千鳥草(チドリソウ)とは
千鳥草の基本情報
別名 | 飛燕草(ひえんそう) ラークスパー |
植物分類 | キンポウゲ科ヒエンソウ属 |
園芸分類 | 一年草 |
原産地 | 南ヨーロッパ地中海地域 |
草丈 | 50~150cm |
耐寒暑性 | 耐暑性:弱い 耐寒性:強い |
千鳥草はデルフィニュームの近縁種
千鳥草はデルフィニュームの近縁種とされる植物で、花の季節は5~6月と、初夏の季節を涼しげに彩ってくれます。花の色は青をはじめとして紫、ピンク、白と単色でも混色しても楽しめる色合いです。現在では園芸種としての流通の他にも、こぼれ種が飛散した場所などで野生化しているものも見受けられます。品種には一重咲きのものと八重咲のものがあります。
千鳥草の名前に関する由来
ここでは千鳥草の名前の由来や別名や英語名などの由来を解説していきます。日本と海外での特徴の例え方の違いが興味深いところですね。
千鳥草
千鳥は海岸や中洲に生息する鳥の総称
一口に千鳥といっても、あまりにも多種多様でどの鳥を指しているのか微妙なところですが、千鳥草の由来としては「花の形が千鳥が飛ぶ姿を思わせるから」というのが定説となっています。どうでしょう?花のイメージと一致したでしょうか?花弁の縁が少し反り返っているところなど、鳥の翼のように見えるかもしれませんね。
飛燕草
ツバメは民家の軒先に巣をつくる渡り鳥
続いて別名の飛燕草(ひえんそう)ですが、こちらは千鳥のポジションが燕(ツバメ)に変わったといったところでしょうか。濃い青系の花の色がツバメを連想させるのかもしれませんね。千鳥の生息地が海岸や中洲であるのに対して、ツバメは民家の軒先に巣を作ります。和名が二つあるのは、もしかしたら名づけた人が住んでいた地域が各々違っていたからかも…なんて想像してみるのも楽しくありませんか?
ラークスパー
ラークスパー(Larkspur)は「ヒバリの蹴爪」
「Larkはヒバリ」「Spurは蹴爪」ということで、英語名のラークスパー(Larkspur)を直訳すると「ヒバリの蹴爪」となりますが、上の二枚の画像を見比べれば納得ですね。花の後方にある鳥の蹴爪のように大きく突き出た部分は、距(きょ)と呼ばれるもので、この中に蜜腺が入っています。
千鳥草の特徴
千鳥草の花
花弁のように見えるのは苞の部分
一見すると、五枚の花弁の中心に小さな花が咲いている不思議な形状の植物に思われそうですが、じつは外側に5枚ある大きな花弁のような部分は苞と呼ばれるもので花びらではありません。上の画像の場合、花弁は中心にある雌しべと雄しべを包み込んでいる2枚の白い部分になります。
英語名にもなった距(きょ)の役割
英語名のラークスパーのくだりでもご説明しましたが、千鳥草には「距」とよばれる部分があります。「距」の中は中空で蜜を分泌する機能を持っており、花弁や額の部分が変化したものといわれています。
千鳥草の葉
細かく分岐した繊細な葉
千鳥草の魅力はその葉の形状にもあるといえるでしょう。掌状に細かく分岐した葉は繊細で、その上にいくつもの総状花序として咲いている花を華やかに盛り上げているかのようです。コスモスもそうですが、このような細かい線状の葉は風の抵抗を受け流すことができるため、野生化してもたくましく育っていくことができます。
千鳥草の育て方
スタートは種まきからでOK!
