ていますが、ナツメグより繊細でおだやかな甘い香りとピリッとした辛みと苦みをもつのが特徴です。
③乾燥
仮種皮を取り除いた種子を2~3カ月天日で乾燥させ、種を取り出して割り、中の仁(ジン)を石灰につけて乾燥したものがナツメグです。
ナツメグの特徴
特徴①香り
ナツメグの香りは独特の甘さと苦みをもちます。カレーの香味のほか、ビーフシチューやハンバーグなどの肉に臭み消しや、パンプキンパイなど甘いお菓子の香りづけに使われます。ナツメグは専用のおろし金を使ってすりおろして使うと香りがひきたちます。
特徴②中毒性
ナツメグには中毒性が認められているので摂取には注意が必要です。香辛料としての少量の使用では問題ありません。しかし、多量に摂取した場合には強い幻覚作用や興奮作用を引き起こす危険性があります。
本症例は香辛料としてナツメグ10 g を摂取した。その後,浮遊感,動悸などが出現,不穏となった。
安全な摂取量
中毒性のあるナツメグの摂取量の目安は、1日3gまでにとどめておくとよいでしょう。ハンバーグ1kgに対して使用するナツメグの量は約2gなので、香辛料としての一般的な使用量では、副作用を気にする必要はありません。
ナツメグのおいしい使い方
ナツメグはハンバーグに使われるスパイスです。ハンバーグ以外にナツメグの甘い香りはスイーツにもぴったりです。ナツメグの香りを効果的にいかすレシピで独特の甘い香りを楽しみましょう。
使い方①豆腐ハンバーグ
材料(4人分)
- 豚ひき肉:400g
- タマネギ:1/2個
- 絹ごし豆腐:1/2丁
- 卵:1個
- パン粉:1カップ
- ナツメグ:小さじ1/2
- 卵:1個
- 塩:適宜
- 胡椒:適宜
- 水:大さじ1
<ソース>
- 中濃ソース:大さじ2
- ケチャップ:大さじ2
- 酒:大さじ1
- コンソメ(顆粒):一つまみ
- バター:適宜
作り方
- タマネギをみじん切りにする
- ボウルにひき肉をいれ粘りがでるまでよく混ぜる
- 絹ごし豆腐をくずしながら加えて練り、1を加えてなめらかになるまでさらに練る
- 卵、パン粉、ナツメグ、塩、胡椒を加えて、水でかたさを調整する
- 形を整え、フライパンで最初は中火、焼き色がついたら返し、さらに弱火で火を通す
- 焼きあがったらハンバーグを取り出し、皿に盛る
- フライパンにソースの材料を加えて煮立てたらバターを加え、ハンバーグに添える
使い方②スパイスチキンカレー
材料(1人分)
- 鶏モモ肉:100g
- ヨーグルト:100mL
- タマネギ:1/2個
- オリーブオイル:大さじ5
- 唐辛子(小口切り):少々
- ニンニク(みじん切り):少々
- ショウガ(すりおろす):少々
- ワイン:少々
- 水:適量
- 塩:適量
<スパイス>
- ターメリック(パウダー):小さじ2
- クミン(パウダー):小さじ2
- ナツメグ(パウダー):小さじ1/2
- コリアンダー(パウダー):小さじ1
- クローブ(パウダー):小さじ1
- ガラムマサラ(パウダー):小さじ2
作り方
- ボウルに鶏モモ肉とヨーグルト、スパイスを混ぜあわせる
- 鍋にオリーブオイルを加え弱火にかけ、唐辛子、ショウガ、ニンニクを加えて炒める
- 香りがでたらタマネギを加え、透明感がでたらワインを加える
- 1を加えて鶏モモ肉に完全に火が通るまで煮込む
- 水で好みの濃さに調整し、塩で味を調える
使い方③ナツメグクッキー
材料(約18個分)
- 小麦粉:160g
- ナツメグ:大さじ2
- ベーキングパウダー:小さじ1/2
