春の高山植物【ピンクの花】
①アカハナユキワリソウ
ユキワリソウはキンポウゲ科ミスミソウ属の春の野草です。まだ雪が残っている時期にいち早く雪を割るように花を咲かせることから、この名前がつきました。花色がとても豊かな草花で、ピンクのほかに、白や紫、青や複数の色が混ざったものなどがあります。一重、八重、千重など花の形も豊富です。花茎は10cm程度で、先に3個~7個ほどの可憐な花を咲かせます。
②イワウチワ
イワウチワは、半日陰の岩場を好んで生え、葉がうちわの形に似ているのが名前の由来です。草丈は10cmくらい、花の直径は2.5cm~3cmでピンク色が多いですが、ごくまれに真っ白な個体もあります。イワウメ科イワウチワ科の春の野草で、日本固有種です。イワウチワは変種が3種類ほどありますが識別が難しく花ではほぼ見分けがつかないため、葉の特徴と自生している場所で判断します。
ボタニ子
③タマサキサクラソウ
タマサキサクラソウは草丈が低めの草花が多い高山植物の中では、かなり大きい春の野草です。タマサキサクラソウは別名、プリムラ・デンティキュラータといいます。手毬のようなぽんぽんとした丸い形に小さな花が集まり、花茎は20cm~45cmと大型です。花色は多く、ピンクのほかに濃い紅色、赤、白、紫、ラベンダー色などがあります。ネパールや中国のヒマラヤ山脈付近が原産地です。
④ツガザクラ
ツガザクラは、針葉樹のツガに葉の形が似ていることと、花が桜のような淡いピンク色をしているのが名前の由来です。ツガザクラの葉は地を這うようにして岩陰に自生し、花茎は濃いピンク色をしています。平成31年には、愛媛県新居浜市の銅山峰の自生地が国の天然記念物に指定されました。ツツジ科ツガザクラ属の草花で日本固有種です。
⑤ムシトリスミレ
ムシトリスミレは、タヌキモ科ムシトリスミレ属の食虫植物ですが、図鑑にも載っているれっきとした高山植物です。外来種のムシトリスミレは園芸種として市販されていますが、この種はほとんど出まわりません。亜高山帯~高山の岩場に自生している日本固有種です。ムシトリスミレは1本の花茎に花は1輪で、ピンク~紫色の花が咲きます。
ボタニ子
葉が長い楕円形をしていてね、タンポポみたいに地面に沿って丸くロゼット状に広がるの。その葉には細かい毛がびっしり生えているのよ。
ボタ爺
その毛の先には粘液がついててな、ムシが触ると動けなくなるんだの。それを栄養として吸収するんだ。
⑥ヤマイワカガミ
ヤマイワカガミはヒメイワカガミの変種で、イワウメ科イワカガミ属の春の野草です。自生地は中部東海地方に限られ、静岡県や山梨県で見られます。花は1cm~1.5cmのラッパ型で、花びらの先が細かく裂けているのが特徴です。花茎は10cm~20cmで5個~10個の花をつけます。日本の固有種で、淡いピンク色のほかに白いものも多いです。
春の高山植物【紫色の花】
①アツモリソウ
アツモリソウはラン科アツモリソウ属の山野草で、北上するほど低山や里山で見られます。袋の形をした部分が、平敦盛(たいらのあつもり)のホロが風で膨らんだようすに似ているのが名前の由来です。花は3cm~4cmで花茎は30cm~40cmです。アツモリソウは盗掘、乱獲されることが多い植物で、1997年に特定国内希少野生動植物類に指定され、違反して採取すると罰則があります。
ボタニ子
アツモリソウは色も豊富で紫だけじゃなく、白や緑、黒に近い赤などもあるの。袋の部分と花びらの色が違ったり、斑点があったりするわ。
ボタ爺
不思議な形のアツモリソウは、専門の図鑑が出ているくらいマニアには人気があるんだの。
ボタニ子
だからといって、野生に生えているものを持って帰ってはだめよ。ルールは守りましょうね。
②オキナグサ
オキナグサは日当たりのよい場所を好む、キンポウゲ科オキナグサ属の植物です。絶滅危惧種に指定されています。近年里山の管理をする人が減り、土地が荒廃して減ったのが原因です。しかし、全草毒草有毒で家畜が食べないため、牧草地などに群生している場所もあります。オキナグサの実は白い毛で覆われており、それを老人「翁(おきな)」の白髪に見立てたのが名前の由来です。
ボタニ子
オキナグサって下を向いて咲くのよ。紫色の花びらに見えるのは実はガクで、花びらはないんですって。
③カタクリ
カタクリは昭和40年代までは、東京の里山でも見られた高山植物ですが、土地開発などで数を減らしました。カタクリは花が咲くまでに7年~8年もかかる多年草です。花を咲かせても次の年に栄養が足りなければ、葉を1枚だけ出して花を咲かせる栄養をためます。ユリ科カタクリ属で花は花びらとガクが大きく反り返るのが特徴です。
ボタニ子
カタクリの根茎ってすごく深いところにあるんですって。この根茎からとったでんぷんが本当の片栗粉なのよ。
ボタ爺
市販されている片栗粉は、ジャガイモのでんぷんが主原料だぞ。
④ミヤマオダマキ
ミヤマオダマキは里山に生える普通のオダマキよりも小ぶりです。そのため別名はヒメオダマキといいます。オダマキの原種と考えられる、キンポウゲ科オダマキ属の多年草です。草丈は15cm~20cmで、本州の中部以北の高山~北海道に自生しますが、北海道では海岸の岩場でも生息しています。紫色が主ですが、白やピンク、赤などもあります。
⑤ムラサキケマン
ムラサキケマンは湿った土地を好む、里山の山野草です。ケシ科キケマン属で、全草がやわらかいのが特徴です。花は2cmほどの筒の形をしており、花先は花びらが開き、後方は袋状になっています。種は触るとはじける蒴果(さくか)です。種にはエライオソームというアリが好む物質がついており、アリに運んでもらって、子孫を増やします。
ボタニ子
花が咲く前のムラサキケマンの葉はセリに似ているの。でも毒草だから食べちゃだめよ。
⑥ラショウモンカズラ
ラショウモンカズラはシソ科としては大きな花を咲かせる、ラショウモンカズラ属の山野草です。花は個性的で唇の形をしており、下唇が発達して前に出て、色も白地に濃い紫の斑が入ります。ほかの部分は青紫色です。草丈は20cm~30cmで日当たりのよい場所を好みます。羅生門で渡邊綱(わたなべのつな)が切り落とした、鬼または鬼女の腕に例えた名前がつけられました。
イワウチワのほかに、トクカワソウというのとオオイワウチワっていうのがあるの。自生地が違うそうだけど、見分けるのは難しそうね。