こぼれ種で野生化する千鳥草
千鳥草と近似品種のデルフィニュームは、発芽率も悪く、種からの育て方は難しいといわれる植物ですが、千鳥草は初心者でも大丈夫です。こぼれ種で野生化するぐらいですから栽培のスタートは種まきからでOKです。適性な時期は10月。株間は15cmほどにしておくと隣同士で支え合います。根は直根性ですので移植には向きません。咲かせたい場所に直接種をまきましょう。
気温が高いと発芽しません
千鳥草は暑さに弱く、そのため種をまく時期が早すぎて地面の温度が25℃を越えるようだと発芽率が悪くなります。ですので種まきは涼しくなってから。耐寒性の強い植物ですので寒さは平気です。雪の積もるような寒冷地では、逆に気温の上がり始める3~4月ごろに種をまくとよいでしょう。発芽の適正温度は15℃です。
ポット苗からの植え付け
どうしても移植したい場合は
種まきのタイミングを逃した場合は、流通しているポット苗を植え付けるのもよいでしょう。植え付けの時期は10~11月ごろです。根を傷めないように気を付けて植え付けましょう。本来でしたら移植は好ましくないのですが、開花後のこぼれ種で思わぬ場所で発芽する場合もあります。これも同時期に根を傷つけないように咲いて欲しい場所に移植するとよいでしょう。
次のページでは、チドリソウを育てる上での注意点を紹介するよ!
千鳥草を管理する上で注意すること
同じ場所での連作に注意
園芸初心者でも種から簡単に育てられる千鳥草ですが、栽培する上で注意しておきたいことがあります。それは連作を嫌うということ。同じ土壌に続けて連作することで、病害虫の被害に遭いやすくなります。千鳥草の同じ場所での栽培は、少なくとも一年は期間をあけるように管理しましょう。
春先に摘芯すると株が安定する
風の抵抗を受け流すような形状の千鳥草の葉ですが、それでも草丈が高くなると倒れやすくなってしまいます。そこで、春先に草丈が10cmくらいになったころに一度摘芯をしておくと、茎が分岐してしっかりと安定した株にすることができます。
病害虫の対策
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殺菌成分 | ベノミル |
適用 | バラ/6回以内、ピーマン/3回以内 など |
希釈倍率 | ばら・ピーマン/2000〜3000倍 など |
病害虫の対策は多湿にならないようにすること
千鳥草によくみられる病気としては、灰色かび病や立ち枯れ病があげられます。これは多湿や連作が原因となっていることが多いので、出来るだけ乾かし気味に管理して下さい。どちらも病気が広がらないように被害を受けた場所を切り取り薬剤を散布しましょう。害虫はアブラムシやヨトウムシの被害に遭うことがあります。
アブラムシ | パイベニカ乳剤 オレート液剤 |
ヨトウムシ | オルトラン粒剤 オルトラン水和剤 |
灰色かび病 | ベンレート水和剤 ダコニール1000 |
立ち枯れ病 | ダコニール1000 |
千鳥草の好む環境
肥料はしっかりと
千鳥草は水はけのよい弱アルカリ性の土壌を好みます。ですから種まきや植え付けの前に苦土石灰で土壌を中和しておきましょう。肥料も大好きな植物ですから、土作りの際には腐葉土や油かすを用い、緩効性の肥料を混ぜておくとよいですね。春の成長前にも追肥を。開花中には液体の肥料も加えておきましょう。
千鳥草の栽培歴
1~3月 | 休眠期 | 発芽後の株の成長は一時的に停滞 |
3~4月 | 生育期 | 気温の上昇とともに株が育ち始める。肥料を与える |
5~6月 | 開花期 | 液肥を与える 花が終わると種ができて枯れる |
10月 | 種まき期 | 適性気温は15℃ |
10~11月 | 植えつけ期 | 根を傷つけないように扱うこと |
11~1月 | 休眠期 | 秋にまいた種は発芽し、休眠状態で寒い季節を過ごす |
千鳥草の栽培と管理のポイント
- 暑さに弱いので、種の早まきは厳禁
- 移植は好まないが、どうしてもという場合は根を傷つけないように慎重に
- 春先に成長が始まり、草丈が10cmほどになったら摘芯して株を安定させる
- 土は弱アルカリ性で充実させ、定期的に肥料を与える
- 連作はさけること。同じ場所で育てる場合、最低でも一年はあけてから栽培すること
- 多湿は病気の元となるので乾かし気味に管理する
まとめ
華やかな花と繊細な葉をもつ千鳥草は、見た目以上に強くたくましい植物でしたね。紫、ピンク、白といった色の花は一般的ですが、絵の具のチューブから出したような青い花色の植物はあまりみられません。花束にしても素敵ですが、やはり青空の下で涼し気に風に揺れらている姿が一番千鳥草らしいでしょうか。
出典:写真AC