春の高山植物【青い花】
①エゾエンゴサク
エゾエンゴサクはエゾ(蝦夷:北海道)に多く自生することから名前がつきました。ケシ科エゾエンゴサク属の草花で、本州中部以北~北海道の日本海側の湿った土地に群生します。花は1.5cm~2.5cmの筒状で先が唇のようになり、後方は袋状です。袋の中に甘い蜜が入っていますが、セイヨウオオマルハナバチに横から穴を開けられ、受粉もしてもらえずに蜜だけ盗まれる個体が多くあります。
②キクザキイチゲ
キクザキイチゲは、キクに似た花が1株に1輪咲くので「菊咲一華」と書きます。しかし、キクザキイチゲに花びらはなく、花びらに見えるのはすべてガクです。ガクの数は10枚前後ですが、個体によっては6枚だったり15枚以上あったりと差が大きいです。キクザキイチゲの花色は白~淡青色とグラデーションになっており、地域によって花色が違います。キンポウゲ科イチリンソウ属です。
③ホタルカズラ
ホタルカズラはムラサキ科ムラサキ属のつる植物で、地面を這って伸びていきます。花茎は5cm~25cm立ち上がり、その先に花を咲かせます。ホタルカズラの花の中には白いラインが5本あり、星の形に見え、ホタルの光になぞらえたのが名前の由来です。全草に細かい毛が生えていて、花に日が当たるとキラキラと輝いて見えます。ホタルカズラの咲き始めは赤紫で、次第に鮮やな青に変色します。
④ミヤマムラサキ
ミヤマムラサキはムラサキ科ムラサキ属の高山植物で、岩場や岩の割れ目に自生します。根が太く、紫色の染料として利用されることから「深山紫」と名づけられました。名前はムラサキですが花は空色でまれに白もあります。全草に白い~灰色の毛が生えており、花の直径は7mm~8mmと小さく、総状に咲きます。
春の高山植物【そのほかの色】
①ザゼンソウ
ザゼンソウはとてもユニークな形をした高山植物です。サトイモ科ザゼンソウ属で、ほると芋がありますが、有毒で食べられません。紫色の部分は「仏炎苞(ぶつえんほう)」という葉で、中にある黄色い部分が花びらのない花の集合体です。きりたんぽのような形をしています。ザゼンソウはダルマソウという別名がありますが、英名は「スカンクキャベツ」です。とても臭く、ハエに受粉してもらっています。
ボタニ子
②マムシグサ
マムシグサは別名ミミガタテンナンショウといいます。サトイモ科テンナンショウ属の多年草です。茎にマムシの皮によく似た模様があることや、花を囲む紫色の仏炎苞が鎌首を持ち上げたマムシのように見えるのがマムシグサの名前の由来です。鮮やかでつやのある緑色の実がなり熟すと朱色になります。シュウ酸カルシウムを多く含む毒草です。
③ユキモチソウ
ユキモチソウは仏炎苞の中央にある、白い付属帯が雪や餅のような形をしているのが名前の由来です。仏炎苞の下部は紫色で、立ち上がった部分は緑色に白いラインが入ります。サトイモ科テンナンショウ属です。ユキモチソウは雌雄異株で、育つ環境や大きさや栄養状態によって性転換をし、なかには中性のものもあります。
春を告げる高山植物を愛でよう
春を告げる高山植物は、必ずしも高い山に登らなければ見つけられないわけではありません。標高が低くても、条件さえあえば普段の山歩きでも見つけられます。また、春の高山植物といっても気温が低い場所であれば開花時期が遅くなるなど、その年の気候によっても変化があります。絶滅危惧種に指定されている種類も多いため、山で見かけたら採取せず、そっと愛でましょう。
ザゼンソウって、自分で発熱して雪を溶かして発芽するんですって。