- 塩:小さじ1/4
- オリーブ油:60g
- 砂糖:50g
- 卵:1個
- ナッツ(アーモンド、ピーナッツ、ココナッツなど):適量
作り方
- 小麦粉、ナツメグ、ペーキングパウダー、塩をあわせてふるう
- ボウルにオリーブ油と砂糖を加えてよくまぜ、卵を加えてすりまぜる
- 2に1を加えさっくりと軽くまぜる
- 天板にクッキングペーパーを敷いて、好みの大きさに丸めた生地を並べる
- ナッツ類を好みでトッピングする
- 180℃に予熱したオーブンで約20分焼く
使い方④ナツメグティー
材料(1人分)
- 牛乳:180mL
- 紅茶(ティーバッグ):1個
- 熱湯:50mL
- 砂糖:適量
- ナツメグ(パウダー):3振り
作り方
- 鍋にティーバッグをいれ、熱湯を加えて弱火で2分ほど煮込み濃い紅茶をつくる
- ティーバッグを取りだし、ナツメグと牛乳を加えて弱火であたためる
- 砂糖を加えて好みの甘さに調整する
使い方⑤パンプキンパイ
材料(1ホール分)
- パイシート:1枚
- パンプキンピュレ(缶詰め):1缶(425g)
- コンデンスミルク(加糖):1缶(396g)
- 卵:2個
- ナツメグ(パウダー):適量
- ナモン(パウダー):適量
- ジンジャー(パウダー):適量
- 塩:一つまみ
作り方
- パイシートを常温でもどし、めん棒で0.5mm厚さにのばして型に敷き込む
- ボウルにパイシート以外の材料をすべてまぜあわせ型に流し込む
- 210℃に予熱したオーブンで約20分焼く
ナツメグの用途
用途①伝統薬
ナツメグはニクズク(肉荳蔲)と呼ばれる生薬です。ニクズクは西洋医学での薬理効果は認められていませんが、漢方などの東洋医学やインドの伝統医療であるアーユルヴェーダの生薬として使われます。
漢方薬
ナツメグは消化促進などの効果が認められ、漢方では下痢、腹痛に用いられています。ナツメグは生薬ニクズクとして下痢止め、食欲増進、口臭防止、母乳促進などを目的に漢方薬に配合されます。
外用薬
インドでは伝統的にナツメグの粉末を練ったものを湿疹などの治療に使用しますが、ナツメグの粉末には接触皮膚炎、アレルギー反応などの副作用が認められているため、皮膚に直接塗布することは避けてください。
用途②精油
ナツメグは水蒸気蒸留によって精油がとれます。甘くて苦い香りがナツメグの精油の特徴です。この精油は古くから遺体の防腐や、魔除けの香りとして使われてきました。
精油の効果
ナツメグの香りは神経系を刺激することにより、心を落ち着かせると同時に活性化する働きをもつといわれます。穏やかさを失った心に、安心感と落ち着きと同時に勇気や強さを与えてくれます。ナツメグの精油は刺激が強いので、皮膚に直接触れないよう注意が必要です。
用途③ナツメグバター
ナツメグバターはニクズクの種子を圧搾してとれるバターです。赤褐色で、常温では固形の植物性バターです。工業用の潤滑油としての用途をもち、石鹸やリウマチの痛みの緩和に用いられることがあります。ナツメグバターのみでは皮膚への刺激が強いので、ほかのオイルやバターと混ぜて使われます。
用途④食品添加物
ナツメグは食品添加物として食品の酸化防止剤、防腐剤として用いられます。ナツメグには強い抗酸化力が認められ、ソーセージなどの肉類の酸化防止目的と同時に肉の臭み消しととして添加されます。
ナツメグの甘みと苦みを楽しもう!
ナツメグの甘い香りは、カレーから甘いお菓子まで用途は幅広く、食欲をそそる香辛料として活躍します。大量摂取による中毒に注意してナツメグを上手に活用してください。