ワレモコウの概要
ワレモコウ(吾亦紅)は、日当たりのよい野原などで見られる多年草です。平安時代の古典小説「源氏物語」に登場するなど、日本では古くから見られる雑草として知られていました。漢字表記が複数あり、「吾木香」「我毛紅」「我毛香」「我妹紅」などがありますが、現在は「吾亦紅」が一般的です。
ワレモコウの基本データ
学名 | Sanguisorba officinalis |
科名 | バラ科 |
属名 | ワレモコウ属 |
原産地 | ユーラシア大陸温帯~亜寒帯、北米大陸北西部~西部 |
草丈・樹高 | 20cm~180cm(種類によって異なる) |
開花時期 | 6月~9月 |
花色 | 赤、紫、赤茶色 |
ワレモコウの名前の由来
ワレモコウの名前の意味や由来には、さまざまな説があります。しかしいずれも確証に乏しく、現在でも正しい意味や由来はよくわかっていません。ワレモコウの根から発する香りが、インド原産の植物モッコウ(木香)に似ていることを由来とする説、織田信長の家紋としても有名な「木瓜紋(モッコウモン)」を割った形に似ていることを由来とする説の2つが有名です。
木香(モッコウ)はキク科の植物なんだ。線香の原料や生薬になるんだよ。
ワレモコウの特徴
特徴①穂の部分が花
ワレモコウの一番の特徴は、夏~秋の季節に見える赤茶色の穂でしょう。果実のようにも見える穂状の部分こそが、ワレモコウの花です。正確にいうと、2mmほどの小さい花が集まって、穂のような形になっています。ちなみにワレモコウの小さい花には、花びらがないという特徴があります。赤茶色や紫色に見えるのは、花のガクの部分です。
ワレモコウの小さい花が散っても、ガクの部分は残ります。このため、咲き続けているように見えるのです。
ワレモコウの、夏~秋と季節をまたいで咲き続ける開花時期の長さは、この特徴によるものなんだよ。
特徴②薬草になる
日本では雑草として扱われることが多いワレモコウですが、じつは古くから生薬として用いられてきた薬草です。生薬としての名前は「地楡(チユ)」といい、ワレモコウの根茎を天日干しにして作ります。抗菌作用や収れん作用があるとされ、おもに止血や抗炎症薬として用いられていました。
地楡を煎じて服用すれば慢性腸カタル、急性腸炎に効果がある。また地楡を1日5~30gを煎じて服用すれば止血、消炎、止瀉、去痰、収斂剤として吐血、下血、喀血、鼻血、子宮出血、月経過多、産前・産後の諸出血、痔瘻、消渇、胃痙攣、腹痛、嘔吐、気管支炎に効果がある。
ワレモコウは毒性植物?
ワレモコウは古い昔から漢方薬として用いられてきた植物です。毒性はありません。ただし、実際に用いるときには注意しましょう。ワレモコウのおもな薬効成分はタンニンとサポニンです。タンニンには鉄分の吸収を阻害する効果があり、サポニンは種類によっては、摂り過ぎると溶血作用や吐き気などの副作用を引き起こすものがあります。扱いには注意しましょう。
毒性がなくても、用法・用量をあやまると、副作用を引き起こす恐れのある植物は少なくありません。
どんなによい薬草でも扱い方をあやまると、毒性植物のような被害をもたらす場合があるんだ。実際に薬草を扱う場合は注意しようね。
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源氏物語では「吾木香」という漢字表記で登場しています。